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痩せたいなら「タンパク質を増やすべき」6つの理由

リッチタンパク質で痩せる

タンパク質=筋トレ好きが摂るべき栄養素というのは誤解。粗食で我慢してタンパク質が足りないと太りやすくなる。つまり、ダイエッターもタンパク質をリッチにするべきなのだ。リッチ・タンパク質で、お腹いっぱい食べても痩せる理由を解説。

理由① 体重1kg当たり1.2~1.6gのタンパク質で筋肉減少を防ぐ

タンパク質を増やしてリッチにするいちばんのメリットは、筋肉がラクにキープできること。筋肉は、水分を除くと、ほぼタンパク質。筋肉のタンパク質は、分解と合成を繰り返しており、タンパク質が減ると分解が合成を上回り、筋肉が削れる。

筋肉(正確には除脂肪体重)が1kg減ると、代謝が1日約28.5キロカロリー下がる。机上の計算だが、それだけで1年に1.4kgも太るのだ。

では、どの程度摂ればいいのか。筋肉量は体重に比例するので、筋肉を落とさないためのタンパク質の1日の摂取目安量は、体重1kg当たりで考えることが多い。

「安静時なら、筋肉の維持には、タンパク質は体重1kg当たり最低0.6gでOK。でも、活発に活動して筋肉を使う働き盛り世代は、上乗せして体重1kg当たり1.2~1.6gを目指しましょう」(管理栄養士の岩崎真宏さん

1日のタンパク質摂取量

1日のタンパク質摂取量(g/kg)と除脂肪体重/1863人の参加者を対象とした49本の研究を横断的に分析。体重1kg当たり1.2gまではタンパク質摂取量が増えるほど筋肉量に相関する除脂肪体重が増え、1.6g以上で頭打ちに。Morton RW et al. Br J Sports med 52, 376・384, 2018

具体的には、標準体型の男性なら1日75~100g、同じく女性なら67~90gが基準となる。

大事なのは、タンパク質は一度にまとめて摂らず、3食+間食で分割して摂ること。一度に40g以上のタンパク質を摂っても、筋肉などに代謝されにくい。1食25~30gを目標に摂るのがお薦めだ。

理由② タンパク質はDITがもっとも高い

DIT」という言葉を知っていたら、なかなかのダイエット通。

DIT(Diet Induced Thermogenesis)は、日本語で「食事誘発性熱産生」。食事をするだけで、エネルギー代謝量が増える現象だ。

日本人が1日に消費しているエネルギーのうち、DITは約10%を占める。通勤や家事といった生活活動によるエネルギー代謝は全体の約30%だから、その3分の1に匹敵するのである。

ただ、DITという言葉は知っていても、それが糖質、脂質、タンパク質の3大栄養素で異なると分かっている人は少数派かも。

3大栄養素では消化吸収のプロセスが異なるため、DITにも違いがある。いちばん低いのは脂質で約4%。次に高いのは糖質で約6%。そしてDITがもっとも高いのはタンパク質であり、その割合は30%にも達する。

つまり、摂ったタンパク質は、70%しかカロリーに変わらないのである。DITが約10%とされるのは、日本人が糖質でカロリーの60%前後、脂質で25%ほどを摂っており、タンパク質からの摂取は15%程度に留まっているからである。

タンパク質の摂取を増やすほど、食事全体のDITはアップ。エネルギー代謝が上がり、痩せやすい。

理由③ 消化管ホルモンで食欲を抑えてくれる

肉類や魚介類のように、タンパク質がリッチな食事をすると腹持ちがよく、過食が未然に防げる。その背景にあるのは、摂った栄養素に応じて小腸などから分泌される消化管ホルモン

タンパク質が分解されたアミノ酸に反応するのは、小腸下部にあるL細胞。L細胞が分泌するPYYは、食欲を抑える作用がある。そしてPYYは自律神経の一種である迷走神経を介し、脳に「タンパク質(アミノ酸)が摂れた!」というシグナルを伝えている。

肉類や魚介類のようなタンパク源には、脂質も含まれる。脂質を構成する脂肪酸に反応するのは、小腸上部にあるI細胞。脂肪酸のなかでも、とくに肉や魚に多い長鎖脂肪酸で強く刺激される。I細胞が分泌するCCKも、食欲を抑制すると同時に、「脂質が摂れた!」という情報を脳に伝達する。

アミノ酸にも、長鎖脂肪酸にも、合成できない必須アミノ酸必須脂肪酸がある。PYYやCCKは、合成できない栄養素が無事に摂れたことを脳に伝え、摂食量と栄養バランスを整えているのだ。

