多くの人が、体重を足の外側にかけてしまいがち。
さて、上の立ち姿の人々や下の座り姿の人々を見て、どの人が正しい姿勢をしているだろうか。って、一目瞭然とは思うが、それぞれ手前のスーツの男性である。
フィジカルトレーナーの坂詰真二さんはこう語る。
「多くの人が、体重を足の外側にかけてしまいがちですね。たとえば、立ち姿のイラスト、右端の女性は左が軸脚で、体重をそちらの外側にかけているのがよくわかりますね。左端の女性も左が軸脚で、そちらの外側に体重がかかっており、クロスした右脚も外に荷重しています」
「他の男性も片側の足の外に体重をかけている状態。太腿の外側にある腸脛靱帯や膝関節の内側に体重を預けると楽に立っていられますが、やがて靱帯が弛んで弱くなって関節が変形してしまう。脚を組んで座る習慣もよくありません。
悪い姿勢は自分のカラダを自分で蝕むことに繫がります。修復不可能になる前に、日常の中で悪い習慣に気づいてケアすることがとても大切です」
歩き方もおかしくなってしまう。
左右の偏りだけでなく、前後の偏りにも注意したい。
座り姿のイラストの右の2人の男性のように、椅子にもたれかかると骨盤は後傾する。下半身も体幹も緩んだ状態が癖になり、姿勢が悪くなるばかりか、後ろにカラダが倒れやすい状況が生じてしまう。歩き方もおかしくなり、前方や後方への転倒でケガをすることが多くなり、危ないのだ。
「立ち姿勢でも座り姿勢でも、まず足元から見直すことが大事です。両足の外側に体重をかける悪い癖を修正し、そのうえで背すじを伸ばした姿勢を保持するのが理想です。
ちょっとした機会に、1分でもカラダの使い方を練習する時間を持てば、姿勢と動きを修正し、靱帯や関節や骨への負担を減らすことができます。軸脚ではない側の脚や、カラダの使いにくい側を多く使うことで、左右差や前後差が少なくなっていきます」
立つとき、座るとき、歩くとき、ほんのちょっと注意するだけで確実に姿勢はよくなっていくし、日常の動作が滑らかに、そして美しくなっていく。特別に時間を割く必要はないし、用意するモノも特にないので、ぜひ実践していってもらいたい。
出勤中やオフィスでできること。
1. 青信号を待ちながら。爪先をハの字にして、内側荷重に慣れる。
交差点で信号の点滅が始まり赤に。普段はイライラしてしまうだろうが、これをトレーニングのチャンスと思うべし。
まず、背すじを伸ばしてお尻を後方に突き出すように立ち、爪先をやや内側に向けて、足をハの字にする。そして、足の外側を浮かせるような感覚を持って立つ。
さらに、膝も多少内側に入れるように意識する。普段やりがちな悪い姿勢の逆の形を作るのだ。1回に30秒~1分程度行えばよい。
もちろん、信号待ち以外で立っているとき試みてもいい。毎日、何度も行うことで、足の外側に偏った荷重が修正されて、正しい姿勢に戻っていく。
2. 駅で電車を待ちながら。片脚で立ってカラダを安定させる。
電車を待っているとき、普段の軸脚とは逆側の脚を鍛えてみる。といっても、筋力を高めるのだけが目的ではない。
逆側の脚は、荷重されることに慣れていない。軸脚は荷重したときにカラダのポジションが自然に決まるが、逆側の脚だと何か違和感を覚えてしまうはずだ。
それを解消するために、あえて逆側で立ってみる。内側荷重を意識し、軸足を一歩前に出し、踵だけを地面につける。背すじは伸ばし、骨盤は立てること。これを30秒~1分キープする。
毎日、何度でもやってほしい。ただ、慣れないうちはこの姿勢は安定しないので、壁や柱の近くで行おう。
3. 揺れる電車で立ちながら。両足に均等に荷重して、吊り革に体重を預けない。
