ストレッチの科学⑤ SMFR(自発的筋膜リリース)

カラダ作りに関する知識を深める「ストレングス学園」。神経と脊髄反射に基づくストレッチの手法について、シリーズ最後は「自発的筋膜リリース」をテーマに解説する。

取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/モリタクマ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)

初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売

ストレッチの科学 SMFR 自発的筋膜リリース

問1. 自発的筋膜リリースで生じる筋肉の反応を以下より選べ

  1. 自動抑制
  2. 伸張抑制
  3. 相反抑制

自発的筋膜リリースと訳されるSMFRとは、Self-Myofascial Releaseの頭文字からなる言葉。難しそうに聞こえるが、つまりは円筒形のフォームローラーなどを使って筋をほぐす手法のことだ。筋肉を積極的に伸ばすものではないが、緩めて柔軟性を高める効果にすぐれているため、これもストレッチの一種だと考えられている。

そもそも筋膜とは表層から深層までに至る筋肉を立体的に包み込む組織で、全身に張り巡らされてカラダを支えるため“第二の骨格”と呼ばれることも。そのため、硬く縮んだり癒着した筋膜を柔らかくして滑りを良くすることが、筋肉をスムーズに動かしてパフォーマンスを高めるためにも不可欠といえるのだ。

SMFRのストレッチ作用は、筋肉へ圧をかけることで物理的に伸ばされた状態を作ることで起きる。このときの重要なポイントが、圧をかけた状態を「20~30秒間キープする」ということ。

すると、筋線維と腱の間にあるセンサー組織の「ゴルジ腱器官」が作動し、いったん収縮した筋の緊張が解かれて筋肉が緩められるのだ。こうした筋肉の反応は自動抑制と呼ばれ、問いの答えは①となる。

さらにローラーは「筋線維に対して直角に」当てて使用するのもポイントに。硬くなった筋肉にグッと当て込んで的確な刺激を加えることで、自動抑制の反応をより確実に得られるようになる。

問2. 自発的筋膜リリースを行うのに適したタイミングは?

  1. 運動前
  2. 運動後
  3. 凝りがあるとき

ここからは、SMFRをより効果的に行うコツを紹介しよう。まず第一に、筋肉が骨に付着する端から端まで、つまり「起始から停止まで」をまんべんなくほぐすこと。長さのある筋肉の場合は、ローラーを当てる位置をずらしながら3~4分割して行うといい。

部位によっては、筒形になったローラーの形状を利用してコロコロ転がしながら圧を加えると、イタ気持ちいい感覚とともにより広範囲をほぐせるようになる。このように、SMFRは静的なスタティックストレッチでは伸ばし切れないほど筋が硬くなっているとき、つまり凝りがある部分などにも大きな効果が得られるのだ。

ストレッチの科学 SMFR 自発的筋膜リリース

筋線維の走行を理解しておくと、適切な部位にフォームローラーを当ててさらに効果を高められる。凝りや張りが強い部分は、時間をやや長めに取ってもいい。

ただし気持ちよさのあまりゴリゴリ力を入れすぎると、逆に筋肉を痛めかねないので要注意。時間にして1部位につき1分間を最大と心得ておきたい。

他にSMFRを行うメリットとして、筋バランスやアライメントが整えられることがある。ウォーミングアップ時には、まずSMFRを行って筋肉の柔軟性を高めてから動的ストレッチでカラダを温めるといい。

また運動後のクールダウン時はSMFRの後にスタティックストレッチを加えて筋肉を効率よく緩め、目的に合わせて筋の構造や特性を活かしたストレッチを使い分けていこう。ここまでをまとめると、問いの答えは①②③の全て。