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猫背=背中が丸まっている状態。それは正しくもあり、必ずしも正確ではない。ステレオタイプなイメージの猫背だけでない猫背パターンとそのメカニズムをまずはお勉強。
たかひら・なおのぶ/北里大学大学院医療系研究科整形外科学教授、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科教授。医学博士。専門は股関節外科学。運動療法や姿勢について造詣が深く、東京2020では世界各国の選手対応ドクターとして参加した。
「猫背」という医学用語は存在しない。ゆえに人は自分の感覚の中で猫背か否かを判断していると言ってもいい。とはいえ、モヤッとしたままでは改善に繫がらないので、北里大学大学院整形外科教授・高平尚伸先生に質問をぶつけてみた。先生、猫背って何ですか?
正しい姿勢では、耳、肩、大腿骨の突起の大転子、膝、くるぶしがまっすぐ一直線上に存在する。頭が骨盤の真上に来ることでカラダの前後の筋肉に余計な負荷がかからずバランス良好。
「背骨=脊柱は頚椎、胸椎、腰椎から成っていて、頚椎は前、胸椎は後ろ、腰椎は前に反っています。その形が崩れ、猫背という外観に反映されます。頚椎のカーブが失われて頭が前に出たり、胸椎の後弯のカーブが深すぎたり、骨盤が後ろに倒れて腰が曲がったり、それらは全て猫背と考えられます」
猫背というと、下の写真の左側のケース、骨盤が後ろに倒れて膝がやや曲がり、背中全体が丸い姿勢を思い浮かべがち。でも、骨盤が前傾し、反り腰と猫背が同居する「隠れ猫背」も少なくない。
左:高齢者のような典型的な猫背/骨盤が後傾し、本来前弯しているはずの腰椎が後弯している。硬くなっている筋肉は脊柱起立筋と背骨と太腿を繫ぐ腸腰筋、そしてハムストリングス。逆に緩んでいるのは腹直筋と大殿筋。
右:骨盤前傾が特徴のいわゆる隠れ猫背/上半身の上部にある筋肉のバランスが悪い。僧帽筋上部や脊柱起立筋は前に出ている頭を持ち上げることで、胸鎖乳突筋や大胸筋は上体が丸くなることで縮んで硬くなる。菱形筋・腹直筋は伸びてゆるむ。
「骨盤が前傾していると重心が前に行くので、それを調整するために胸椎の後弯のカーブがキツくなります。一見、いい姿勢に見える人も隠れ猫背に陥っている場合があります。骨盤が前や後ろ、どっちに倒れすぎても上に乗る背骨が影響を受けるということです」
こうした骨の並びの不具合の原因は筋肉。背骨や骨盤を支える筋肉が縮んで硬くなったり、筋力が低下し、伸びて緩みやすくなることで、骨盤の傾きや背骨のカーブが崩れる。日常生活の癖で筋バランスが崩れることが最大の原因だ。
パソコンを長時間使う人は画面を覗き込むため極端に頭が前に出たり、スマホ依存の人は骨盤が後傾して本来前に向かってカーブを描く腰椎が後弯したり。立っているときはいい姿勢でも、座った途端、猫背姿勢になるケースも。
骨盤のポジションは一見普通、でもPC画面を覗き込むことで頭が前に出る座り猫背。胸椎が丸くなり、通常はゆるく前弯している頚椎がまっすぐのストレートネックになっている場合も。
男性に多い座り猫背タイプ。座面に浅く腰掛けて両足を前に出すことで骨盤が後ろに倒れ、本来前弯しているはずの腰椎が後弯している。腰から背中が逆Cの字になっている見事な猫背。
「普段姿勢がよくても、長時間座っていたら楽をしたくなります。骨盤を立てて体幹を保つには筋肉の力が必要で、いい姿勢も長く続けると負担になります。リラックスして骨盤が後傾した途端、結局猫背姿勢になってしまうのです」
座った途端にみな猫背。長時間の座位を避け、一定時間ごとに立って動こう。
取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/川合康太 ヘア&メイク/潮良子 イラストレーション/野村憲司、武久真奈(共にトキア企画) 監修・取材協力/高平尚伸(北里大学医療衛生学部教授、医学博士) 姿勢・ポーズ監修・取材協力/澤木一貴(サワキジム代表)、宮澤俊介(一般社団法人MPC代表理事、理学療法士)
初出『Tarzan』No.879・2024年5月9日発売