• 筋トレ前と後、どっちで摂るのがよりよい? 筋トレ時のタンパク質補給法のキホン
TRAINING
2019.02.05

筋トレ前と後、どっちで摂るのがよりよい? 筋トレ時のタンパク質補給法のキホン

筋トレ時のタンパク質補給法、まずは基本を押さえておこう

「タンパク質を摂るときは糖質も一緒がいい」という説や、「筋トレをしない日はタンパク質を減らしてもいい?」という疑問への回答まで。タンパク質をより効率的に摂るための基本を解説します。

筋トレ前と後、どっちで摂るのがよりよい?

6時に退社して7時から筋トレするとして、移動の電車の中で6時20分までにサラダチキンでも食うか? いやそれはさすがに無理か…。

筋肉の材料を取り入れるのは運動前がいいか、はたまた運動後か。ルーティンが出来上がっていないトレーニング初心者にとっては悩ましい問題。

立命館大学・藤田聡教授の実験によれば、アミノ酸を摂取した場合、運動後に補給した方が筋トレ後の筋タンパク合成が高まったという。考えられる理由としては、運動前に摂るとアミノ酸の一部がエネルギーとして消費されてしまうからではないかとのこと。

ただ、プロテインを使った他の実験では、運動前に摂った場合と運動後に摂った場合とで筋合成に有意な差はないという結果が出ている。プロテインはアミノ酸に比べて緩やかに吸収されるので、エネルギーとして使われにくいことがその理由と考えられる。

こうした結果からすると、前か後かはさして重要ではない。前でも後でも、とにかく運動とワンセットでタンパク質を摂ることが非常に重要なのだ。運動前ならトレーニングの40分から1時間前に食事を済ませておく。運動後なら、なるはやで吸収の早いタンパク質を補給する。たとえば液状の牛乳や飲むヨーグルトなどがおすすめだ。

タンパク質を摂るときは糖質も一緒がいい

ここまでさんざん、運動するならタンパク質が重要ですと言っておいて申し訳ないが、実はタンパク質だけでは十分な栄養補給にならない。タンパク質とともに糖質を摂る。これではじめてパーフェクトな栄養補給となる。

その理由はグリコーゲンの補充。筋トレの場合、有酸素運動に比べて脂肪が使われる比率が低いので、酷使した筋肉に蓄えられていたグリコーゲンが失われている状態。結構ハードに追い込んだときほど、グリコーゲンは枯渇気味に。

そのタイミングで糖質を送り込む。運動直後はインスリンの感受性が高いので、糖質が吸収されて血糖値が上がると、速やかにインスリンが作用して糖質を筋肉に運んでくれる。で、グリコーゲンとして補充することができるのだ。

筋肉のエネルギー源が補充されることで、カタボリックの進行は防げる。今のところ、タンパク質と糖質を一緒に摂った方がグリコーゲンが蓄積されやすいという説もあれば、糖質だけでも十分蓄えられるという研究もある。

ただ、どちらにしても運動前後のタンパク質補給はアナボリックを進めるためにも不可欠。なので、糖質もタンパク質もセットで摂るという習慣をつけておけば間違いない。乳糖が含まれている牛乳、飲むヨーグルトなら加糖タイプが○。

筋トレ時のタンパク質補給法、まずは基本を押さえておこう

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筋肉は1日1%どう生まれ変わっている?

筋肉は1日1%のペースでリモデリングされている。

内臓などに比べるとリモデリングのペースはずっと遅いが、運動器で言うとターンオーバーがゆっくりの腱や結合組織に比べ、かなりのハイペースで生まれ変わっている。腱の中心部分は子どもの頃に出来上がったものを一生使い回すくらいリモデリングが超スローペース。

とはいえ、筋肉が1日1%で生まれ変わると言われても、イメージが摑みづらいかもしれない。筋線維の束のうちのどれか1本が分解されて消えてなくなるわけ? 朝1RMで持ち上げていた負荷が、夜には上がらなくなるわけ?

いや、そうではない。筋肉のリモデリングはもっとずっとミクロレベルで行われる。

筋線維の束を構成するのは筋原線維という細胞。これをさらに詳しく見てみると、アクチンとミオシンというふたつのフィラメントが交互に重なるようにして連なっている。アクチンとミオシンの1セットが筋肉の最小単位であるサルコメアだ。筋原線維は数万個のサルコメアが整然と並んでできている。そのサルコメアを構成するタンパク質が1日1%ずつランダムにリモデリングされているということ。

通常、増えた減ったは自覚できない。機能にも変化はない。ただし、1週間寝たきりになると即座に数kgの筋肉が失われる。怖いでしょ。

筋トレに必須アミノ酸が必要と言われる理由は?

