【最新版】現代人のための“世界一効く”体幹トレーニング

カリスマトレーナー、中野ジェームズ修一さん直伝。インナーユニットを意識した、最新の体幹トレメソッド。

取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 監修/中野ジェームズ修一(スポーツモチベーション)

初出『Tarzan』No.787・2020年5月14日発売

「いきなり体幹トレ」は御法度!

体幹トレと聞いてぱっと思い浮かべるエクササイズはプランク? それともV字バランス? 筋トレはハードル高いけど、これならできそう。有名アスリートも取り入れているという話だし。

てなノリで瞬く間に普及した体幹トレ。でも、そこにちょっと待った!と一石を投じたのが本誌でもお馴染みのカリスマトレーナー、中野ジェームズ修一さんだ。曰く、

「体幹トレーニングのベースとなるスキルは“インナーユニット”の使い方です。これなしにいくら体幹トレを行っても効果は得られません」

「インナーユニット」とは?

現代人のための“世界一効く”体幹トレーニング
体幹の安定のベースとなるインナーユニット。/胸腔と腹腔の境目にある横隔膜、腹直筋の深層にある腹横筋、背骨の椎骨を繫げる多裂筋、そして骨盤の底を支える骨盤底筋群。インナーユニットはこれらの総称。しっかりと機能することでコアが安定し、正しい姿勢を維持できる。

インナーユニットとはコアの深部にある筋肉の総称。上部は横隔膜、下部は骨盤底筋群、後部は多裂筋、そして側面をぐるっと囲んでいる腹横筋のユニットを指す。

イメージは腹部の深層にあるカゴのようなもの。これらの筋肉が内臓の詰まったコアを引き締め、安定させる働きを担っている。

ではさっそく、そのためのプレエクササイズ、インナーユニットを目覚めさせる呼吸法からスタートしよう。

まず「インナーユニット」を呼吸で覚醒。

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骨盤を立てて椅子に浅く腰かけ、背すじを伸ばす。両腕を広げながら胸と腹を膨らませて腰を反らし、鼻から息を吸う。
現代人のための“世界一効く”体幹トレーニング
鼻と口から息を吐きながら両腕をクロス、腰から背中を丸める。横隔膜を意識的に動かそう。

仰向けの姿勢で体幹を意識する。

呼吸でインナーユニットを動かす感覚を摑んだら、今度は作動させ続けるドローインにトライ。ポイントは骨盤を前傾させた脊柱のナチュラルカーブを保って行うこと。アウターの筋肉の力を抜いてインナーユニットを稼働させることに集中するのだ。

最初は仰向け姿勢から始め、四つん這い、膝立ち、立位と子どもの成長過程をなぞってインナーユニットの使い方を身につける。

各3種目を行った後、ウェストが行う前より3〜5cmサイズダウンしていたら腹横筋が使えていた証拠(ただしすぐにサイズは戻る)。これを目安に次のステージへ。

では、まず仰向け姿勢で各10回。

・レベル ①

床に仰向けになり、膝を立てる。両腕は掌を上に向けて頭上に伸ばす。5秒かけてお腹を膨らませて息を吸い、腰を反らす。次に5秒かけて口から息を吐きながら腹横筋を締める。

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CLOSE UP/最初はインナーユニットを脱力させた状態。腹腔を大きく広げるよう意識して息を吸い、腰を反らせて骨盤を前傾させる。
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CLOSE UP/息を吐きながら腹横筋を引き締め、骨盤を動かさずに腰を床に近づける。腰と床のスペースは掌1枚分。これがナチュラルカーブ。

・レベル ②

今度は腕と脚を伸ばした姿勢で行う。足は腰幅。5秒かけてお腹を膨らませて大きく息を吸い、腰を反らせる。5秒かけて口から息を吐きながら腹横筋と肛門を引き締める。

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・レベル ③

最後は動きを取り入れて。床に仰向けになり両腕を伸ばし、膝を立てて片脚を引き上げる。5秒で息を吸いながら両脚を床から浮かせ、5秒で息を吐きながら反対の足を着地。

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四つん這いで、体幹トレの基本を学ぶ。

仰向け姿勢の3つのドローイン直後にウェストサイズがダウンしたら次のステージへ。

仰向け状態で手足を動かしていた乳児がハイハイを始める段階に駒を進める。今度は重力に抵抗して体幹をキープする能力が要求される。体幹は油断すると下へ下がろうとするので、インナーユニットでしっかり引き上げる必要がある。

しかもアウターの筋肉の力を使って引き上げるのは御法度。よって難度はぐっと高くなる。腕や脚を動かしたときにもナチュラルカーブをキープし、インナーユニットの力が抜けないようにすること。気張りすぎて呼吸を止めないよう注意。各10回。

・レベル ①

床に四つん這いになる。5秒かけてお腹が膨らむ程度に息を吸って腰を反らせる。骨盤は前傾。5秒かけて口から息を吐き、腹横筋、肛門を引き締める。腹直筋の力は抜く。

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CLOSE UP/腰を大きく反らせる。このときインナーユニットにはまだ力を入れないこと。肩や顎にも力は入れずにリラックスした状態で。
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CLOSE UP/自分で腰を引き上げるのではない。腹横筋を意識して引き締めることで腰が少し引き上がり、脊椎がナチュラルカーブを描く。

