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食欲のメカニズムを上手に使い、過食を抑えて減量する4つの方法

わかってはいるけどつい手が伸びてしまう。止まらない食欲はあなたが悪いわけでもないし、止めるのも可能なのがわかった。さて、ここでは過食を抑える4つの方法をご紹介。

① ストレスがあると甘い物を欲する。食事以外のストレス解消法を用意せよ。

コロナ禍で生活が激変して、ストレスを抱えている人は多い。

そのストレスも肥満の引き金になりかねない。放置すると、甘い物の過食に走りやすいからだ。

ストレスが溜まると甘いものを欲する

ストレスが加わると、腎臓の上にある副腎でコレステロールからコルチゾールというホルモンが合成・分泌される。コルチゾールは血糖値や血圧を上げるなどして、ストレスに立ち向かう体内環境を整える。

コルチゾールの分泌を促すのは、視床下部のCRHニューロン

「CRHニューロンは甘い物など糖質を好む嗜好性を高める性質があり、甘い物を食べるとその活動が抑えられることがわかっています」

ストレスに応じてCRHニューロンがONになるのは歓迎すべきだが、ストレスが持続して神経がずっと活発になり続けると、その反応を抑えようとするブレーキが働く。そこで間食などで甘い物を欲するようになり、それがオーバーカロリーに直結するケースは少なくないのだ。

ストレスと戦う武器を何も持たない丸腰状態だと、コロナ第二波以降でより太りやすくなる恐れがある。甘い物ばかりで解消しなくても済むように、運動や新たな趣味などストレスを減らすための自分なりの手段を準備しておきたい。

② 食事のリズムを整えると、食欲も乱れにくくなる。

決まった時刻に起きて、同じ電車に乗り、始業時刻までにオフィスに滑り込む…。コロナでそんなルーティンが崩れると、食事の間隔や回数がランダムになりやすい。それもまた食欲を乱して肥満を招く。

今日からコストゼロで実行できて減量に効果的なのは、食事の間隔や回数をできるだけ一定にすること。

三食規則正しく

そもそも私たちの脳には時計(体内時計)が備わり、食欲を担う神経やホルモンの分泌などもその支配下にある。毎日のように同じ時間帯に三度の食事をしていると、体内時計によって食欲を司る視床下部の活動もそれに徐々にシンクロする。

「同じタイミングで食事を続けると、視床下部の神経細胞は食事を摂ってから反応するのではなく、食事の時刻に合わせて事前に準備を整えるようになります。食事の時刻がそこから大きくズレると、摂食をコントロールする視床下部のメカニズムがうまく働かなくなり、結果的に食べすぎる恐れがあるのです」

テレワーク日にいつもより寝坊した挙げ句、一日2食で済ませたりするのは愚の骨頂。出勤日もテレワーク日もだいたい同じ時刻に起きて、三食を変わらない時間帯に規則正しく食べるのが正解。すると食べすぎに自然とブレーキがかかるだろう。

③ 座りっぱなしを控えると体重を骨が脳に伝えて、肥満が避けられるかも。

コロナ太りの誘因の一つは、ステイホームによって自宅内でじっと座っている時間が長くなったこと。座りっぱなしだと消費カロリーが減り、食べすぎなくても太りやすい。

そして最新の研究によると、座り続けると太りやすくなる意外な理由がもう一つありそう。鍵を握るのは、なんとだ。

骨は体重のセンサー

骨は単なるフレームではなく、多くの機能を担っている。たとえば、骨を作る骨細胞は運動や重力を感知するセンサーでもあり、運動量が極端に減ると骨の分解が合成を上回り、骨は減りやすくなる。

「まだ未検証ですが、骨は自分の体重を感知するセンサーでもあり、重たくなりすぎると、脳に”食欲を抑えて体重を減らせ”というシグナルを出すという仮説があります」

1日8時間重たい ベストを着ると痩せられる
1日8時間重たい ベストを着ると痩せられる/肥満者約70人を2群に分け、低負荷群は体重の1%の重さのベスト、高負荷群は体重の11%の重さのベストを1日8時間着て、3週間過ごしてもらった。3週間後、体重と体脂肪量は高負荷群で有意に減り、除脂肪体重(≒筋肉量)は高負荷群で増えていた。
Claes Ohlsson et al., EClinicalMedicine 22(2020)100338

上のグラフで示すように、肥満者に体重の約10%の重さのベストを着て過ごしてもらうと、痩せられるという研究がある。しかし、たとえ太っていても、座り続けると骨への刺激が減り、体重の現状が脳に伝わりにくくなり、体重を制御する仕組みが正しく作動しない可能性がある。

自宅では座りっぱなしを避けて立っている時間をできるだけ確保し、電車に乗ったらソーシャル・ディスタンスを保ちながら立ち続けよう。

④ トータルの摂取カロリーを抑えるのがいちばん効く。

食べてカロリーになるのは、糖質、脂質、タンパク質の3大栄養素のみ。カロリー制限を試みるなら、何から減らすのが有効なのだろうか。

「体重の増減にもっとも響くのは、トータルの摂取カロリー。2大栄養素の何から減らしても、減量効果に大きな差はありません」

3大栄養素をバランスよく減らそう

ダイエットは短期決戦ではなく、長期戦。糖質制限やアブラ抜きなどのように極端すぎる食事術は長続きしないから、現状の割合を大きく変えない範囲で3大栄養素をバランス良く減らした方が成功しやすい。

ただし、肉類などから動物性脂肪を摂りすぎている人は、控えめに。飽和脂肪酸を摂りすぎると脳内で慢性炎症が生じやすく、それがレプチン抵抗性などによる食欲の乱れを招くこともある。

この他、健康状態や年代に応じた減量時のポイントもある。

健康診断で血糖値が高く糖尿病のリスクがあるとわかっているなら、糖質を減らし気味にすべき。同じく中性脂肪や悪玉コレステロールなどの血中脂質が多すぎるなら、脂質を減らしたい。また運動不足で筋肉量が少ない女性や高齢者は、筋肉の原料でもあるタンパク質を減らしすぎると筋肉が減り、代謝が落ちて太りやすくなることもあるから要注意。

取材・文/井上健二 イラストレーション/飛永雄大 取材協力/中島健一朗(自然科学研究機構 生理学研究所生体機能調節研究領域 生殖・内分泌系発達機構研究部門准教授)

(初出『Tarzan』No.792・2020年7月22日発売)

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