肩こりを治すために知っておきたい3つのこと
肩こりにもいろいろあるけれど、今回はリモート疲れが引き起こす3タイプにフォーカス。緩めて伸ばしてトリガーポイントを刺激する、3ステップが効く!
取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 監修/<a href="/tags/kazutaka_sawaki/">澤木一貴</a>(SAWAKI GYM)
初出『Tarzan』No.803・2021年1月28日発売
① タイプ別に対策をすれば治りやすい。
肩こりは千差万別、十人十色。いろいろなタイプがある。なかでも、もっとも多いのは、次の3タイプだ。
1つ目は「リモート肩こり」。在宅勤務でリモートワークが増えてくると、デスク上でパソコンやタブレットを操作している時間が延びる。そのため油断すると背中が丸まる猫背に陥りやすく、肩こりがひどくなりやすい。
さらに、肩こりの発生する場所で分けると「首こり」と「背中の凝り」がある。
首こりは、首まわりが凝って痛むタイプ。重たい頭を保持する首すじの筋肉の緊張から生じる。スマホの使いすぎなどで、本来なら軽く前にカーブしている頸椎がフラットに近づく「ストレートネック」も、首こりの原因だ。
背中の凝りは、肩甲骨の周辺にある筋肉のこわばりから起こる。肩甲骨は腕の上腕骨と鎖骨と接しているが、半ば背中に浮いているようなものであり、多くの筋肉によって支持されている。だから、肩甲骨が正しいニュートラルなポジションから外れると、これらの筋肉の負担が増えてしまい、凝りが誘発される。
タイプを見極めたら、それぞれリリース、ストレッチ、トリガーポイントという3つのメソッドでケアに励みたい。
② 筋肉だけでなく筋膜にも注目。離れたトリガーポイントを探せ。
私たちの姿勢や動作を支えているのは、筋肉&骨だけではない。筋肉などを包んでいる「筋膜」も、姿勢や動きのサポートで重要な役割を果たしており、「第2の骨格」とも呼ばれている。
肩こりの背景には、この筋膜の萎縮や癒着といった異常が隠れているケースが少なくない。
筋肉が助け合って働くように、筋膜も全身でシームレスにつながっている。それを列車の路線図に喩えて「アナトミー・トレイン」という素敵な名前を付けたのは、アメリカの著名ボディワーカーのトーマス・W・マイヤースだ。
筋膜はつながっているゆえに、肩以外で起こる筋膜トラブルが、肩こりにつながることも多い。アナトミー・トレインのなかでも、積極的にアプローチすべきなのは、「トリガーポイント」。筋膜が萎縮・癒着を起こし、それ自体のみならず、離れたところにも痛み(これを関連痛と呼ぶ)をもたらすポイントである。
最近では筋膜を緩めたり、トリガーポイントをほぐしたりする専用のギアも登場している。そうしたギアがなくても、ボールや食品ラップの芯といった手近なもので筋膜とトリガーポイントをほぐしてやると、肩こりは軽くなりやすい。
③ 肩関節、肩甲骨、胸郭の動きの悪いクセを正す。
肩こりになりやすい理由の一つは、骨格の作りにもある。背骨とともに上半身の土台となるのは、肩関節、肩甲骨、胸郭。互いにリンクしており、その連携が乱れると、肩こりが起こる。
腕(上腕骨)と肩甲骨は「肩甲上腕関節」を作り、肩甲骨と胸郭は「肩甲胸郭関節」を作っている。肩こりの発生には、腕の位置と動きが大きく関わり、2つの関節が巧みに連動する「肩甲上腕リズム」という運動パターンがその鍵を握っている。
腕を高く上げるときには、上腕骨(肩甲上腕関節)と、肩甲骨(肩甲胸郭関節)が約2:1の割合で回転して腕を引き上げている。これが肩甲上腕リズム。このリズムを左右しているのは、肩甲上腕関節にも肩甲胸郭関節にも共通して関わっている、肩甲骨。
そもそも腕は、肩甲骨から大きく動かすのが基本。肩甲骨が使えないと、野球などで嫌われる「手投げ」「手打ち」になる。
だが、ストレスを抱えて呼吸が浅くなると、胸郭が閉じ気味になる。加えて運動不足で肩甲骨をダイナミックに動かす習慣がないと、肩甲骨がフリーズ。おかげで肩甲上腕リズムが崩れると、周囲の筋肉に疲労と緊張がドミノ倒し的に伝わり首にも背中にも凝りが起こるのだ。