ヒトが自前で作り出すことができないアミノ酸を必須アミノ酸というが、食品中に含まれる必須アミノ酸の約半分を占めているのが、分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acids)、BCAAだ。アミノ酸名で言うと、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つがこれに当たる。

で、BCAAのなかでも筋合成で最も重要な働きをすると考えられているのがロイシン。というのは、ロイシンが筋合成を促すシグナル伝達物質、エムトールの働きを活性化することが分かっているのだ。

エムトールは普段、細胞内に存在しているタンパク質。何らかの刺激によってこの物質が活性化することで筋合成が促される。トレーニングをすることでエムトールの数自体が増えて活性化するが、栄養補給でも活性化を促せる。そのスイッチ役が主にロイシンなのだ。

最新の研究では、筋肉の中にロイシンが入ってきたことを感知するセンサーが発見されたという。ロイシンを感知したセンサーがシグナルを出すことでエムトールが活性化するらしい。

実際、高齢者の食事摂取の追跡調査では、ロイシンが摂れていない人ほど筋肉量が減っているという報告もある。

ロイシンが含まれているのは肉や魚などの動物性タンパク質食品や乳製品。トレーニング前後にはこうしたタンパク質補給を積極的に。

食事でのロイシンが増えると筋肉量の減少が防げる
食事でのロイシンが増えると筋肉量の減少が防げる/高齢者を対象にした6年間の追跡調査。食事でのロイシン摂取量が最も少なかった群(1st)から最も多かった群(4th)の4つに分けたところ筋肉量(除脂肪量)に大きな違いが。

筋合成のためのビタミンDに注目しよう

長年、地味な存在に甘んじていたビタミンDだが、近年、免疫や糖尿病などさまざまな疾患に関わるスーパービタミンとして一躍注目を浴びている。

ビタミンDは体内の受容体に結合し、そこからさまざまなシグナルを発して代謝を調節する大事な役割を担っている。そして筋肥大にも関わっていることが近年分かった。

たとえば、ビタミンD受容体をノックアウトしたマウスは筋肉が萎縮する。また、ビタミンDの血中濃度が低い高齢者ほど筋肉が少ない。そんな実験や調査報告もある。

残念ながらビタミンDを積極的に摂ることで筋肥大の効率が上がるという報告はまだないが、慢性的に不足することで筋肉が減ることは確かといえそうだ。

ビタミンDが豊富な食品は魚介類、卵、きのこ類など。そして日光を浴びることでもビタミンDの前駆体を活性化して機能させることができる。完全防備の紫外線対策は筋肉にとってはちと困りもの。

魚を食べて程よく日光浴、意外なようだがこれも筋トレ時のお作法。

タンパク質をより効率的に摂るための心がけは?

一般人はアスリートに比べてタンパク質の代謝効率が低い。同じトレーニングを同じ時間した場合、アスリートが摂取タンパク質を効率的に筋合成に利用できるのに対し、一般人はそうはいかない。ならばタンパク質の利用効率を上げる方法をマスターせねばなるまい。

まずは胃の滞留時間を短くすること。胃の主な働きは、口から入ってきた食物を胃液と混ぜてがしゃがしゃ攪拌し、消化しやすい形にして十二指腸に送ること。

固形物に比べて液体はその必要がないので、体内への吸収スピードが速い。そう考えると、胃に送る前にできるだけ消化しやすい状態にしておけば、吸収スピードはより速くなるはず。また、スピードだけでなく、タンパク質の利用効率も上がる可能性は高い。

実際、ステーキの塊を食べるのとミンチ状にして焼いたものを食べるのでは、後者の方が血中アミノ酸濃度がより高まり、筋の合成比率も上がるという。さらに、よく嚙んで食品を細かくして胃に送れば利用効率が高まる可能性も大。

ちなみに、普通の食事を摂ると血中アミノ酸の濃度が上がるスピードはあまり速くない。というのは、脂質が含まれていて消化に時間がかかるから。というわけで、筋トレ時の食事はなるべく低脂質のものを選ぶこともひとつのポイント。牛乳ならば低脂肪タイプを選ぶべし。

脂質が多いとアミノ酸の吸収速度が低下
脂質が多いとアミノ酸の吸収速度が低下/食事のみ、ロイシンと食事(混合食)、食事3時間後にロイシンを補給した場合の血中ロイシン濃度の変化。混合食では脂質が含まれているため、血中ロイシン濃度が若干低め。
吉居尚美、小林久峰、藤田 聡、味の素株式会社

筋トレをしない日はタンパク質を減らしてもいい?

筋トレに関していうと、筋肉は運動をしているそのときに作られるのではない。むしろ運動中、筋肉は壊されて分解されるカタボリックの方向に傾いている。運動後、タンパク質や糖質を補給してはじめて、筋肉は以前より強く太くなっていくのだ。これが、いわゆる超回復と呼ばれる現象。

超回復が起こるタイミングは個人差や筋肉の部位によって異なるが、現在ではトレーニング後24〜72時間といわれている。

と考えると、筋トレをしない日にいつもより極端にタンパク質を減らしていいわけがない。筋トレをしない期間こそ、筋肉をアナボリック方向にもっていく必要がある。となれば、材料となるタンパク質は死守すべき。

筋トレをする日に比べて特別増やす必要はないが、1食につき20gのタンパク質は最低限確保してほしい。そして、空腹感を感じるほど食事のタイミングを空けないこと。最初に説明した通り、空腹はカタボリック進行中のサインなのだから。


取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 監修/藤田 聡(立命館大学スポーツ健康科学部)
(初出『Tarzan』No.726・2017年9月14日発売)

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雑誌『ターザン』763号