自宅で4分間でできる“鬼”のHIITトレ「タバタ」って、なんだ?
取材・文/石飛カノ イラストレーション/高橋 =iDRAWS) 監修/田畑泉
(初出『Tarzan』No.690・2016年2月25日発売)
欧米では2000年頃からアスリートやトレーニングマニアに注目され、やがて健康志向のトレーニーにまでブームが広がった、間欠的に行う短時間の高強度運動「HIIT(High Intensity Interval Training)」。その火付け役となったのが、立命館大学スポーツ健康科学部教授・田畑泉先生によるタバタトレーニングだ。
20秒間運動した後に10秒間の休息をとる。これを8セット繰り返すというのが基本メソッド。なおこのときの運動強度は「非常にキツい」と感じる運動強度が最大酸素摂取量の100%を上回る170%!? 鬼トレを始めるまえに知っておいてほしい5つのこと。
目次
1. タバタトレーニングは誰が行ってもいいもの?
鬼トレはなにもアスリートやトレーニングマニア、ムキムキマッチョマンだけのものではない。その証拠にタバタトレーニングは体力の低い人でも実践できる。
最大酸素摂取量の170%の強度といっても、最大酸素摂取量自体に個人差がある。ある人には120%くらいで賄える運動強度でも、体力の低い他の人にとっては170%以上になることもある。
ただし、もともと血圧が高いという場合は注意が必要。運動中にかなり血圧が上昇するので脳血管障害が起こるリスクはゼロではない。
自体重で行う場合の運動では関節に大きな負荷がかかるので、関節に問題がある人も同様。その場合は必ず医師に相談するなどメディカルチェックを。
2. キツい運動だから、週イチでもいい?
8セット目の運動では誰もが最大酸素摂取量に達し、わずか4分のトレーニングで効率的に体力が向上する。とはいえ、当然のことながら1回や2回、タバタトレーニングを行ったからといって即、効果が望めるわけではない。
現在のところ、頻度は週2回、これを6週間続けると最大酸素摂取量が向上することが分かっている。田畑泉先生によれば、6〜12週間継続すれば効果が得られるという。
また、アスリートならばオフシーズンに集中的に行ったり、マラソンを走るという人なら、雨の日などにタバタトレーニングを取り入れるという手もありだ。
とりあえず週2〜3回のタバタトレーニングを12週間継続し、己のカラダの変化に驚いてください。
3. 早く効果を出したい。1日2回やってもいい?
SNSで「今日はタバタトレーニングを2回やりました」ってなコメントを目にすることがしばしばある。だが、絶対にそれはありえませんから!
たとえわずか4分間といえども、8セットきっちり行えばいかなるトップアスリートでも疲労困憊状態になる。それがタバタトレーニングだからだ。
1日に2回も3回も行えるということは、明らかに運動強度が低いということ。最大酸素摂取量の170%どころか100%にも達していない可能性がある。これでは当然、最大酸素摂取量も最大酸素借も、思うような向上は期待できない。
6セット目の休憩時に心拍数を測ってみよう。160以下なら運動強度が低すぎると心得よ。
4. 20秒+10秒という時間はどうやって測る?
20秒の運動と10秒の休息。これまでHIITはさまざまな組み合わせで試されてきたが、このタバタトレーニングの運動と休息のバランスはある意味、究極。これ以上に効率的な体力アップが科学的に証明されている組み合わせは、今のところ存在しない。
ならば、きっちりと設定時間通りに行いたい。が、とんでもない高強度運動なので時計を見ながら行う余裕はとてもない。
で、ぜひ利用したいのが、スポーツウォッチに搭載されているインターバルタイマー。時間を設定しておけば自動的にアラームが鳴るのでそれに従って運動と休息を繰り返せばOKだ。
スマホのアプリにも「TABATA」の名がついたタイマーがいくつかあるので、こちらを利用してもよし。
5. セット数が少なくてもそれなりに効果はある?
あまりに強度が高くて4セットしか続かない。それでも効果はちょっと期待できるかも…。
残念ながらそうはいかない。セット数を繰り返すことにはちゃんと意味があるからだ。田畑先生の論文では20秒の運動と10秒の休息を6セット繰り返すことで最大酸素摂取量や最大酸素借の向上が見られることが報告されている。
4セットで終了してしまってはただの高強度トレーニングでタバタトレーニングにならない。いってみれば、くたびれ損。
4セットしか続かないのはその人にとって運動強度が高すぎるから。強度を落としてギリギリ6〜8セット行えるよう調整すること。後半は運動回数が落ちても構わないので、セット数をきっちりクリアすることが重要だ。
教えてくれた人
田畑泉(たばた・いずみ)/立命館大学スポーツ健康科学部教授。スピードスケートコーチの入澤孝一氏が導入していたトレーニングを分析、1996年論文発表。TABATAの名が世界に広まった。