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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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健康寿命に大いに関わる心臓の機能。正しく理解すれば、いたわる方法も自ずとわかってくるはず。パワフルな能力から意外な役割まで、カラダの中で休みなく働く“命のエンジン”について学ぼう。
大島一太(おおしま・かずたか)/心臓専門医・心臓病上級臨床医。大島医院院長、東京医科大学八王子医療センター循環器内科兼任講師。日本心臓病学会特別正会員、日本循環器学会心不全療養指導士実務部委員など併任。地域医療と高度専門医療を兼務する心臓病のスペシャリスト。
大きさは、だいたいその人の拳サイズ。そんな小ぶりなのに、心臓は血液を体内の隅々まで巡らせるという大事な役割を一手に引き受ける。
画像右/心臓は胸のほぼ中央で、左右の肺の間にある「縦隔」に収まる。心筋という特殊な筋肉の塊であり、小さなアスリートのような存在。大動脈の根元から巻きつくように延びる冠動脈が心筋に酸素と栄養素を提供する。
画像左/全身を巡った血液は右心房に入り右心室から肺へ。肺から戻った血液は左心房に入り、左心室から大動脈で送り出される。血液が混じらないように左右の心房・心室は仕切られる。各部屋の境には逆流防止の弁がある。
心臓が1回の拍動で送り出す血液量は、通常エスプレッソカップ1杯分(約70mL)。少ない?いやいや、心拍数が毎分70拍なら、1分で約5Lの血液を拍出する計算。1日で家庭用バスタブ36杯分(7200L)の血液を循環させている、まさに小さな巨人なのである。
「心拍数が毎分70拍だと心臓は1日10万回拍動します」(大島一太医師)
哺乳類が一生涯で打つ心拍数は20〜25億回とされるが、人生100年とするならヒトの心拍数の総数は36億回を超える。ひょっとしたら本来の耐用年数を超えて使い続けるかもしれない心臓こそ、どこよりも真っ先にいたわるべきなのだ。
心臓は特殊な例を除くと、がんにならない珍しい臓器だ。理由は、心臓を作る心筋の細胞は、分裂や増殖をほとんど行わないからだ。
「がんは細胞の異常な増殖によって起こるため、細胞分裂が盛んに行われる組織で生じやすいという特徴があります。心筋細胞は高度に分化した細胞であり、通常は細胞分裂を行いません。心臓はこうした心筋細胞から構成されているため、細胞の異常な増殖によるがんの発生リスクが非常に低いのです」
心筋細胞の他にも脳を作る神経細胞もほぼ分裂や増殖を行わないが、脳には「脳腫瘍」というがんが生じる場合がある。心臓と脳の違いはどこにあるのか?
「心臓には大量の血液が流れ込み、常時酸素と栄養が供給され、老廃物も即排除される。そうした環境が、がんの成長を抑えます。また、がん発生の引き金となる酸化を抑える仕組みも発達しているため、がんに罹りにくいと考えられます」
最近、筋肉から分泌されるマイオカインというホルモンの存在に注目が集まる。そして筋肉の一種である心筋もまたホルモンを出す。その代表選手が「BNP」というホルモン。
BNPを分泌するのは、心臓から血液を送る心室の心筋。心室が強く引き伸ばされるようなストレス(伸展ストレス)が加わると、心筋細胞内で「BNPを作れ!」という指令が書かれた遺伝子が読み出されて、速やかに分泌が始まる。
「BNPは腎臓に作用してナトリウムの排泄を促したり、血管を作る平滑筋に働きかけて血管を拡張させたりする。あわせて血圧を上げるホルモンや交感神経の活動を抑えて心不全にならないようにセーブします」
要するに、BNPは過剰な水分の排出や、血圧を下げたりすることにより、心臓に加わる負担を減らしている。賢き心臓が、我が身を守るために出しているホルモンなのだ。
心臓には右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋があり、心房で受け取った血液を隣の心室へ滞りなく流す。この連携をスムーズに進めるには、心房と心室が順序よく収縮することが求められる。
「そのため心臓は発電機能を持ち、自律的に電気信号を発生させる。その活動を捉えたのが心電図です」
電気信号を出すペースメーカーに当たるのが、右心房と上大静脈の境目にある洞結節と呼ばれる場所。
洞結節が発する電気信号の刺激により、まずは心房の心筋細胞が収縮する。続いてその刺激は、心房と心室の間にある房室結節に伝わり、そこからさらにヒス束、プルキンエ線維を介して心室へ伝わる。
こうして心房→心室と時間差で収縮することで、血液は淀みなく流れ続けるというワケ。ちなみに心臓のドクンという音(心音)は、心筋が発するものではない。心房と心室の間にある弁と、心室から動脈への出口の弁がそれぞれ閉じる音だ。
取材・文/井上健二 イラストレーション/川本まる 取材協力・監修/大島一太(大島医院院長、東京医科大学八王子医療センター循環器内科兼任講師)
初出『Tarzan』No.886・2024年8月22日発売