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足りてますか? カラダに不可欠な、水のはなし

体組成を測定する体組成計では、体脂肪量や筋肉量だけでなく、体水分率も計測できるが、カラダの水分量こそ若さの証。いつまでもみずみずしくいるために、水との上手な付き合い方を探りました。

体内の水分が担っている役割

細胞内外にある水の役割をまとめると以下の6つがある。いずれも健康維持の鍵を握るものばかりであり、ゆえに3日以上の水分の欠乏は致命的でもある。

  1. 細胞や組織が求める酸素や栄養素を供給する。
  2. 不要になった二酸化炭素や老廃物を運び去る。
  3. 体温を一定範囲内に保っておく。
  4. ホルモンを運んで効果を発揮させる。
  5. 免疫系と解毒系を正しく働かせる。
  6. 細胞内でアミノ酸を畳んでタンパク質を合成する。細胞内でアミノ酸を畳んでタンパク質を合成する。

カラダを満たす水こそが健康のベースを作る

海が地球の生態系と生き物に不可欠なように、人体の水=体液も生きるために欠かせない。

細胞外の体液はライフラインそのもの。酸素や栄養素を運び、不要な二酸化炭素や老廃物を除去する。カラダの活動を司るホルモンも体液が運ぶし、免疫系や肝臓と腎臓を中心とする解毒系も体液中で作用する。

また体温は37度前後に保たれるが、これは「温まりにくく冷めにくい」という水の性質を利用している。

水分は細胞内でも大活躍。たとえばタンパク質。タンパク質はアミノ酸からできており、細胞内には遺伝子の指令通りにアミノ酸を作る工場がある。そして、このアミノ酸には水を嫌う疎水性と水に親しむ親水性がある。

アミノ酸は工場から吐き出されて細胞内の水に触れた瞬間、それぞれが水に反応してたちまち立体構造を作り、一人前のタンパク質となる。こうしてカラダを作るタンパク質は細胞内で合成。つまり、水がなければタンパク質も作れないのだ。

体内の水は細胞内か細胞外かで働きが異なる

カラダは37兆個とも、100兆個ともいわれる無数の細胞の集まり。体内の水はその細胞の内側を満たす水分と、外側を満たす水分に大別される。前者を細胞内液、後者を細胞外液と呼ぶ。健康な人では体液の3分の2は細胞内液であり、3分の1が細胞外液だ。

「日常で問題を感じやすいのは細胞外液が増えるケース。血管やリンパ管から滲み出した体液が増えた状況で、いわゆる浮腫を起こしています」(内科医の馬渕知子医師)

腎不全や糖尿病といった病気に罹ると浮腫が起こりやすいが、病気でなくても軽い浮腫が生じることもある。それは運動不足や坐りっぱなしなどで血液やリンパ液の流れが悪くなり、体液が細胞外で滞るのが一因。

ことに第二の心臓であり、筋肉ポンプで血液循環を促すふくらはぎが固まっていると起こりやすい。オフィスでは頻繁に席を立って歩き回り、加えて坐っている間も足首の屈伸でふくらはぎを積極的に動かそう。

1日の水分の出入りの内訳を知っておこう

体組成計にこまめに乗ると、1日で体重が1〜2kgは平気で変動していて驚かされる。1日で体脂肪がそんなに増減するわけがないから、変動の原因の大半は水分の増減によるもの。長期的には体内に入る水と出る水の量は釣り合うが、短期的には水分の出入りは激しく体組成を乱しやすい。

体内に入る水分には飲料水、食品中の水分、代謝水がある(代謝水は後述)。成人は通常1日で、飲料水で1.0〜1.2L、食べ物で1.0L、代謝水で0.2〜0.3Lを摂り、計2.2〜2.5Lに達する。食事量を減らすと、その分だけ体内に入る水分が減るから要注意。

体外へ出る水分には尿、便、不感蒸泄があり、こちらは計1.9〜2.5Lに達する。不感蒸泄は、汗や呼気などから無自覚で空気中へ失われる水分。睡眠中に不感蒸泄で失う水分はコップ1杯分以上に達する。睡眠中に水分不足に陥らないために、就寝前にコップ1杯の水を飲もう。

体重60kgの成人における1日の推定水分出納バランス
体重60kgの成人における1日の推定水分出納バランス。

体内の水を作っているのは筋肉などのミトコンドリア

前述のように体内では「代謝水」と呼ばれる水が作られている。その場所は、すべての細胞に数多く含まれるミトコンドリアだ。

ミトコンドリアは細胞内の発電所的な存在。糖質や脂質を原料として、運動のみならず、あらゆる活動の源となるエネルギー物質「ATP」を合成している。

ATPの1日の合成量は、本人の体重に等しいとか。そのプロセスに酸素が必要で、糖質や脂質は最終的には水と二酸化炭素に代謝される。その水が代謝水の正体である。

加齢で体内の水分量が減ってしまう背景には、代謝水の減少が関わっている。つねにエネルギーを消費する筋肉の細胞には、それだけ多くのミトコンドリアが含まれている。

「運動不足だと筋肉が減ってミトコンドリアも減り、機能が低下して代謝水の量も減るのです」

筋トレで筋肉とミトコンドリアを増やすと代謝水の産生力もアップ。いくつになってもカラダの内側から、全身がみずみずしく保てる。

水分の出入りを計算する方法

水分の出入りを計算する方法
食べ物中の水分は食べる量、代謝水と不感蒸泄は体重で変わる。自分はどれくらいなのか、一度計算してみよう。
『からだを救う水の飲み方、選び方』(馬渕知子著、講談社)

取材・文/井上健二 写真協力/AFLO 取材協力/馬渕知子(マブチメディカルクリニック院長)

(初出『Tarzan』No.760・2019年3月7日発売)

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