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「オシッコが黄色すぎたら?」「運動前後で脱水しないようにするには?」など、体水分量に関する悩みはつきない。カラダの水分量こそ若さの証し。いつまでもみずみずしくいるために、水との上手な付き合い方を探った。
目次
こちらの記事で触れたように、私たちは通常1日1・2L程度の水を飲む。しかし、水分摂取を重視する馬渕先生は1日3Lもの水を摂るという。
「患者さんにも体重×40〜50ml、60〜70kgなら3Lの水分摂取を薦めます。知らない間に軽度の脱水を起こしているケースが多く、それが体調不良につながりやすいからです」
水分は一度に多く飲んでも吸収が悪い。1時間に180〜200mlの割合で15〜16回摂るイメージだ。
水を飲みすぎると浮腫になると勘違いしている人も多いけれど、浮腫の原因は運動不足などによる循環不全。水分の排泄を行う腎臓に異常がなければ、不要な分は尿として排泄されるから、浮腫を引き起こす心配はない。安心して水分摂取しよう。
タンパク質は筋肉量を保つのに大切だが、水分量をキープするのにも役立つ。大事な血液を保つのだ。
鍵を握るのはアルブミンというタンパク質。血中のアルブミンには膠質浸透圧を維持する作用があり、1gで約20mlの水分を保つ。タンパク質不足で血中のアルブミンが減ると、水分が血管の外に漏れ出て血液量は減り、浮腫と血流の悪化が起こる。
次に水分維持に必要な栄養素は、ALA(5-アミノレブリン酸)、コエンザイムQ10、鉄の3点セット。
「これらは代謝水を合成するミトコンドリアが正常に機能するために欠かせない働きがあります」
ALAは黒酢や納豆、イカやタコ、コエンザイムQ10は肉類や青魚、鉄はレバーやヒジキなどに多く含まれている。
コーヒーや緑茶のようなカフェイン飲料、ビールなどのアルコールには利尿作用がある。カフェインもアルコールも尿を作る腎臓の血管を拡張させるため、尿の量が増えてしまうのだ。とくに一度にごくごく大量に飲めるビールは、飲んだ量の1・1倍の尿を出して脱水を促す。
では、脱水予防のためにカフェイン飲料やお酒は控えるべきか。
「浮腫の解消や血圧を下げるために医師が利尿剤を出すこともあります。老廃物も速やかに排出できますから、尿をどんどん出すのは悪いことではない。その後にきちんと水分補給し、脱水を避ければいいのです」
その水分補給をカフェイン飲料やお酒でするとマッチポンプのようなもの。補給は水で、が鉄則だ。
適切に水分補給していると2時間に1回はトイレに行きたくなる。膀胱の容量は最大500mlで、150mlほど溜まると尿意を催すからだ。
それ以上の頻度でトイレに行くのは頻尿。睡眠中は尿の量が減り、膀胱の容量も増えるから一度もトイレに起きないのが普通だが、夜2回以上トイレに起きるなら頻尿を疑う。
その一因は40代以降に増える過活動膀胱。神経の異常や加齢などで急な尿意や尿漏れを起こす。膀胱上にある女性の子宮、膀胱下にある男性の前立腺も影響。女性は妊娠で膀胱が圧迫され、将来的に尿漏れを起こしやすくなる。
男性も前立腺が硬くなると膀胱を圧迫する。前立腺は精液を作る場所。性生活が不活発だと硬くなりやすい。
喉が渇いたときにはすでに軽い脱水状態。そうなる前にこまめな水分補給が求められる。
チェックしたいのは、尿の色。尿は正常なら薄い黄色をしているが、脱水が進むほど黄色が濃くなる。
尿の黄色は、新陳代謝で壊された古い赤血球に含まれるビリルビンという黄色い色素によるもの。脱水すると尿で排泄する水分を減らそうとするので、ビリルビンなどの老廃物の割合が相対的に増えて尿の色も濃くなる。夜中にトイレに起きて排尿すると、日中よりも黄色いのは、寝ている間は水分補給が途絶え、脱水しているからだ。
日中でも尿の色が濃くなったら、水分補給が足りないと反省すべし。ただ例外的にサプリの成分で尿が濃くなるケースもある。
筋トレで筋肉を保ち、有酸素運動で余分な体脂肪を燃やすのは、体組成バランスを整える王道中の王道。だが運動中は大量に発汗しやすい。くれぐれも脱水しないように。
運動後に体組成計に乗り、「1kg痩せたぞ!」と喜ぶのはナンセンス。体脂肪1kgは7,200キロカロリー。フルマラソン1回で消費するのは約2,400キロカロリーだから、1セッションのトレーニングでそんなに大量の体脂肪が燃えるわけがない。
減ったのはほかならぬ水分。運動前より体重が2%以上減っていたら、水分補給が足りなかった証拠だ。つまり体重70kgで運動後が68.6kg未満ならレッドカード。運動前・中・後に水かスポドリをコップ1杯ずつ数回に分けて水分補給しよう。
取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/矢口紀子 取材協力/馬渕知子(マブチメディカルクリニック院長)
初出『Tarzan』No.760・2019年3月7日発売