ウチサカさんのトレイル案内。トレイルを守る活動
トレイルランニングのシーンを黎明期から取材してきたレジェンドエディター・内坂庸夫さんが、さまざまなトレイルをランナーの視点で紹介。コースのGPSデータも公開中!
取材・文/内坂庸夫 撮影/石原敦志
ウチサカさんってこんな人
自分の遊び場を守るために
トレイルラニングが日本にやって来てもう20年以上になります。トレイルを走る若者たちの多くは、結婚して家庭を持ちました。彼らの次世代も走り出しています。 ランナーの数が増え、層も厚くなったことで、トレイルラニングの楽しみも、レースやツアー、講習会、コミュニティなど幅広くなりました。
そしてランナーのなかには山と、トレイルそのものに関心を持つ人たちが増えています。だって、自分の遊び場ですから。ケガなく楽しく遊びたいですから。 2023年冬、長野県木島平村で『トレイル保全ワークショップ』が2日にわたって開催されました。
『奥信濃100』大会の主催者・山田琢也さんが地元の山への取り組みを、そして山梨・北杜市の〈北杜山守隊(ほくとやまもりたい)〉代表・花谷泰広さんが「近自然工法」によるトレイル保全の説明と実践を行ってくれました。
人気の山には多くの登山者、トレイルランナーが集まります。多くの人がトレイルを利用することで荒廃が進み、台風や気候変動(たとえば大雨)がさらにダメージを与えます。どうすればいいのでしょう?
登山道整備は楽しい
答えは明快ですが、簡単ではありません。登山道/トレイルを修復整備保全すればいいのです。では、誰が?どうやって?そして活動資金は?と「はてな」だらけになります。
なにを行うにせよ必要なのは人と資金でしょう。実は登山道整備は楽しいのです、大勢で行う山の日曜大工、DIY、山遊び。そして本来の自然環境を取り戻せ、自分たちの役に立ちます。
一度でも参加すればやみつきになります。〈北杜山守隊〉では登山道整備の有料ワークショップを提供し、山岳保全について学び、保全作業を体験する場を作っています。
また、地域の山岳会やボランティアさんに依存していた登山道整備を、有料イベント化など事業化することで持続性を高めることができます。
そして「近自然工法」。これは現場の生態系(主として植生)を復元させるために行うもの。崩れた路面を避けて登山者やランナーはトレイルを外れます、外れたところの植生は踏圧のせいで消滅し(裸地化し)、新たな水の流れができて、さらに広範囲に登山道が崩壊していきます。
植生を復元させるには? 利用者がトレイルを外さないようにするには? 「近自然工法」は水の流れや人間心理まで考えて作業します。生態系を復元させることで、人間の利用環境も守られるという発想、あなたにも体験してほしいものです。
登山道/トレイルを修復整備保全の流れ
1.崩壊している現場周辺をよーく観察します。落ち葉や土砂から水の流れがわかります。ここでは水の流れで掘れてしまい、段差が大きくなったところにいくつか丸太を離して入れ、その段差をゆるくします。
2.使用する丸太を切り出します。木を切ることはもちろん、整備作業にはその山の所有者、管理者の許可が必要です。好き勝手には行えません。
3.段差をゆるやかにするために切り出した丸太をトレイルにはめ込みます、左右の法面を削ってぴったり動かないようにします。斜めに置くこともあります。
4.丸太の間に細かい枝や木の葉、土などを入れて路面を整えます。
5.いちおう完成です。段差がなくなりました。時が経てば、水が土砂を運んで、さらに目立たなくなるでしょう。
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雑誌『Tarzan』の連載「ターザン トレイルズ」はFacebookとも連動して、トレイルの紹介を行なっています。みなさんからのコメント、メッセージ待ってまーす。