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〈ナイキ〉のランニングシューズ3足を履き比べ! シューズトライアル体験レポート
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筋肉と体脂肪は日々意識しやすいが、“第三の体組成”である骨はまさにダークホース。気づかないうちに弱り、錆び付き、劣化する。関節ともども要注意だ。
「骨の老化は思ったより早く生じます。骨量のピークは腰椎で20歳前後、大腿骨は30代から減少していき、45歳以降は男性でも年に約2%ずつ骨密度が減っていきます」
と言うのは骨粗鬆症のオーソリティ、太田博明先生。骨粗鬆症とは骨の密度がスカスカになり骨折しやすくなる病気。骨密度がピーク時の7割以下で診断される。それ、高齢女性の話でしょ? 自分には無関係、と思った男性諸君。人ごとではない。男性には男性の、「新型骨粗鬆症」というリスクがあるからだ。
まず、そもそもの骨の成り立ちをおさらいしよう。骨を形づくっているのはカルシウムとコラーゲン。建物でいえばコラーゲンは鉄筋、カルシウムはコンクリート。これを「骨基質」と「骨塩」という。
骨はカルシウムとコラーゲンの「基質」と複合的材料からなる。骨組織は古くなると壊され、新たに作り出される。この代謝を担うのが破骨細胞と骨芽細胞だ。
骨組織は一見盤石なようだが、一定サイクルで古いものが壊され、新しいものに生まれ変わっている。こちらは文字通り、「骨代謝」と呼ばれるサイクル。で、骨代謝を促しているのが3つの細胞、「骨細胞」「破骨細胞」「骨芽細胞」だ。
破骨細胞が古いカルシウムやコラーゲンを溶かして血液中に放出する(骨吸収)と、今度は骨芽細胞が血液中のカルシウムやコラーゲンを材料に新たな骨を作る(骨形成)。このバランスをコントロールしているのが骨細胞。こうして若者なら約2年、高齢者なら約5年で全身の骨が全取っ替えされる。
この骨代謝のバランスが崩れ、壊される量が新たに作られる量を上回ると、骨粗鬆症に陥るというわけ。考えられる主な原因は極端なダイエット、カルシウム不足、女性の場合であれば女性ホルモンの急激な減少などなどだ。
さて、気になる「新型骨粗鬆症」の話である。
「一般的な骨粗鬆症は骨密度の低下ですが、新型骨粗鬆症は骨の質が劣化するというものです。コラーゲンはクロスリンクという架橋を形づくり、ほどよくしなることで外から加わる衝撃を和らげています。ところが糖尿病などの生活習慣病では糖とタンパク質がくっついた終末糖化産物(AGE)が生じて、コラーゲン架橋を錆びさせてしまうのです」
本来、しなやかなはずのコラーゲン架橋が弾力を失い、質が劣化して骨折しやすくなる。これが新型骨粗鬆症の正体だ。30歳を越えてお腹が出てきたり血液検査にひっかかっている男性、ある日手首をポキッと骨折したり気づかないうちに背骨が圧迫骨折を起こして身長が縮む、なんてことにもなりかねないのだ。
こうした骨の量や質の低下を防ぐために重要なのは、やはり栄養素の補給。骨形成のために必要な3大栄養素はタンパク質、カルシウム、そしてカルシウムの吸収を促すビタミンDだ。タンパク質は肉や魚、カルシウムは乳製品、ビタミンDは青魚に豊富に含まれている。
「とくにビタミンDは日本人の8割に不足しています。ビタミンDは栄養補給とともに紫外線を浴びることで活性化するので、日差しの強い時間、お昼から2時くらいの間に外に出て日光を浴びることをおすすめします」
また、骨形成をサポートするお助け栄養素はビタミンK。こちらはブロッコリーや納豆に豊富なのでこまめに食卓に取り入れたい。
さらに、骨形成を促すうえで必要不可欠の条件が運動。
「垂直荷重方向の刺激が必要です。振動刺激を骨細胞がセンサーして骨芽細胞に骨を作るよう指令を出すからです。とくにコロナ禍での自粛生活では骨代謝のバランスが狂いがちなので、振動刺激を入れるような運動を取り入れることが重要になってきます」
そこで、おすすめしたいのが、いつでもどこでも手軽に行える「踵落とし」。下の写真のように2秒に1回、踵を引き上げてストンと落とすだけ。ながら運動として、ぜひ、日々の生活に取り入れてほしい。
骨の量や質の低下は、骨の健康だけでなく関節の機能にも関わってくる。膝や股関節の痛みや変形、四十肩や五十肩、脊椎の圧迫骨折や脊柱管狭窄症。40歳を越えて、これからどんどんリスクが増すこれらの関節のトラブルにも繫がる可能性が高い。今こそ骨活のスタートを。
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾
初出『Tarzan』No.799・2020年11月5日発売