
教えてくれた人
浅部伸一(あさべ・しんいち)/医学博士。肝臓専門医、消化器病専門医。東京大学医学部卒業。現在は米系製薬会社で新薬開発に携わる。新刊『なぜ酔っ払うと酒がうまいのか』(葉石かおり著)医学監修。
岩井ジョニ男(いわい・じょにお)/2003年、相方の井川修司と共にお笑いコンビ〈イワイガワ〉結成。趣味はゴルフ、ヴィンテージスーツ収集など。ジョニスタグラムも更新中。@iwaigawa_jonio_iwai
目次
炒り大豆をポリポリしてから飲む。
「節分の日に年の数だけ食べるのが、やや苦手だった煎り豆。今ではこんなにおいしい……」とジョニ男さん。浅部さんによると、空腹で飲み始めることで、その後の酒も食も進みすぎる可能性が高いそうだ。
「お酒には食欲を増進させる効果があります。それに、空腹で飲むとアルコールの吸収もよくなってしまいます」(浅部さん)
「飲酒する前に牛乳を飲むといい」という説もあるが、その真偽のほどは?
「何かお腹に入れておくのは正解なのですが、牛乳は液体なので胃に留まりにくいですね。胃の中に長く留まる、つまり消化の悪いものを少し食べておくのがいい方法です。繊維質と脂肪分があって消化しにくいものとして、煎り大豆をおすすめします。お酒を飲む前に10粒くらい食べておくと、ちょっとだけ胃が膨れる感じがして、空腹感はなくなります」
飲む前に、ポリポリ習慣を。
唐揚げより焼き鳥をつまみに飲む。

「私は、夜は主食を食べずに、酒とつまみだけ。揚げ物を卒業した大人には、焼き鳥(塩)がいい」
最初に食べるつまみとして最強なのは、ずばり、枝豆だ。
「繊維と脂肪とタンパク質が全部含まれている理想のおつまみです。煎り大豆と同じ理由で、最初に食べるのにおすすめです」
他にも、オイルを少量使った魚のカルパッチョ、チーズなどが1品目にふさわしい。タンパク質は、アルコールを分解するために必要なアミノ酸を含むので、積極的に摂るように意識したい。肉類では高タンパク低脂肪な順に、鶏→羊→豚→牛となる。
「牛肉は飽和脂肪酸が多く、メタボになりやすいので要注意。鶏肉は食材として優秀ですが、から揚げではなく焼き鳥にしましょう。揚げ物はカロリーが高いわりには食べやすく、お酒にも合うのでついつい箸が進んでしまいます」
立ち飲みでサッとスマートに飲む。
立って飲もうが座って飲もうが、飲んでいる酒は同じはず。
「いや、でも、多少は太りやすさに関係してきますよ。まず、立っているのだからカロリーを少しは使いながら飲んでいることになりますね。それに、長くだらだら飲むことが飲みすぎ、食べすぎの原因であることを踏まえると、比較的短時間で切り上げる立ち飲みは、いい飲み方といえます」
なるほど、じっくり腰を据えてしまえば飲む時間は長くなり、酒量も増え、追加であれこれ食べてしまうことにもなる。立ち飲みでサクッと1杯やって帰る粋な飲み方は、腹凹にも効果的ということだ。ちなみに、同様にカロリーを使いそうなカラオケは、飲酒でむくんだ声帯を傷めることもあるので、ほどほどにしておこう。
飲酒は就寝4時間前まで。ゆっくりと飲む。

「この砂時計形のグラスで飲めば、たしかに少しずつ、ゆっくり飲むことになりますねぇ」
アルコール代謝には、酒1合で約4時間もの時間がかかる。飲んですぐ寝るのは避けたい。
「お酒を飲んで寝ると、睡眠の質が低下することも明らかになっています。レム睡眠とノンレム睡眠が交互に来るのが理想なのですが、そのサイクルが乱れてしまうのです。睡眠の乱れ、睡眠不足はメタボや肥満のリスクになるので、飲んですぐ寝るのはお腹が出やすい生活習慣といえます」
飲酒するのは寝る4時間前まで。そうすればアルコールの睡眠への影響を軽減できる。
「飲み方としては、できるだけゆっくり飲むこと。最初の1杯を30分かけて飲むのがいいという説もあります。香りを楽しむエールタイプのビールなどを、ゆっくり味わうのがいいかもしれません」
大人の嗜み・チェイサーと共に飲む。

