格闘家・RENA|減量中も三食はマスト。1ヶ月で最大−10kgの減量術。

体重別の競技に取り組むアスリートが必ずクリアしなければならないハードル・減量。格闘家のRENAさんも試合の1か月前から過酷な減量を行う。失敗や反省を経てブラッシュアップされた、「減量しながら体力を維持する」脂肪コントロール術とは。

取材・文/神津文人 撮影(プロフィール写真)/伊藤有紗 イラストレーション/岡田成生

初出『Tarzan』No.894・2025年1月4日発売

RENA(格闘家)

無駄なものは摂取せずジョギングの量を増やす。

RENA格闘家

RENAさんの減量スケジュール。
  • 計量1か月前:減量スタート。無駄をなくし禁酒。
  • 計量5日前:ウォーターローディング開始。
  • 計量3日前:塩抜きスタート。
  • 計量1日前:半身浴で水抜き。
  • 計量後:まずはリカバリードリンクを摂取。

格闘家の減量術は、試合前日に行われる計量で契約体重をクリアするために、余分な脂肪はいらない。最終的には体内の水分も絞り出していく。だからといって、試合で高いパフォーマンスを発揮するために、コンディションを落とすわけにはいかない。

2007年にプロデビューを果たし、これまでに総合格闘技で21試合、シュートボクシングで42試合を戦ってきたRENAさん。減量幅は多いときで10kg、少ないときで6、7kg程度だという。

「オファーのタイミングによっては、それほど時間がないときもありましたが、だいたい1か月ぐらいかけて体重を落としていきます。まず、食生活は無駄なものを排除します。お酒やお菓子は控えて、カフェラテが飲みたいなと思ってもブラックコーヒー。塵も積もれば山となるという気持ちで、不要なものをカットします。トレーニングに関しては減量期に入ったらジョギングを増やします。筋肉量は落としたくないので、すごく長い距離を走るわけではないですが、だいたい5〜7kmぐらいの距離をのんびり走っていますね」

減量期とはいえ、試合の1週間前になるまでは練習の強度は落ちない。総合格闘技の試合であれば、打撃の練習があり、組み技の練習があり、ウェイトトレーニングもする。これに加えて、ジョギングの量を増やすということだ。

減量をスタートしても一日三食の食事はマスト。

質の高い練習をこなすためには、エネルギー不足というわけにはいかない。必要のないカロリー摂取は抑えるが、食事の回数を減らすようなことはしない。

「全体的な量は減りますし、炭水化物や脂質よりもタンパク質重視の内容には変わりますが、練習をこなせないと意味がないので。動きが悪いな、エネルギーが足りてないなと感じたら、炭水化物を少し増やしたり、練習前にチョコやグミ、みたらし団子を少し食べたりしています」

減量には停滞期がつきもの。女性アスリートには、月経の悩みもある。それゆえ、ストレスマネージメントも重要になる。

「女性特有の周期については、もう気にしないのが一番という結論になりました(笑)。体重は増えるし、カラダはむくむし、ナーバスにもなるんですけど、こればっかりはどうしようもないと受け入れています。イライラして体重計を蹴っ飛ばしたくなりますけどね(笑)。減量や練習がうまくいかなくてストレスを感じたら、犬に癒やしてもらったり、岩盤浴のあるお風呂に行ったりして気分転換するようにしています。ときには、好きなものを食べたりして。私は辛いものが好きなので、減量的には良くないんですけど、カプサイシンで代謝アップや!明日からもっと脂肪を燃やすぞって自分に言い聞かせながら麻婆豆腐を食べることもありますね(笑)」

食べたら燃やせばいい。ストレスを溜めすぎないことも減量をスムーズにするコツなのだろう。

ストレスのない食事

練習の質の確保のために、ある程度の糖質は必須。カラダが動かないと感じたら、チョコやグミ、みたらし団子でエネルギーを補充する。ストレスの発散にもなり一石二鳥。

自己流での限界を感じ、プロの手を借りることに。

RENAさんは一度減量に失敗している。2018年末、計量に向けての最終調整中に倒れて病院へ。過度の貧血および脱水症状と診断され、試合が中止になった。

「それまではずっと自己流でやっていたんですけど、減量に失敗してからはプロのトレーナーにフィジカルと減量の部分を見てもらうようになりました。ウォーターローディングや塩抜きのタイミング、塩抜きのときの食事のメニュー、計量後に飲むリカバリードリンクもトレーナーに任せています」

これだけキャリアを重ねても、体質の変化もあり、毎回体重の落ち方が違い、減量の仕上げとなる水抜きの量も変わるという。

「水抜きは、サウナスーツを着てのランニングとミット打ちから始めて、その後は半身浴。汗が出始めてから15〜20分浸かり続けて、出たら発汗クリームを塗ってタオルとアルミにくるまる。それを何セットも繰り返します。理想は水抜きを3kgちょっとに収めたいんですけど、2022年のアナスタシア(スヴェッキスカ)選手との試合のときは計量前日の段階であと契約体重まで4.7kgも残っていて。そのときのメモには“二度と5kgの水抜きなんてしない”って書いてあります(笑)」

試合を無事に終えるたび、食のありがたさを感じるというRENAさん。その領域には届かないまでも、少しストイックな減量を体験してみるべきかもしれない。

塩分抜き食事

塩分抜き開始以降の食事はスクランブルエッグ(無塩バターで焼く)、鶏の胸肉(皮なし、レモンで味付け)、アボカドのみ。それぞれの摂取量はトレーナーさんの企業秘密。

Profile

RENA(レーナ) /シュートボクサー・総合格闘家。MMA戦績15勝6敗、シュートボクシング戦績36勝5敗1分け。初代RISEクイーン。SB世界女子フライ級王者。Girls S-cup世界トーナメント2010、2012、2014王者。ツヨカワクイーンのニックネームを持つ女子総合格闘技のパイオニア的存在。

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