その肩こり、原因は「巻き肩×いかり肩」かも。
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第9回は「巻き肩×いかり肩」のリセット方法。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.816・2021年8月5日発売
上半身のアライメントを整えるには肩甲骨の位置が鍵。
慢性的な肩こりを引き起こす原因の一つに、「巻き肩」がある。スマホやPC作業など前のめりの姿勢が続くことで起きる不良姿勢であり、一見猫背のようにも見えるが、実は似て非なるもの。猫背は背骨の弯曲が大きくなっているのに対し、巻き肩は肩が本来の位置よりも内側に入り込み、左右の肩を結ぶ横ラインが崩れている状態を指す。
巻き肩をチェックする方法は2つある。
まずは横向きの写真を撮り、肩の位置を見る方法。肩峰と呼ばれる肩関節の先端が、耳よりも前に出ていれば巻き肩の可能性が高い。
もう一つは、両手を天井に向かってバンザイし、腕を耳に近づけて位置をチェックする方法。腕が耳よりも後ろに来れば正常、耳よりも前にある場合は巻き肩と判断できる。
合併しやすい「いかり肩」。
巻き肩の原因である“前のめり姿勢”が習慣化すると、だんだんと首がすくんで肩が持ち上がり、その状態で固定される。すると合併して起こるのが、「いかり肩」だ。
正式名称で「両肩甲骨挙上位」と呼ばれるいかり肩は、背骨・肩関節・首にかけて広がる僧帽筋の上部線維と、頸椎から鎖骨を結ぶ肩甲挙筋が緊張から硬化し、肩甲骨が引っ張られて挙上している状態を指す。
同時に肩峰から胸椎に向かって走る僧帽筋下部線維が弱化しているのも特徴だ。チェックの方法は簡単で、鏡で鎖骨のラインを確認し、鎖骨が逆ハの字のようにせり上がっていたらいかり肩となる。
巻き肩・いかり肩へのセルフケア。
デスクワーカーの典型的な不良姿勢ともいえる、巻き肩×いかり肩。
肩まわりの血行不良により慢性的な肩こり・首こりに繋がるだけでなく、胸や肋骨の筋肉が圧迫され、最悪の場合は呼吸障害を引き起こす危険性もあるため改善していきたい。
アプローチの方法は、これまでの姿勢改善同様、硬化している筋肉を緩め弱化している筋肉を鍛えること。まずはいかり肩の緊張を解くには、
- 僧帽筋の上部線維のストレッチ
- 肩甲挙筋のストレッチ
- 僧帽筋下部線維の筋トレ
これらを行う順番は、ストレッチをしてから筋トレに移ること。筋肉が緊張したまま肩甲骨を動かしても、可動域が狭く筋トレの効果が半減してしまうためだ。首、肩まわりの緊張がほぐれ、鎖骨と肩甲骨の位置が下がったら、次に巻き肩を修正していこう。
巻き肩は肩甲骨が上がり(挙上)、外に開き(外転)、下方部分が外に回転する(上方回旋)動きが複合的に起きているため、これを巻き戻しの要領で戻していく。
ようは、肩甲骨を下げ(下制)、内側に寄せ(内転)、内側に回転(下方回旋)させればいい。まずはストレッチから。カラダの後ろで両手を組み、斜め下に引き下げるように両手を引き、対角線上に胸を突き上げる。縮まった胸の筋肉が伸ばされ、肩の位置もニュートラルな位置に戻るはずだ。
このストレッチをこまめに取り入れるだけでも効果はあるが、凝り固まりやすい脇の下から胸の付け根にかけての筋肉を揉みほぐすと、ストレッチの効果は倍増する。キーワードは肩甲骨を寄せて、下げる。忘れず意識を。
エクササイズ例
復習クイズ
答え:「胸の筋トレ」がNG。