「水を飲むのも大人の嗜み。お酒の味に影響しないように、チェイサーは水と決めています」
チェイサーを飲んだほうがいいらしい、という認識は定着している。
「脱水を防ぐ意味でも、チェイサーは必須です。日本酒の業界ではお酒と同量の水を飲むことを推奨していますが、これは焼酎など水で割って飲むお酒の場合にもいえることです。割った状態で日本酒と同程度のアルコール度数なのですから、水割りとは別にチェイサーの水を飲む習慣も大切です」
しかしチェイサーが腹回りとはどんな関係が?
「単純に、水でお腹が膨らめば、お酒の量も食べる量も減らせます。お酒とともに水をよく飲む人はお腹が出にくい、というのはそういう意味で一理あると思います」
逆のパターンを考えてみよう。水を一切飲まない人は、必然的に口にする液体が酒だけになり、時間に応じて酒量が増えるというわけだ。
しゃべりながら楽しく飲む。

「あなたとさし飲みも楽しいんですけど、私、本当は3人で飲むのが好きなんですよ」
「確かに黙って飲み続けるよりは、しゃべりながら楽しく飲むほうがいいという面もあるかもしれません。お酒を飲む目的が酔って楽しい気分になることなら、大量に飲まなくても満たされます。でも、楽しいとつい飲みすぎてしまう人もいますから、しゃべることがいいと一概には言いにくいですが……」
しゃべらずに一人で飲むのが悪いわけではないが、飲みすぎや依存症になる危険もある。
「もしアルコールそのものが目的になってしまうと、それはもう依存症といえる状態です」
会話は、腹凹もさることながら依存症防止にもなりそうだ。
週1〜2日の休肝日を確保しながら飲む。

「休肝日を作るのは難しいので、ドライブなどをして気分転換することもあります」
週に1、2日の休肝日をもうけることで飲む酒の総量を減らせれば、大いに腹凹の効果はあり。
「ただし、他の日にたくさん飲み食いしてしまっては意味がありません。たまに、“休肝日で肝臓が回復したから、また飲める”と勘違いする人がいますが、肝臓はそんなにすぐに回復しません。健康診断で肝臓の数値がよくない人は、脂肪肝を疑い、飲酒量と食べる量の両方を減らしましょう」
腹の出具合だけではなく健康にも関わる脂肪肝。近年は非アルコール性脂肪肝が、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と再定義された。
「私は“メタボ型脂肪肝”と呼んでいます。メタボ同様に脂肪肝も生活習慣病という見方で、そこそこ飲む人も注意が必要です」
筋トレ直後は飲まない。
「筋トレは、有酸素運動と組み合わせて行うことでダイエットにも効果的。酒飲みの人がお腹太りの対策として筋トレを取り入れるのはありでしょう」
しかし、筋トレ後に飲酒をすると、アルコールの影響によって筋肉が合成されにくくなる、つまり、筋トレの効果がなくなるというのだ。
「昼間、筋トレをして、その夜にお酒を飲むと、筋肉がつかないという研究結果が出ています。なので、ジムに行く日を休肝日にするといいのではないでしょうか。汗を流して運動した後のお酒はおいしいものですが、筋トレ後に飲むのはやめましょう」
愛飲家のジョニ男さん「まだ、“心の革ジャン”を脱ぎたくない自分もいます」
酒飲みを自負していますけど、昔とは飲み方がずいぶん変わりました。若い頃って、ただ酔うためだけに飲んでいたような気がします。何もかもうまくいかなくて、飲んで忘れたいことだらけだったんでしょうね。
ある時、こんな飲み方じゃ、お酒に失礼だなと気づいたんです。今では自分の体質に合うものとか、適量というのもわかるようになりました。ビールで始めて、麦焼酎のソーダ割りや日本酒、最後は緑茶ハイが定番です。家でのつまみは野菜中心。ホウレンソウのおひたし、アスパラベーコンなんか好きですね。
タモリさんの付き人をしていたので、お酒の飲み方もよく見ていましたが、夜はつまみだけで、ご飯は食べていなかったようです。私も見習って、飲んだ後の〆は食べません。
こうして振り返ってみると、すっかり落ち着いた飲み方になりましたね。でも、まだ、若い頃みたいに無頼でいたいという気持ちもあるわけですよ。芸人ですから、何歳になっても“心の革ジャン”は脱ぎませんよ。