タンパク質も脂質も足りない食事だと、PYYもCCKも十分に分泌されないため、「まだまだ栄養が足りない!」と脳が満足できず、食べすぎる恐れがある。

理由④ 大豆タンパク質に減量効果がアリ

かつて、肉類などの動物性タンパク質と比べて、大豆のような植物性タンパク質の栄養価は低いと誤解されていた。でも現在では、植物性タンパク質の代表格である大豆は、体内で合成できない必須アミノ酸をバランスよく含み、その栄養的な価値は動物性タンパク質と同じだとわかっている。

そのうえ大豆タンパクには、動物性タンパク質にないメリットがある。それは大きく2点。

第一に、大豆タンパクの約20%を占めるβ-コングリシニンは、お腹の内臓脂肪や血中の中性脂肪を減らしたりする。β-コングリシニンを摂ると、ホルモンのように働くFGF21という物質が増加。体脂肪の分解代謝促進などの効果を発揮するのだ。

血中中性脂肪量の推移

血中中性脂肪量の推移/キャンディでβ-コングリシニンを1日5g摂ったグループと、牛乳のカゼイン入りキャンディを摂った対照群で比較。血中中性脂肪量は前者で有意に低下。*、**2群間で有意差。# 0.1%危険率で低下の傾向。*、p<0.05;** 、p<0.01 #、p<0.1Kohno et al, Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, 13(5), 247・255, 2006

2つ目は、動物性食品には含まれていない食物繊維が摂れること。とくに皮ごと食べる蒸し大豆には、水に溶ける水溶性食物繊維も、水に溶けない不溶性食物繊維も豊富。また、豆類全般は、腸内で善玉のビフィズス菌が発酵しやすいレジスタントスターチを多く含む。

豆類から食物繊維を多く摂ると、ビフィズス菌などの善玉菌が短鎖脂肪酸という代謝物を作る。この短鎖脂肪酸は、交感神経に働きかけて代謝を上げるなどして、痩せやすい環境を演出してくれるのだ。

理由⑤ 機能性ペプチドで脂質代謝が改善する

タンパク質は、小腸でアミノ酸に分解されて体内に吸収される。だが、摂ったタンパク質のすべてが、完全にアミノ酸まで分解されるわけではない。

一部は、アミノ酸がいくつか集まったペプチドという形で、体内に入ることがわかっている。アミノ酸で1個ずつ吸収するより、ペプチドでまとめて吸収した方がスピーディなのだ。

「このペプチドに多彩な機能性があり、カラダにポジティブな影響を与えることがわかっています」

機能性ペプチドには、気になる血中のコレステロールの代謝を改善するものが多い。牛乳・乳製品から摂れるラクトスタチン、大豆食品から摂れるソイスタチン、卵白由来のオボコレスチンといったペプチドである。

減量に関わるペプチドもある。大豆のβ-コングリシニンの減量作用も、β-コングリシニン由来のペプチドが一枚嚙み、脂質代謝を促していると考えられる。

また、魚に由来するイソロイシルアルギニンアルギニルイソロイシンという魚肉ペプチドは、一時的な疲労感をセーブする。

足りないタンパク質をプロテインで補うのは手軽だが、機能性ペプチドの恩恵を受けるためには、タンパク質はできるだけ食品から摂るべきなのである。

理由⑥ 過剰なタンパク質は脂肪になりにくい

カロリーになる3大栄養素のうち、糖質や脂質とタンパク質には大きな違いがある。タンパク質の重要な役割は、筋肉や骨などを作ること。ゆえに、摂ったタンパク質はまずカラダを作るために優先的に活用される。それでも余ったアミノ酸は、エネルギーになりやすい。

深掘りすると、アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基という2つのパーツからなる。このうちアミノ基は、糖質や脂質にない「窒素(N)」を含む。アミノ基からは真っ先に窒素が切り離されてアンモニアになり、アンモニアは尿素に転換されてから排泄される。

「窒素を切り離された残りは、細胞内のミトコンドリアで代謝されてエネルギーに変わります。その際、糖質や脂質よりも、率先してエネルギーに変換されるため、タンパク質の摂りすぎが直接肥満につながる可能性は低いのです」

摂りすぎを気にせず、肉でも魚でも美味しく食べよう。

取材・文/井上健二 撮影/藤本和典 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/岩崎真宏(日本栄養コンシェルジュ協会代表理事、管理栄養士)

初出『Tarzan』No.841・2022年9月8日発売

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