・レベル ②

5秒で息を吸い5秒で吐いて片手と反対側の膝を床から浮かせる。ナチュラルカーブを維持したまま自然呼吸し、4秒で肘を横に開き、脚を伸ばす。4秒で元の姿勢に。逆も。

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・レベル ③

5秒ずつかけて息を吸って吐いてドローイン。背中のナチュラルカーブを作る。これを維持しながら4秒かけて片手と反対側の脚をまっすぐ伸ばし、4秒で元の姿勢に。逆も同様に。

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現代人のための“世界一効く”体幹トレーニング
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膝立ちに移行、体幹への負荷が増す。

ハイハイでスムーズに移動できるようになった幼児は、続いて膝立ちになり、いよいよつかまり立ちをする段階へ。

というわけで、四つん這いで手や脚を動かしてコアを維持できるようになったら膝立ち姿勢でインナーユニットを作動させ続ける練習に進む。両手を床から離した2点支持になるので不安定さが増し、より難度が上がる。カラダを傾けたり腕を動かしたときに、アウターの筋肉、とくに肩、首、お尻、太腿に力を入れないようにすること。

もちろん、腹直筋の力は使わない。カラダを傾けたとき、腹直筋が硬くならないように。各10回。

・レベル ①

まずは準備運動。腰幅のスペースを開けて膝立ちになる。両手は自然に下に垂らす。5秒かけてお腹を膨らませて息を吸って腰を反らし、5秒で息を吐いて背中をやや後ろに移動。

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・レベル ②

膝立ち姿勢で両手を前に伸ばす。掌は内側。5秒で息を吸って腰を反らす。5秒で息を吐いて腰の反りを少し戻す。そのまま自然呼吸で4秒で膝から上を30度程度後ろに倒す。

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CLOSE UP/腹腔を広げるイメージで息を深く吸って、骨盤を前傾させ腰を大きく反らせる。膝から頭まではまっすぐ一直線にキープする。
現代人のための“世界一効く”体幹トレーニング
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CLOSE UP/腹横筋と肛門を引き締めることで、腰が自然に後ろに移動し、背中の反りがやや戻ってナチュラルカーブに。これをキープしつつ後傾。

・レベル ③

最後は両手を上に伸ばして行う。5秒で息を吸って腰を反らし、5秒で息を吐いてナチュラルカーブ。そのまま膝から上を30度程度後傾。腰が引けたり顎を上げないように。

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立った姿勢で、体幹をフルに活用。

成長のプロセスを踏んで、いよいよ立っち!

膝立ちと同じ2点支持でも、支持面が足裏だけと非常に小さくなるので不安定感が増す。さらに、下半身の動作が加わるのでインナーユニットをしっかり作動させ続けないと、たちまち姿勢が崩れて全身グラグラ状態に。逆に、アウターに頼らずインナーユニットを使い続けることができれば、さまざまな日常生活動作をきれいな姿勢で行うことができるということ。

「体幹が入った!」という感覚が摑めて、行った直後にウェストサイズがキュッと絞れていたらドローインは免許皆伝。各10回で。

・レベル ①

椅子の座面に左右の手をつき、爪先立ちでカラダを前傾、頭から踵までを一直線にする。5秒で息を吸って腰を反らせ、次に5秒で息を吐いて腹横筋と肛門をしっかり引き締める。

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CLOSE UP/息を深く吸って腹腔を膨らませたときに、腰を大きく反らせる。インナーユニットは脱力状態。肩と顎の力も終始抜いておくこと。
現代人のための“世界一効く”体幹トレーニング
CLOSE UP/骨盤や腰は自ら動かさない。息を吐くと同時に腹横筋を引き締めることで腰の反りが自然と少し戻り、ナチュラルカーブを描く。

・レベル ②

壁から少し離れた場所に立ち、壁に背中をつける。両足は腰幅で両手を上に伸ばし、膝を曲げる。5秒で息を吸って腰を反らせたら5秒で息を吐いて背中の反りを少し戻す。

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・レベル ③

片脚立ちになり、両腕を肩の高さで左右に伸ばす。軸脚の膝を曲げて上体を前傾。5秒で大きく息を吸いながら腰を反らせる。次に5秒で息を吐いて腹横筋を引き締める。逆も。

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便利な生活で忘れた「インナーユニット」。

「アスリートは指導すればインナーユニットを動かすことができますが、一般の人はそもそも横隔膜さえ意識できないことが多いのです。私は現代人の9割はインナーユニットを使えていないのでは、と思っています」

階段を使ったり重い荷物を持って長時間歩いたり家電に頼らず掃除や洗濯をしていたとき、インナーユニットは確実に稼働していた。でないとコアが安定せずにたちまち疲れてしまうからだ。

一方、便利な生活に慣れ切った現代人はインナーユニットの使い方をすっかり忘れてしまった。このため、すぐ何かに寄りかかったりデスクに肘をつかないと姿勢が安定しなかったり、背中や腰が丸まるといった悪姿勢に陥りがちに。

「一般の人がいきなり体幹トレを行うということは、右利きの人が左手で字を書こうとするときに握力を鍛えるようなもの。まずは左手でペンをうまく扱えなければ話になりません。同様にベースになるインナーユニットの使い方を練習することが重要です」