俳優・濱尾ノリタカ「芝居の調子が悪い時、骨だけで立つ練習をする」。

ストレッチで大事なのは、筋肉じゃなく骨格の使い方。そう語るのは、元トップスイマーで俳優の濱尾ノリタカさん。骨のフレームだけで立って動くことを理想に掲げた独自の“フレームストレッチ”は、柔軟と演技力を静かに底上げする。

取材・文/石飛カノ 撮影/間仲 宇 スタイリスト/岡部俊輔 メイク/飯嶋恵太 

初出『Tarzan』No.904・2025年6月5日発売

濱尾ノリタカ 柔らかさの秘訣
Profile

濱尾ノリタカ(はまお・のりたか)/全国大会レベルの競泳選手時代を経て、2020年から俳優活動を開始。2025年、NHK連続テレビ小説『あんぱん』にも出演。アスリートマインドを秘めた気鋭の俳優。

仮面ライダー出演で気づいた体の盲点。

オリンピックを目指すほど本気で水泳競技に取り組んでいた俳優の濱尾ノリタカさん。さすがは元トップスイマー、最重要のお尻から、地味だけどそれなりのケアが必要なふくらはぎのストレッチまで、サクサクこなす柔らかさ。

「実は僕、上半身は柔らかいんですけど下半身が結構硬いんです」

と、意外な答えが返ってきた。数年前まで正しいストレッチの方法を知らなかったという。

「身体測定で前屈運動があるじゃないですか。あれをずっと膝を曲げた状態でやっていたんです。バタフライや自由形競技をやっていて肩甲骨は人並み以上に柔らかいから、手が足の先についちゃうんですよね。ズルしてるつもりはなかったんですが、結果的に自分はカラダが柔らかいと思い込んでいたんです」

自負するほどの柔軟性がないことに気づいたのは、『仮面ライダーリバイス』の出演時、アクションの練習をしているとき。

「回し蹴りをしたら脚が上がらなくて。これは下半身をどうにかして柔らかくしないとお芝居に影響が出ると思って、正しいストレッチを学び始めました」

今ではこの通り! 膝はまっすぐで、ハムストリングスやふくらはぎまでスッキリ伸びてます! 

ストレッチは“骨”から考える。

濱尾ノリタカ 柔らかさの秘訣

ここ数年は「お尻、太腿、股関節、下半身を中心とした毎晩のストレッチが大切なルーティンになっている」という濱尾さん。

「僕の骨格はちょっと変わっていて、膝下の骨が太腿の骨より若干長いんです。だから、あぐらが上手くかけない。それで自分の骨の構造がどうなってるのかを考え始めました。ストレッチも筋肉を伸ばすだけじゃなく、骨の動きを考えて結果的に骨に付随した筋肉が勝手に伸びるという意識でやっています。名付けて“フレームストレッチ”!」

理想は最小限の筋肉を稼働させて骨組みだけで立つことだそうで、まるで武道の達人みたい。

「僕がストレッチをする目的は柔軟性だけじゃなくリラックスするため。理想はどこの筋肉にも力みがなくて、本当に骨のフレームだけで立って動くこと。余計な力みを抜くだけで発声も変わるし、多分カラダから発するオーラも変わるような気がします。だから芝居の調子が悪い時は骨だけで立つ練習をひたすら繰り返します」

日々のストレッチで役者として人間としてよりよい状態を目指す姿勢は、将来を期待されるアップカミングな俳優らしい。たかがストレッチ、されどストレッチ。そんな言葉を体現してくれている。