“開脚ペターッ”も夢じゃない。憧れの禁断のストレッチ

一時期巷を賑わせた“開脚ペターッ”。ノリでやるのは危険と分かっていても一度は憧れる、柔軟自慢の禁断ポーズ。実は然るべき前準備をきっちりこなせば安全かつ華麗に嗜めるようになるのだ。今回は3つの禁断ポーズと、それを実現するために必要な柔軟性と筋力を手に入れるエクササイズを紹介。新境地へいざ。

取材・文/門上奈央 撮影/大内カオリ スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 撮影協力/UTUWA

初出『Tarzan』No.882・2024年6月20日発売

禁断のストレッチ
教えてくれた人:tsukiさん

ツキ/ヨガライフスタイリスト。1993年生まれ。RYT500やNESTA-PFTなどの資格を保持し、企業や大学、イベントなどで指導。アクティブウェアなどを手がけるライフスタイルブランド〈iM〉をプロデュース。

準備運動

禁じられた各ストレッチを楽しむ前に軸となる脊柱〜骨盤を動かしておこう

禁断のストレッチ

呼吸と連動させて背骨〜骨盤を動かす“キャットカウ”をあらかじめ行い、カラダのクセを整える。四つん這いになり、口から息を吐きながら背中全体を丸め、鼻から息を吸いながら胸を開く。3呼吸分反復。肩が力まないよう注意。

禁断の「180度開脚」を嗜む

禁断のストレッチ

「開脚は脚を自分の可動域以上に開くので、特に股関節に負担がかかりやすいポーズと言えます。安全に行う秘訣は、実践する間は常に骨盤を立てること。開脚時も前屈中も、腰を丸めず骨盤を正しい位置で保つのが重要です」

開脚に挑む前に、股関節まわりの筋肉を十分にほぐして骨盤の状態を整え、骨盤を正しい位置に保つ筋力を鍛える。ここまでは毎日やってもOK。さらに、前屈を成功させるには骨盤を立てた状態で滑らせる練習も不可欠だ。

ストレッチ

1. 骨盤を立てて座れるよう股関節まわりの筋肉をほぐす

禁断のストレッチ

股関節周辺を満遍なく緩める。床に膝を立てて座り、脚を広めに開く。両手を後ろにつく。股関節を左側に捻るようにして右膝を内側に倒す。逆側も同様に。左右交互に行い10往復×2〜3セット。お尻が浮きやすい人は脚の幅を広げて調整。また、腰が丸まらないよう注意。

2. 無理なく脚を開くため内腿の内転筋を緩める

禁断のストレッチ

スムーズな開脚のために内腿の内転筋を緩める。床に座り右膝を曲げて右足を引きつけ、左脚はなるべく大きく横に開く。骨盤を立てた状態を保てる範囲で上体を前に倒して3呼吸分キープ。いったん元の姿勢に戻り、伸ばした脚の方向に上体を倒して3呼吸分キープ。逆側も同様に。

3. 開脚時の“ツッパリ”対策にお尻〜腿裏の筋肉を伸ばす

禁断のストレッチ

お尻〜腿裏の筋肉を伸ばす。四つん這いになり、右足を右手の内側にセット。左足の甲を床につける。右足の踵の位置を変えず、お尻を後ろに引いていき3呼吸分キープ。余力があれば上体を右脚の方に倒して3呼吸分キープ。逆側も同様に。前膝を曲げたまま行ってもOK。

筋トレ

1. 骨盤をまっすぐ保てるようインナーの腸腰筋を刺激

禁断のストレッチ

骨盤の位置を保つのに必要な腸腰筋を鍛える。仰向けで両脚を伸ばし、両腕は体側に。左脚を床から浮かせてから、腹筋に力を入れて床に対して垂直まで左脚を上げ、床すれすれまで下ろす。逆側も同様に。左右各10回×2〜3セット。動作中、腰全体が浮かないよう注意。

2. 骨盤を支えるのに必要なお尻の中臀筋を鍛える

禁断のストレッチ

股関節を開く動きに関わる中臀筋を鍛える。横向きに寝て両膝を直角に曲げ、踵・お尻・頭が同一線上に来るように。上側の手をお尻の脇にある中臀筋に添えて、上半身は脱力。両踵が離れないよう注意しながら右膝を開閉。逆側も同様に。左右各10回×2〜3セット。

練習

1. 開脚にチャレンジする前に骨盤を立てる感覚を再確認

禁断のストレッチ

骨盤を立てて座る感覚をおさらい。床に、膝を閉じたまま立てて座る。腿裏を手で持ち、腕で引っ張るようにして骨盤を立てていく。この姿勢に慣れてきたら、両脚を前に伸ばした長座で、骨盤を立てて座る練習をしよう。これも難なくできるようになれば、開脚成功は目前!?

