変形性膝関節症、40代で発症することも。
運動をした後や長く歩いた日に、膝が何となく怪しい。膝の動きが以前ほど滑らかでなくなった。ときどき熱っぽくなり、うっすら腫れて見えたり、痛んだり。もう年だから仕方ないか。学生時代の部活の古傷もあるし…。
そう思って放置すると、もともとO脚気味だった脚が次第にO脚らしさを増し、膝を動かしにくくなっていく。これは多くの場合、加齢に伴い増える変形性膝関節症の可能性が高い。病名を聞くと老人くさく感じるかもしれないが、40代で早々と発症する人もいる。
ヒザで日々起きている「ミクロレベル」の痛み。
問題の部位を見てみよう。膝は大腿骨と脛骨がクッションにあたる半月板を挟み、骨の端を覆う関節軟骨で接する部位。関節軟骨の表面は驚くほど滑らかで、摩擦係数はボールベアリング並みだ。この部位を関節包が覆い、内部は滑膜が血漿から作る関節液で潤されている。潤滑液としても働く関節液は、栄養と酸素を関節軟骨に届けている。関節軟骨には血管も神経も通っていないからだ。
表面がつるつるのうえ、潤滑液に囲まれて、軟骨同士は強い力で接触し、こすれても動きは滑らか。とはいえ、がに股立ちで左右の膝が離れ気味になるO脚だと、両膝の内側の位置に荷重が偏るから、ここに痛みを生じやすくなる(X脚だと逆に膝同士が接近し、両膝の外側寄りが痛む)。こうしたことは日々の生活の中で常時ミクロレベルで起きているが、休息をとれば回復する。
だが、加齢に伴い回復のペースは確実に落ちる。完全な回復を待たずに動かしてしまうと、修復が損傷に追いつかなくなり、関節軟骨を摩耗、損傷することがある。すると軟骨の破片が滑膜を刺激し、炎症を起こす。その結果、滑膜から関節液が大量に分泌され、いわゆる膝に水が溜まった状態になる。
軟骨の他にも半月板や靱帯を痛めると、膝のクッション性、安定性が損なわれ、痛みが出る。こういう状態では腱や筋肉にも炎症を起こしているだろう。残念ながら、この状態は完全にオーバーワークだ。年齢、体重、筋力など個々人によって、その閾値は変わってくるが、痛み、腫れが出現する運動量や頻度は、その人にとってオーバーワークであると肝に銘じるべきだろう。
通いやすい医療機関で早期受診、早期治療を。
そして、痛み、腫れが続くなら、それは整形外科を受診するタイミングでもある。変形性膝関節症は放置して自然治癒することはない。自分にとって最良の医師を探そう。ただし、脚に問題が起きているのだから、“通いやすい”ことが大前提だ。生活圏や通勤経路から大きく離れていては、恐らく通い切れないだろう。
また、受診の際に、むやみに手術を勧める医師は考えもの。変形性膝関節症で本当に手術が必要になるのは、せいぜい10人に1人といわれている。基本は運動療法、治療薬と痛み止めで十分に改善が見込める。
痛いからといって動かさないでいると、筋力、筋量の低下に歯止めが利かなくなる。膝関節を外から支える筋群が衰えると、膝にかかる力は関節だけで受け止めることになる。これが症状を悪化させ、負の悪循環から抜け出しにくくなる。
対策には、ストレッチもおすすめ。
よくある運動療法の一メニューを紹介するが、強化することで膝の守りにつながるのは大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋群、股関節外転筋群など。これらの部位をよくストレッチするのもお勧めだ。
既に説明したように、関節軟骨には血管が通っていない。関節液から栄養を供給するには関節液をよく循環させた方がいい。だから、膝は痛まない程度に動かして、関節液をよく回すことでよくなる。いざとなったら、人工関節に置換する手術も選択肢になるが、そうなるまで放置するのはよくない。人工関節の耐久年数は一般的には15~20年ぐらいとされる。
もし比較的若い年齢で手術を受けることになると、後年交換が必要になる可能性が出てくる。2回目の手術は1回目よりも難しいため、万難を排して避けたいところ。そのためにはそもそも手術に至らないことだ。膝に違和感があれば早めに整形外科を受診し、治療を開始し進行を遅らせられれば、自分の膝で生涯をまっとうできるだろう。