イナタい雰囲気を醸し出すザ・アメ車《クライスラー・ジープ グランドワゴニア》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/五十嵐 一晴 文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.853・2023年3月23日発売

壊れやすいからこそ愛情が増す!? 何度裏切られてもワゴニア一筋。

こちら横浜は野毛。昭和ノスタルジーな雰囲気がいまだに色濃く残るこの歓楽街に、似つかわしくないどデカいアメ車が一台、タコス店〈アフロ タコス〉の前に停まる。「ハモちゃん、行くよ」とキュートな犬と一緒に降りてきた彼こそが、このジープワゴニアの主人、斎藤成穂さんだ。

「若いときによく足を運んでいたNYの〈ロスタコスNo.1〉でタコスの洗礼を受けて。それから西海岸や本場のメキシコに行くようになったんですが、絶品のタコスと同じくらい街で見掛けたのが、このジープワゴニアだったんです。バカでかいサイズやメッキグリル、ウッドパネルのイナタい雰囲気が、ザ・アメ車って感じで、ずっと“いいな〜”という妙な憧れがありました」

その古めかしい顔つきに思わず判断が狂ってしまうが、60年代でも、70年代でもなく実は90年式。

「90年代製だからと侮っていましたが、決定事項なのか? と思えるほど不具合が生じる。ワゴニアが壊れやすいという噂は本当だったんだって、身をもって知りました(笑)」

それゆえ、キャブエンジンだったのを電子制御のインジェクションエンジンに載せ替えたり、電気系統を瞬時に遮断できる「キルスイッチ」を装着したり、と対策を講じてきた。

「でも、なかなかどうして壊れてしまう。この前は結局1年くらい入院してしまって。もう買い替えようかな? と本気で考えました。が、結局は修理されて戻ってきたワゴニアのハンドルを握ると、その思いは噓のように消え去ってしまうんです。“おっ、やっぱいいクルマだわ”なんて思いながら」

それは斎藤さんがワゴニアに心底惚れている証し。「どこが好きかって?」との問いにも、「うまく答えられない」と言う彼とワゴニアは、まるで長年連れ添った夫婦のよう。

「基本エンジンを吹かすのは週末限定。逗子や葉山に愛犬のハモちゃんと家族を乗せて、のんびりと走っているときこそ、本当にワゴニアにしてよかったなと思える瞬間ですね」

その小さな幸せを嚙み締めるため、斎藤さんはこれからもちょこちょこワゴニアをいたわっていくのだ。

CHRYSLER JEEP GRAND WAGONEER

1963年に生まれたワゴニアは、野性味溢れるジープの乗り味と、高級車の快適性をドッキングした高級SUVの先駆け。市場価格は、約450万円。

ベージュレザーのシートに、ウッドパネルを貼り付けたダッシュボード。高級車の快適性を有した車内は、アメリカの大地のように広々としている。シートクッションもふわふわでまったりできる乗り心地。

アメ車にお決まりのエアフレッシュナーは、広島のタコス店〈COMER MUCHO〉のオリジナルだそう。西海岸のラティーノがいかにも好みそうなトロピカルな香り。

  • 全長4,800×全幅1,900×全高1,800㎜
  • エンジン=5,900cc、V8キャブレーターエンジン
Owner

斎藤成穂(〈AFRO TACOS〉オーナー)
1981年、神奈川県生まれ。その昔、金沢文庫にあったダイニングバー〈ザ・ロード アンド ザ スカイ〉で飲食のいろはを学ぶ。〈アフロ タコス〉の他に日本酒バーも経営。

Information

〈AFRO TACOS〉
斎藤さんが、2017年にオープンしたモダンメキシコ料理店。名物のタコスは、牛、豚、鶏、エビやサボテンをふんだんに使ったボリューミーな一皿。スーベニアグッズも充実している。
住所:横浜市中区野毛町2-72-2|地図
TEL:045-341-4321
営:17:00〜23:30、土・日・祝14:00〜23:30