薬膳おでんをつまみに薬酒を1杯。全国に広がる「薬酒バー」の魅力。

バリエーション豊かに仕込んだ生薬の効果で、楽しくおいしくカラダをいたわることができる「薬酒」。全国に広がる「薬酒バー」では、そんな薬酒を薬膳料理とともに頂くことができる。

取材・文/鍵和田啓介(菊岡漢方薬局)、河合萌花 撮影/大内カオリ イラストレーション/うえむらのぶこ

初出『Tarzan』No.895・2025年1月23日発売

飲む時だって漢方なのさ

三軒茶屋〈TradGras〉|100種近くの薬酒とオリジナルスパイスカレー。

三軒茶屋の〈TradGras〉は、全国の薬酒バーの中でも旗艦店となる存在。オーナーの松原吉輝さんは「若い時にふさぎ込んでしまい、何に対してもエネルギーの出ない時期が続いて。その時に薬酒と出合って、翌日には元気がみなぎる効果を実感できました」と、ルーツを振り返る。

TradGras 三軒茶屋

現在は店頭に約100種の薬酒を並べ、症状や季節に合わせた提案を行う。そして店の新たな看板メニューが、スパイスカレーだ。アーユルヴェーダを学んだスタッフが「本来の思想よりはもう少し緩く、海鮮や肉も取り入れて調理しています」と、オリジナルレシピにたどり着いた。店で提供するや否や、これが大好評。寒い季節にもぴったりの、カラダを温める逸品だ。

TradGras 三軒茶屋TradGras 三軒茶屋

冬にはカラダを温める《ショウガ》(右)がおすすめ。滋養強壮を求める人には《ニクジュヨウ》(左)の人気が高いそう。生薬を用いたビールやワインもラインナップする。匂いや味にクセの少ない薬酒もあり、店員の話を聞きつつ自分に合ったものを探す時間も楽しい。

TradGras

TradGras 三軒茶屋

三軒茶屋駅から徒歩3分。2階に続く階段を上ると、薬酒瓶の並ぶバーカウンターが。オリジナルカレーは日替わり。奥にはソファ席が広がり、料理や酒の他に、ニコチンフリーのシーシャも楽しめる。19:00〜0:00、日・月定休。TEL 03・6339・8243。インスタグラム(@tradgras_yakusyu

浅草〈BAR&CAFE 浅草薬酒バー〉|冬の自慢は薬膳おでん。薬酒とともに染み入る優しさ。

浅草の商店街の一角で、丸山琢人さんが一人切り盛りするのが〈BAR&CAFE 浅草薬酒バー〉だ。「実は私自身がお酒に強くないので、カフェ感覚でも利用していただけるよう、薬膳コーヒーやノンアルコールカクテルも取り揃えました」と打ち明ける。

BAR&CAFE 浅草薬酒バー

そうはいっても、薬酒や薬膳にはこだわりと自信を持つ。50種ほどの薬酒は全て自身で仕込み、1か月ほど素材を漬け込んだところで店頭に出す。2軒目利用が多いことから、つまみには自家製の薬膳ピクルスが好評だ。冬限定でメニューに並ぶ薬膳おでんは、血行促進や整腸作用などを持つ漢方数種類を出汁にブレンド。具材はもちろん、出汁割りで頂く酒にも人気が集まっているそうだ。

BAR&CAFE 浅草薬酒バーBAR&CAFE 浅草薬酒バー

店頭に並ぶ薬酒の効能やおすすめの飲み方は、メニューに一つひとつ記載があるため、カラダの調子や翌日の予定などに合わせてじっくり選ぶことができる。薬膳ピクルスは野菜やきのこ類を、薬膳おでんには大根やはんぺん、餅巾着などの具材を揃える。

BAR&CAFE 浅草薬酒バー

BAR&CAFE 浅草薬酒バー

浅草駅または田原町駅から徒歩4分、雷門通りに面したビルの3階に位置する。自家製薬酒や薬膳コーヒーだけでなく、世界から集めたハーブリキュールも豊富にラインナップ。営業時間、休業日等はFacebookページにて発信。