一目惚れで手に入れた、家族に寄り添う90年代SUV《マツダ MPV》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/伊達直人 文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.839・2022年8月10日発売

いつかお父さんになる人にぴったり。北米仕様のウォーミングなSUV。

韓国ドラマ『梨泰院クラス』の日本リメイク版、『六本木クラス』を観た人ならば、主人公・宮部新の父親・信二がハンドルを握った、見慣れぬクルマに視線が釘付けになっただろう。

ホワイト×ベージュのツートーンカラーに、いかにもベストファーザー感たっぷりなビッグボディ。「母さん、あれは一体何というクルマだね?」という質問がお茶の間で飛び交ってもいそうだが、実はあれ、90年代マツダを代表するSUV。

名をMPVという。1988年に北米向け専用車として開発された、街も山も海もどーんと来いなマルチ・パーパス・ビークル(MPV)なのだ。と大層なことは言いつつも、30年近く経った今では街中であまり見かけないのが実情。そんな不人気、いやレアな一台のハンドルを握るのが、〈SOUNDS GOOD®〉の主宰、安藤紘さんだ。

「完全に一目惚れでした。クルマとは無縁な生活をこのまま送るつもりが、クルマのウェブメディア『CAR CUTY GUIDE』のインスタでMPVをたまたま発見。思わず、可愛いなぁと溜め息が漏れるほど目が釘付けになってしまって……。しかも、よく見ると販売中と書いてある。スルーする? いやいやゲットしちゃう?という心の声を天秤にかけてみるも、見事に所有欲が勝ってしまった結果がこちらです」

運命の出逢いが今年の5月27日。都心の埠頭で待ち合わせて試乗したのが6月4日。そして、納車されたのが6月12日。1か月も経たないうちに、MPVオーナーになっていた。

「実は、今日(6月19日)はMPV乗車2回目なんです。全然慣れないかと思いきや、めっちゃ乗りやすいクルマですよね。何も遮るものがない大きなフロントガラスはノーストレスだし、独立型3列シートは後部座席にアクセスしやすい。しかも、この優しそうな見た目でV6エンジンの後輪駆動。さすが、合理性大国・アメリカ向けに作られただけありますね。グレーのモケットシートも、90年代の〈チャンピオン〉リバースウィーブみたいに親近感も湧くし、座り心地も抜群ですよ」

ワインや観葉植物好きな安藤さんだから、週末は由比ガ浜の老舗酒屋〈鈴木屋酒店〉や川崎の〈SOLSO FARM〉へドライブを計画中。

「クルマを持つと行動範囲はやっぱり広がりますね。来年は真鶴に引っ越す予定があるので、MPVがさらに活躍してくれそうです」

いずれ子供ができて、家族の思い出が刻まれるようになったときに、MPVの“いいお父さん”っぷりは、今よりずっと頼もしく感じられるはず。安藤さん、いい買い物をしたね。

MAZDA MPV

安藤さんの愛車は、1988年から99年まで生産された初期型で、初代LV系と呼ばれる。当時の価格は、約322万円。マツダの中でも高級志向なクロスオーバーSUVだった。どっしりとしたボディに、サバンナでも映えそうなアースカラーは、頼もしくもキュート。

エンブレムは、当時存在したマツダのディーラー〈アンフィニ〉で専用販売されていたことの証し。

お気に入りポイントその1。90年代の北米仕様になったテールランプのデザイン。

お気に入りポイントその2。ウォークスルー仕様になった車内。

シックなデザインのドアは、90度近くまで開くので、物の出し入れも便利。

  • 全長4,660×全幅1,825×全高1,815mm
  • エンジン=2,954cc、水冷V型6気筒SOHC18バルブ
  • トランスミッション=4速AT
  • 燃費=7.4km/ℓ(10モード/10.15モード)
Owner

(〈SOUNDS GOOD®〉主宰)
1989年、東京都生まれ。企業の個性や象徴とも呼べる事業を“音の資産”として残し継承する、ブランデッドオーディオストレージ〈SOU
NDS GOOD®〉を運営。