筋肉を増やす五大栄養素。何を、いつ、どのくらい摂ればいい?
筋育に欠かせない主な栄養は5つ。プロテイン、アミノ酸(BCAA、 HMB)、糖質、そして“最後のひと踏ん張り”が利くサプリメント、クレアチンを仲間に入れて筋肥大を促すGREAT5としよう。確実に取り込んで、筋合成を進めよう。
取材・文/黒沢祐美 撮影/水野昭子 スタイリスト/矢口紀子 取材協力/桑原弘樹(コンディショニングスペシャリスト、桑原塾主宰)
(初出『Tarzan』No.718・2017年5月11日発売)
立派な植物を育てるには、土や水、日光と栄養が必要であるように、筋肉を効率的に育てるためにも栄養が欠かせない。代表的なものといえばプロテイン、つまりタンパク質とアミノ酸だ。アミノ酸はタンパク質の構成要素の一つだが、あえて別々に表記したのはアミノ酸単体でも力を発揮するため。
「血中のアミノ酸濃度を常に高い状態にキープすることで筋肥大は促進されます。しかしアミノ酸は体内に蓄えておけないため、こまめに補給する必要があるのです」(コンディショニングスペシャリストの桑原弘樹さん)
飢餓状態が続くと筋肉を分解してエネルギーとして利用してしまうため、トレーニング後は筋肉の分解を抑えるためにも、エネルギー源である糖質を一緒に摂ることをお忘れなく。理想は糖質3に対してタンパク質1の割合だが、例えばバナナ+プロテインでもOK。
1. プロテイン
トレ直後に摂って、2時間後にバンバン吸収だ。
筋育を目指すなら、1日に必要なタンパク質量は体重1kg当たり1.5~2g。65kgの人なら97~130gだ。食事から必要なタンパク質の半量は摂れるため、残りをプロテインで補うことをオススメしたい。
効率的に吸収できる量は1回につき20gのため、理想は間食も含め20〜30gを1日2〜3回摂取。タイミングは、血中のアミノ酸濃度を維持する意味で朝食後、そしてトレーニング後。
ホエイプロテインは完全に吸収されるまで2時間かかるが、筋タンパクの合成のピークもトレーニングの約2時間後であるため、直後に飲むとこれがピタリと一致する。
「プロテインはあくまでもタンパク質を補充するためのもの。補われた結果、栄養の土台が整い筋肥大に繫がる、ということはありますが、プロテイン=筋育ではありません。お間違えなく」(桑原さん)。
2. 糖質
実は、ストップ・ザ・筋分解を担う重要アイテム。
太りやすいといったイメージから、避けられがちな糖質。けれど筋育においては極めて重要な役割を果たす。
「そもそも私たちヒトのカラダは飢えを凌ぐために、脂肪をエネルギーとして蓄える一方、筋肉はエネルギー消費量が大きいため必要以上につけない、という仕組みになっています。そのため、常に筋肉を分解しようとする力が働く。これを抑えるのがエネルギーそのものである糖質です。糖質を入れるとカラダが飢餓ではないと判断し、筋肉を壊すのをストップします」(桑原さん)
基本は1日3食、きちんと炭水化物を食べること。プラス、トレーニング直後にはGI値の高いうどんなどの糖質を摂る。あるいはスポーツドリンクなどからブドウ糖を摂る。糖質が空っぽの状態を長く続かせないように、空になったタンクに補充をすることが筋肥大への近道。
3. BCAA
運動強度アップのためにトレ中もチャージを。
お金を貯める時に収入と支出を同時にコントロールしなければならないように、筋肉も合成させるだけでなく、分解を抑えなければならない。この筋肉の分解を抑える栄養素が、必須アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン=BCAAだ。
「BCAAを飲むことで、いつもより高い運動強度でトレーニングができます。これがカラダを筋肥大へと導いてくれる」と言う桑原さん。
「飲むタイミングは、トレーニング前〜中、1時間に4g程度が目安。トレーニング強度に応じて、トータルで20gぐらい摂取してもかまいません。代謝されたBCAAは乳酸を作らないエネルギーになります。乳酸自体は悪者ではありませんが、体内に一時保存されることでカラダは酸性に傾くため、運動強度が落ちてしまうのも事実。BCAAを飲んでいる方が乳酸ができにくいというデータもあります」。
4. HMB
タンパク質合成スイッチを押す陰の主役。
これだけ時代が進化していても、飲むだけで筋肉がつくサプリメントは未だ存在しない。しかし最近、筋肉を太くさせる信号伝達物質mTOR(エムトール)を刺激できるとして、HMBというサプリメントが注目を集めているのをご存じだろうか。
「HMBはBCAAに含まれるロイシンの代謝物。ロイシンのわずか5%がHMBになるので、貴重なものです。これとトレーニングを組み合わせるとタンパク質の合成スイッチであるmTORが刺激され、筋肥大を促進します」(桑原さん)
HMBでタンパク質合成を促進できるならBCAAはいらないのでは?と思いがちだが、BCAAには運動強度を上げる、筋肉の分解を抑えるといった役割がある。トレーニング中にBCAAを摂るなら、HMBはタイミングをずらして食後などに1回2gを目安に摂取しよう。
5. クレアチン
あと1回!を可能にするパワーの源。
例えばベンチプレスでマックス6回上がったとする。同じ重さであと1回、2回上がれば、その分の負荷が筋肥大に繫がるのはお分かりいただけるだろう。この“あと1回”の最大筋力を発揮できるようにするのが、クレアチンである。アミノ酸の一種ではあるが、タンパク質を構成するアミノ酸とは異なる。
「いざという時のためにクレアチンを体内に溜めておくには、1日20gを5〜7日飲み続けるというローディングを行います」と桑原さん。
「ただし20gを一度に飲んでも吸収し切れないため、1回5gで4回に分けて。タイミングは3度の食事後とトレーニング直後がいいでしょう。すると体内のクレアチン量が1割程度増える。その後は増えたクレアチンを維持するために、1日に5gを1回摂取します。これができれば確実に運動強度は上がりますよ」