多くの人は電車の中だと×のような格好でスマホを見ている。で、文字など打とうと思って、吊り革から手を離すと…、転倒しそうになり、慌てて体勢を立て直すことになる。
×では、体重を吊り革と右足の外側で支えている。吊り革から手を離すと、当然、カラダは右方向へと傾いてしまうのだ。だから、両足に均等に荷重する〇のような姿勢をとる。
このときに、足の爪先は前に向け、脚の内側に荷重するように意識する。
仮に吊り革から手を離しても安定した体勢を維持することができ、多少の揺れにも耐えられる。なにより、正しい姿勢に近づけるのだ。
4. オフィスで座りながら。両膝をしっかり閉じ、爪先を揃えて座る。
オフィスで資料を見る。こんなとき、何も意識しないと、両膝は自然に開いていき、いつしか足の外側に荷重してしまいやすい。座っている間、靱帯や関節にはずっと負担がかかるから大変。正していこう。
まず、背すじを伸ばして胸を張り、骨盤を立てるようにしてイスに深く座る。背中が丸まってしまうと、骨盤は後傾するので注意。両膝をカラダの中心でしっかりと閉じる。そして、爪先を揃えて踵をやや外側に開き、足をハの字にする。
足の外側を少し浮かせることで外側に荷重する癖を修正することができる。30秒から1分。毎日、何度やってもOK。
5. デスクワークをしながら。背すじを伸ばし、軸脚を後方に引いて座る。
ほらほら、パソコンで仕事をしている人。知らず知らずのうちに、画面に顔が近づいて、背中が丸まってきていますよ。デスクワークのときに一番注意してほしいのはコレ。
常に背すじを伸ばして、骨盤を立てておくことが重要なのだ。そのうえで、左右のバランスを修正する。膝を合わせて座り、軸脚を後方へ引き、踵を床から浮かせる。体重は逆側の骨盤にかける。すると、軸脚側の尻が座面からやや浮いた状態になり、逆側の脚に荷重することができるようになるのだ。
この姿勢で30秒~1分。デスクワークのときはコレ!と習慣になってしまえばしめたもの。
6. 廊下を歩きながら。左右の足を揃えて、小さな歩幅で歩く。
では、正しい歩き方も覚えよう。男性に多いのが、爪先と膝を外側へ向け、足を左右に開いて歩く人。
体重は常に外へとかかるから、一歩一歩カラダが左右に振られ、不安定になる。歩いたときには、カラダがあまり揺れないのが理想。そこで、歩幅を小さくして、まっすぐ歩くトレーニング。両足を揃えて立ち(左右の足の間隔は5cmほど)、右足を前に出す。左足の爪先の横に踵を置いたら足裏に荷重して、足先をつく。
続いて左足を爪先立ちに。軽くキックするように左足を蹴り出し、踵で着地。これを繰り返す。時間に余裕があるときに、屋内で行ってほしい。
7. 舗道を歩きながら。白線の上を歩くように、爪先を前に向けて進む。
足の外側に体重がかかると、カラダが左右に振られることは話したが、なぜこれがいけないかも説明したい。
カラダが傾くということは、傾いたほうの脚の外側に大きな負荷がかかるということ。そう、靱帯と関節に負担がかかるのだ。
こうならないために、もうひとつトレーニング。30cmの幅に両足が収まるようにして歩こう。このとき、爪先はまっすぐ前に向け、歩幅は広めに。足の内側に荷重する意識を持つ。
もちろん、背すじは伸ばし、骨盤を立てること。子供のとき道路の白線の上を歩く遊びをやっただろう。あれと同じゲーム感覚で30mほど歩こう。
8. 階段を上りながら。軸脚とは逆側の脚を階段を使って鍛える。
階段は軸脚とは逆側の脚を鍛える絶好のトレーニングギアになってくれる。まずは、上りから。背すじを伸ばして骨盤を立てるのはいつも通り。
