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交感神経を活発にする→代謝上昇→痩せやすくなる
「ぜんぜん食べすぎていないのに太る!」というのはダイエッターの古典的な言い訳だが、実際に過食しなくても太る場合がある。
その一因は、交感神経の活性の低下。これは1991年にアメリカのジョージ・ブレイが提唱した仮説であり、「肥満の大部分は交感神経の活動低下による」という英文の頭文字(MONA LISA)から「モナリザ仮説」と呼ばれている。
ところが、肥満でも運動に励んでいると、モナリザ仮説と真逆に交感神経が活発に働くようになり、代謝が上がって痩せやすくなる。
自律神経は安静時でも消費される基礎代謝と深く関わり、交感神経の活性が低いと基礎代謝が下がり、太りやすくなる。基礎代謝は1日に消費しているエネルギーのおよそ60%を占めているからだ。
運動なしで食事を減らす→代謝低下→痩せにくくなる
いまよりも太るか、それとも痩せるかを決めているのは、突き詰めると食事などからの摂取エネルギーと、基礎代謝や運動などによる消費エネルギーのバランスだ。
運動もせずに、摂取エネルギーを減らすダイエットのみで痩せようとすると、ダイエットを飢えのサインと勘違いしたカラダは自らを守るために省エネモードに入り、交感神経を抑えて基礎代謝を押し下げようとする。これがモナリザ仮説の真相。
でも、ダイエット中でも運動すれば、交感神経はみるみる元気になる。「運動の刺激で副腎から血中に分泌されるアドレナリンというホルモンは、交感神経に作用して活性を上げる働きがあります」(東京理科大学理工学部の向本敬洋講師)。
運動なら筋トレでも有酸素運動でもOK。
交感神経のカギは、ミトコンドリアにあり
交感神経が働きかけるのは、筋肉などの細胞内にあり、活動エネルギーを生み出す発電所であるミトコンドリア。交感神経はミトコンドリアに備わっている「UCP3」という特殊なタンパク質を刺激し、脂質をエネルギーに代謝するプロセスを加速するのである。
その結果として1日の基礎代謝も消費エネルギーも増えるから、摂取エネルギーとの収支も赤字に傾きやすくなる。この赤字分を補うために無駄な体脂肪が分解&消費され、カラダが絞れてきて、キレイなカラダになるのだ。
運動後も38時間は、代謝レベルが上がる可能性がある
クルマがブレーキをかけても急に止まれないように、カラダだって運動をやめても即座に安静状態に戻るわけではなく、しばらく代謝が高い状況が続く。
これはEPOC(Excess Post-exercise Oxygen Consumption)という現象。和訳は「運動後過剰酸素消費」であり、もともとは運動中、十分に供給されなかった酸素の一時的な“借金”を返すため、運動後に酸素消費が増えることを指す。
代謝が安静時より高まるのは、細胞の修復、使ったグリコーゲンの補充、ホルモンの分泌と調整などにより、体内を運動前の平和な環境へ戻そうとする「ホメオスタシス(恒常性)」回復のためだとされる。
高強度筋トレで38時間もEPOCが続く
筋肥大に最適な70〜80%1RMという高強度の筋トレをおよそ30分間実施。それから2日間にわたり、被験者の酸素摂取量を測定した。その結果、トレーニング前の安静時より高い環境が38時間続いているとわかった(*:トレーニング前との有意差)。
EPOCが長引くほど代謝力向上に有利だが、運動の種類によってEPOCが続く時間は異なる。高強度のトレーニングを長時間続けるほどEPOCは延長されて、一般的に低強度の有酸素運動より、高強度の筋トレの方がEPOCは稼げる。
「30分の筋トレではEPOCは38時間ほど続きますが、30分の有酸素運動では約45分で終わるという報告があります」(向本先生)
酸素をたくさん使う有酸素のEPOCが低いというのは意外だが、それは強度が低めで酸素の“借金”が生じにくく、血液循環が促されてホメオスタシスの回復もスムーズに進むからだろう。
筋トレは多めに、有酸素は控えめに
運動を習慣にできたら、代謝高めで太りにくい体質に変身できる。筋トレと有酸素運動に分けてその実態を見てみよう。
まずは筋トレ。筋肉は人体でもっともエネルギー代謝が盛んなパーツであり、じっとしているときも体温を保つためにミトコンドリアにある前述のUCP3で体脂肪を燃やして熱を作っている。
これは基礎代謝のおよそ30%を担っている。ゆえに基礎代謝は筋肉量に比例しており、重めの抵抗をかけて筋肥大を促すと基礎代謝が上がり、安静時のエネルギー代謝が底上げされる。
こうした量的な変化ばかりではなく、ハードな筋トレをするとミトコンドリアの代謝効率が上がって、体脂肪を燃やしやすくなる(下グラフ参照)。
筋トレでミトコンドリアの性能が向上
1人の健康な男性が12週間、週3回のハードな筋トレを継続した。その結果、トレーニング後に骨格筋内のミトコンドリアの呼吸性能力の指標が有意に向上した。
したがって筋トレは好きなだけやって構わないのだが、有酸素はほどほどに抑えた方がよさそう。
有酸素は運動中にたくさんのカロリーと体脂肪を消費してくれる。しかし、やりすぎてしまうと筋肉のミトコンドリア内のUCP3の機能がダウンして、安静時のエネルギー代謝が下がる恐れがある。
有酸素で多くのカロリーと体脂肪を日常的に使っていると、カラダは「省エネ体質になった方がラク」と判断するのだろう。代謝を上げたいなら、筋トレ多め、有酸素少なめを意識するのがベストだ。
これが、ミトコンドリアに効く筋トレメニュー
トレーニング各種目のフォームややり方は、下記をご参考に。