2. お尻の下にタオルを敷いて開脚したままじわじわ前屈

禁断のストレッチ

開脚→前屈を練習。お尻の下に折り畳んだタオルを敷き、骨盤をまっすぐ保てる範囲で脚を開く(最初は90度程度の開脚でOK)。カラダの前に両手をつき、骨盤の位置を保ちつつ前に倒れていく。骨盤を立てられないうちはタオルを厚めに折り、お尻の後ろ寄りに敷こう。

禁断の「セルフ肩甲骨はがし」を嗜む

禁断のストレッチ

トップアスリートは肩甲骨の可動域の広さも超人級。それを体現する一人が大谷翔平選手。手を腰に当て肩甲骨をガバッと開き肘を前に出す、いわゆる“肩甲骨はがし”もさらっとこなす。

「肩甲骨をダイナミックに使うアスリートなどはあえて肩を内に巻く動作も難なくできますが、一般の人が思いつきでやると肩関節を痛めかねません」

安全に行うには事前に肩甲骨まわりの入念なストレッチがマスト。一連の流れを日課にすれば肩こり対策にも。

ストレッチ

1. 肩甲骨開きの形づくりとしてまずは腕を捻ることから

禁断のストレッチ

腕の捻りから。両腕を横に伸ばし、腕をそれぞれ捻って右手のひらを上&左手のひらを下に向けたら、逆方向に捻り、右手のひらを下&左手のひらを上に向ける。左右交互に20回×2〜3セット。

2. 肩甲骨まわりの動きを出すため肘を大きく動かして肩を回す

禁断のストレッチ

肩まわりを満遍なく緩める。両手を肩に置き、大きな円を描くように両肘を回す。カラダの前に肘が来る時は両肘をつけ、肘を後ろに引いた際には左右の肩甲骨を引き寄せる。10回×2〜3セット。

3. 肩を外と内の両方向に伸ばして肩関節の可動域を広げる

禁断のストレッチ

肩の内側・外側をしっかり伸ばす。四つん這いになり両手を広めについたら、顔を右側に向け、左手を左側に滑らせて3呼吸分キープ。左手を右腕の下に通して伸ばし、3呼吸分キープ。逆側も同様に。

練習

1. 膝の閉じる力を利用して肩甲骨を徐々にはがす

禁断のストレッチ

肩を内に巻いた状態を脚を使って再現。脚を広めに開いて床に座り、膝を立てる。脇腹に手を置いた状態で肘を膝より内側にセットしたら、両膝の閉じる力を活用して肩甲骨を開き、肘を内側に入れる。

2. 片肘ずつ手の力で内側に引いて重点的にはがす

禁断のストレッチ

肩甲骨はがし中の肩を内に巻く感覚を、手を使って再現。左手を腰に置き、左肘を右手で摑み、ぐーっと内側に引き込んでいく。限界まで内側に引き切ったら、左肘から右手をリリース。逆側も同様に。

禁断の「ブリッジ」を嗜む

禁断のストレッチ

幼少時は軽々できたブリッジ。久々にやるとカラダが持ち上がらなかったり腰を痛めたりと、落差がヤバい!

「腰や腕など、力点を一点に集中させてしまうとブリッジは高負荷に。足で床を踏み込み、お尻や腿裏の力を使ってカラダを持ち上げるのが理想です」

きれいな弧を描くために背骨まわりや上半身の筋肉を伸ばし、裏側の筋肉を鍛える。朝一番に行うと、一日中、胸が開いた理想的な姿勢を保ちやすくなるなど、嬉しいおまけ付き。

ストレッチ

1. カラダを支える土台となる手首まわりをストレッチ

禁断のストレッチ

ブリッジ中に大きく捻る手首を緩める。膝をついて座り、カラダの前で、指先を自分の方に向けるように両手をついて3呼吸分キープ。その後、手の角度を少しずつ変えて、手首全体を同様に伸ばすと◎。

2. 背中〜体側に位置する大きな広背筋を伸ばす

禁断のストレッチ

背中の広背筋を全体的にストレッチ。四つん這いになり、左肘を深く曲げながら、右手をなるべく前方遠くに伸ばしていく。体側のストレッチを十分に感じられる位置で3呼吸分キープ。逆側も同様に。

3. きれいなアーチを描けるように胸を大きく開く

禁断のストレッチ

胸筋も伸ばす。四つん這いになり両手を肩幅より広めについたら、お尻を高く引き上げて全身で三角形をつくり、胸の開きを感じつつ3呼吸分キープ。膝を伸ばすのがキツい人は、曲げたままでもOK。

筋トレ

カラダを持ち上げる負担を減らすためお尻〜腿裏の筋肉を使う感覚を養う

禁断のストレッチ

仰向けで膝を立て、手のひらを床につけたままお尻を持ち上げて3呼吸分キープ。元の姿勢に戻り、反復。次に両膝を立てて座り、両手を肩の下につき、指先を自分の方に向けてから、お尻を持ち上げて3呼吸分キープ。ともに10回×2〜3セット。

練習

壁に手を沿わせて実践。床を押す感覚を叩き込む

禁断のストレッチ

壁を使って練習すると、床を押してカラダを持ち上げる感覚を摑みやすい。仰向けになり両手の小指側を壁に沿わせセット。いったん頭頂部を床につけ、そこから手で床を押しつつ足でも踏み込み、カラダを持ち上げていく。