で、ここから注意してもらいたい。軸脚とは逆側の足を、1段飛ばした上の階段に乗せる。このとき、爪先は正面に向け、上体は過度に前傾させないこと。階段に乗せた側の脚力だけでカラダを引き上げて、両足を揃えて立つ。これを繰り返すのだ。
逆脚に荷重する感覚がわかってくるし、筋力アップも狙える。片側で1フロア分を上がるだけでよい。しっかり体重を乗せて上ろう。暇があるときは、階段を上って鍛えたい。
9. 階段を下りながら。足裏をソロリと落とし、カラダをゆっくり下ろす。
次は階段を下ってみよう。背すじ、骨盤の用意はできた? では始める。階段を上るときとは逆に、まず軸足を1段下ろす。このとき上体をあまり前傾させないようにしたい。軸足の足裏を階段に置いたら、ここに荷重して逆側の足を同じ段に下ろす。
ひとつ大きなポイントがある。それは、下りるときは動作をゆっくり行うということ。最初に軸足を下ろしたときに、足裏に地面からの衝撃を受けるようではダメ。ソロリ、と下ろすようにしたいのだ。それによって、逆側の脚が鍛えられていく。こちらも1フロア分。上りよりカラダが安定しにくいので注意してほしい。
家に帰ったら、休みながらカラダの偏りをなくす。
一日の終わりに、疲れたカラダを癒やしながらカラダの偏りをなくそう。
これも、正しい姿勢のために重要だ。腰、腿の前側、腿の後ろ、尻の4か所の左右差を解消していく。テレビを見ながら、音楽を聴きながらでもやってみよう。生活の中で負荷を受けることが多く、疲弊しやすい軸脚の側が硬くなることが多い。
実際に行ってみると、左右どちらが硬いかはすぐにわかるから、そちらを多めに行いたい。
具体的には左右とも姿勢を作ったら10秒キープする。そして、硬いほうのみ、さらに10秒×2セットだ。座った状態から、徐々にベッドで寝た状態へ移るように作ってある。
終わったら、おやすみなさい。
1. 上体をゆっくり倒し、腰の筋肉を伸ばす。
まずは、じんわり腰の辺りの筋肉を伸ばしてやろう。左右の膝を曲げて倒し、床に座る。右脚をカラダの後方へと下げ、その太腿の前に左足を置く。右腕を伸ばして、手を右膝の上に乗せ、左手は頭の後ろへ。背すじを伸ばして、上体を右斜め前方にゆっくり丸める。左側の腰部が伸びたらキープ。終わったら逆もやり、硬いほうはさらに2回行う。
2. 上体を後方に倒して太腿の表側を伸ばす。
次は、太腿の表側にある筋肉。脚を伸ばして床に座る。踵が尻につくように、右膝を深く折って、膝から下を横にずらす。上体をやや後傾させたら、腕を伸ばし床に手をつき支える。上体をさらにゆっくりと後傾させ、左肘でカラダを支え、さらにカラダを左へとひねってキープ。右脚の太腿が伸びる。逆もやり、硬いほうはさらに2回行う。
3. ベッドで寝ながら。膝を伸ばして太腿裏をストレッチ。
ベッドで横になりながら、太腿の裏側にある筋肉をストレッチする。仰向けになって右脚を曲げ、膝を上体へと引き寄せる。両手でふくらはぎを抱えるように持つ(柔軟な人は足首をつかんで行ってほしい)。膝をゆっくりと伸ばしながら、手で脚を上方へと引き上げる。太腿の裏が伸びているはず。逆もやり、硬いほうはさらに2回行う。
4. 膝を胸に引きつけて尻の筋肉をほぐす。
ベッドで仰向けになり、尻にある大きな筋肉をほぐしていく。脚を伸ばして仰向けになる。右脚を曲げて、膝を上体へと引き寄せる。引き寄せた膝を左右の手で包むように持つ。両肘を曲げて、膝をさらに引き寄せて、胸に近づけたらキープ。尻がパンと張っていれば、伸びている証拠。終わったら逆もやり、硬いほうはさらに2回行う。