造形作家・木暮春佳の”出会うべくして出会った相棒”《スバル ディアス ワゴン》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/伊達直人 取材・文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.813・2021年6月24日発売

小さな造形作家の、小さな、でも頼れるスバル。

「実はスバリストになりまして」。若き造形作家の木暮春佳さんがハンドルを握るのは、レガシィやフォレスターのことではない。彼女が選んだのは、スバルのワンボックス型軽自動車。

ボディもホイールも真っ黒に塗りつぶした漆黒のディアスだ。スペイン語で“毎日”を意味する通り、アトリエに籠もっている時以外は、プロップや家具の材料の買い出しに納品にと、そのアクセルをほぼ毎日のようにふかす。

「去年、アトリエを板橋区の方に引っ越して、クルマを利用する回数が増えちゃって……。最初のうちはタイムズレンタカーなどを利用していたんですが、ある時レンタカーを借りる経費と、車を購入する代金を天秤に掛けたら、マイカーを所有する方が断然お得なことに気づきまして。背に腹は代えられぬと意を決し、昨年末に購入したんです。ディアスという選択肢は、よく友達に意外な顔をされますが、中古車屋さんで一番いいものを選んだだけ。よく言えば、”出会うべくして出会った相棒”といったところでしょうか」

ガラスのファサードやモザイクタイルに昭和のムードが漂う雑居ビルが、アトリエ。ディアスは、この場所が定位置。

ある意味、たまたまディアスの運転席に座ることになったわけだが、それでも日々過ごしていると愛着が湧いてくる。スバル軽の半世紀にわたる歴史を支えたサンバーから派生したモデルだけに、納品に買い出しにとめっぽう役立つとか。

「小さいカラダのわりに私の制作活動における生命線、3×6板もすっぽり収まりますし。〈Endplaydevice〉名義で一脚一脚、手作りするチェアも、横倒しにすれば2脚も載っけることができる。専門性の高い運ぶ道具として、やっぱり優秀ですね。いい意味で素っ気ないインテリアは、意味不明なボタンがちりばめられた昨今のクルマとはまるで別物で単純明快。直感で運転できるのもいいんです。コンソールからニョキッと生えたシフトレバーや、窓ガラスを開けるためのクルクルレバーも、よく見ると80年代レトロな感じがまたかわいくて。今ではすっかりお気に入りに」

造形作家・木暮春佳

造形作家・木暮春佳

造形作家・木暮春佳

そんな良き相棒とのランデブーは、心を整えるいい息抜きにもなっている。「アトリエを出て運転する時間が待ち遠しくて」と楽しげに話す彼女の笑顔もとても素敵だった。

SUBARU DIAS WAGON

2008年発売の「リミテッド」と呼ばれる、後部座席の居住性を高めた5ナンバー乗用タイプ。マニュアル車が主流であるが、木暮さんの一台は3AT仕様。当時の新車価格は約130万円。10年以上経った現在は、格安のもので15万円から手に入る。

「どこか強い意志を持ってそう」と彼女が表現するブラックボディ。ルーフトップにはキャリアも付いて、さらにキリリと引き締まっている。後ろ姿もクール。

レバーやボタンを含め、インテリアはきわめてシンプル。運転席や助手席の上に設置された棚もこの上なく便利で、ティッシュ箱やコロコロ(粘着テープの付いたクリーナー)などを収納している、とは木暮さん。ちなみに後部座席は、いつでも資材や作品を積み込めるように、常に床に収納した状態にしてある。

  • 全長3,395×全幅1,475×全高1,900㎜
  • エンジン=658cc、水冷直列4気筒SOHC
  • 乗車定員=4名
  • 燃費=15.8㎞/ℓ(10モード/10・15モード)。
Owner

木暮春佳(造形作家)
群馬県生まれ。多摩美術大学にて家具製作のいろはを学ぶ。雑誌やMVなどの美術制作や事務所の什器制作を行う