5ドアディーゼル仕様の超実用的な一台《いすゞ ミューウィザード》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/濱田 晋 文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.863・2023年8月24日発売

縦横無尽に檜原村を走る、 90年代いすゞによる、 SUVの隠れた名作。

木陰にクルマを停めて一休み。スマホで予約状況の確認に勤しむのは、東京・檜原村のコワーキングスペース〈VILLAGE HINOHARA〉のオーナー、清田直博さんだ。その傍らに寄り添う車は何かというと、いすゞのネオクラシックカー《ミューウィザード》。

「もともと、いすゞ党で。1台前には映画『ミッション・トゥ・マーズ』に登場したSUV、ビークロスに乗っていたんです。でも、SUVなのに2ドアタイプの斬新なデザインは、今後子供が大きくなることを考えた時にものすごく手狭に感じて。住まいに仕事場もある山の中で安心な4WDで、サイズも大きく、燃費も良くて、かつメンテナンスも近場で気軽にできる車に替えよう!ってなったときに、オークションでこのミューウィザードに出合ってしまい、羽村の中古車店〈いすゞスポーツ〉で整備してもらったんです」

90年代、いすゞは“SUVのスペシャリスト”として、前述のビークロスをはじめ、ビッグホーンやミュー(ミューウィザードのベース。2ドアのMT車)などのSUVを生み出したが、5ドアのディーゼル仕様のミューウィザードは超実用的な一台として誕生した隠れた名品。

「どこまでもどこまでも走れ〜いすゞのトラック〜♪と歌われるくらいタフなトラックをたくさん作るメーカーだけに丈夫ですし、車幅は意外にもナローシルエットで細い山道もスイスイ。荷室や後部座席も広いから、冬場に欠かせない薪の運搬に活躍してくれます。ビークロスと段違いで実用的ですね」

本来ならば、汚れが目立つホワイトボディだが、もともとがピックアップをモチーフにしたワイルドな見た目だけにガシガシ使うほど味が出てくるのも魅力とか。

90年代のディーゼル車だけに都心の走行(ディーゼル規制対象内のため)には厳しい部分もあるが、それでもハンドルを握りたくなる、アメリカ〜ンなネオクラシックSUVだ。

 

ISUZU MU WIZARD

清田さんの愛車は、1995年〜98年まで生産された初代。当時の価格は、200万円台だったが、現在もそんなに値崩れはせず、約150万円台。

実用性に特化したことが手に取るようにわかるシンプル・イズ・ベストな車内。余計な色を使わず、グレーベースなのも潔い。ダッシュボードの奥には、その辺で拾った松ぼっくりを置いている。

清田さんは、〈VILLAGE HINOHARA〉の運営のほかに、観光や地域活性化の事業を行う。助手席に掛けられた地元消防団の作業着は、村の一員であることの証しでもある。

ステアリング中央に貼られた謎の折り紙。一体、なんです?と聞けば、実は娘さんが作ってくれた交通安全祈願のお守りとか。

  • 全長4,585×全幅1,765×全高1,750㎜
  • エンジン=3,059cc、直列4気筒OHCターボ
  • 定員=5名
Owner

清田直博(〈VILLAGE HINOHARA〉マネージャー)
1977年、福岡県生まれ。ライターやエディターとして活動。檜原村へ移住後、村役場に籍を置き、現在は〈VILLAGE HINOHARA〉を運営する。