電車でのうたた寝は我慢すべき?
我慢するより細切れに寝て、睡眠不足解消の足しに
インバウンドが驚くこと。自販機に温水洗浄便座にきれいな道路、そして電車内でうたた寝するニッポン人。公の場でこれほど無防備な姿でグースカ寝る国民は、世界中探してもまずいないはずだ。
日中に眠気に襲われたり、実際に眠ってしまうこと即ち睡眠不足ということ。理由はさまざま、働き方改革そっちのけで仕事に精を出したり、勤め先と自宅の距離がとてつもなく離れていたり、ベッドにスマホを持ち込み深夜までインスタやティックトックに耽ったり。睡眠を自ら犠牲にしていることを薄々知りつつ、分かっちゃいるけどやめられない。
電車の中で何をする?男女ともに1位は「寝る」
マーケティング・リサーチ事業を手がける〈インフォプラント〉が2005年に行ったNTTドコモ携帯電話ユーザーを対象にしたアンケート。男性、女性ともに「寝る」と答えた人が最も多かった。
当たり前だが電車でのうたた寝はあくまで仮眠。心身の回復に繫がるような深い睡眠は得られない。カラダのことを考えるなら然るべき時間にベッドに入り、まとまった睡眠をとるのが理想。でもどうしてもそれができないとなれば、通勤時間を寝る時間に充てることがひとつの自衛策となる。
浅い睡眠でもしないよりはまし。頑張って我慢するくらいなら寝てしまおう。むろんベストな方法ではないことは自覚したうえで。
最良の時差ボケ対策って何だ?
1週間かけてリセットするか日本時間のまま押し通すか
欧米に渡航経験がある人ならお分かりだろう。日中は激しい眠気に襲われ、夜はいつまでたっても眠気が訪れず、しばらく時差ボケで使い物にならない。いい対策があるなら知りたいところ。でも、時差ボケを回避する方法ははっきり言って存在しない。
「なぜなら体内時計は動かすことができないからです。体内時計は毎朝光でリセットされますが、そのリセットの幅は最大でも90分程度。時差が8時間とか10時間となったら、最大90分ずつリセットしていっても時計を合わせるのに1週間程度かかります。
短期間なら日本の時間でそのまま過ごすのも手ですし、長期間海外に留まるなら1週間かけて対応していくしかないでしょう」(櫻井先生)
より早く渡航先の時間に合わせたいのなら、体内時計のリセットに関わるもうひとつの因子、食事を工夫する手もありとのこと。
脳にある体内時計の中枢以外の時計は食事によってリセットされるからだ。覚悟があるなら機内にいるときから現地の時間に合わせて三度の食事を摂る。機内食はもちろんスルーで。
ヨーロッパへの渡航で時差ボケが発生するのはいつ?
8時間の時差があるヨーロッパに向けて渡航したときのシミュレーション。12時に出発したとして翌日昼に時差発生。体内リズムが現地時間に対応できなくなる。
よく寝る人と寝ない人、太りやすいのはどっち?
事実、短時間睡眠の人には肥満者が多い
睡眠が果たしている役割のひとつに「恒常性の維持」というものがある。たとえば体重。日によって食事の内容が異なるのに、体重は極端に増えたり減ったりせずほぼ一定の値に留まっている。その一番大きな要因は睡眠をしっかりとることで自律神経のバランスが整っているから。
睡眠時間とBMIの関係
BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った肥満指標の数値。日本肥満学会では25以上を肥満としている。グラフはアメリカの大規模調査。睡眠時間が5時間未満の人のBMIの平均値は29以上。
「5時間睡眠の人と7時間睡眠の人では前者の方が明らかに肥満が多い。一般的にあまり寝ていない人は太りやすい。これは統計的に確かめられています。
かつて睡眠時間が短い人は食欲を促すグレリンというホルモンが増えて食欲を抑制するレプチンが減るという論文報告がありましたが、それはごく一部の局面にすぎません。根本的にはやはり自律神経の関わりが大きいと思います」
睡眠時に副交感神経が優位になることでインスリンが分泌されて血糖が然るべき場所に運ばれる。夜いつまでも起きていると自律神経のバランスが崩れ、余った血糖が脂肪に合成されるリスクが増す。この状態が続くとやがて体重の恒常性も保てなくなる。すなわちどんどん太る。
睡眠時間が5時間程度で最近太ってきたという人、とにもかくにも睡眠時間を確保しよう。
空腹な夜に眠れないのは自分だけ?
あなただけではない。人みなすべて空腹では寝られない
睡眠と覚醒の中枢はシーソーのような関係性にある(詳しくはこちらの記事:10日以上寝ないとヒトはどうなる?科学的にひも解く眠りと目覚めの不思議【前編】)。でも実はシーソーは放っておくと睡眠の方に傾きがち。そこで、必要なときに覚醒方向にシーソーを傾け覚醒状態を保つ役割を果たすのが、オレキシンという神経伝達物質だ。
興奮や不安を覚えて眠れないというときにもこのオレキシンが働くため、いつも寝る時間になっても覚醒状態が続いてしまう。
「感情や情動の他にも栄養状態によってオレキシンが発動することがあります。オレキシンを作っているのは血糖値によって機能が変動する神経細胞です。血糖値が下がるとその神経細胞が興奮してオレキシンを作るので覚醒レベルが高くなります。逆に食後に脂肪から分泌されるレプチンが増えるとオレキシンの機能が低下して覚醒レベルが下がります」
カロリーを抑えようとして夕食を減らすのは減量あるある。でもお腹が空いて眠れないという夜を過ごしたことがある人、それは当然の反応。空腹をほったらかしたまま寝ていてはいずれ餓死してしまう。生存戦略としては起きて食べ物を探しに行くのが正解だ。
といっても夜中の爆食は当たり前だが太るのでおすすめしない。就寝2〜3時間前に適量の食事を。
食べておくのが現代人の生存戦略
覚醒状態を維持するオレキシンを活性化させるのは3つの要素。体内時計の朝の知らせ、感情の高ぶり、そして空腹。これらの刺激によってオレキシンが供給され、覚醒状態が保たれる。