【花粉緊急対策】家の中でアレルゲンを減らすコツ
たとえ外出先で完璧な花粉対策を行っていたとしても、家の中にだってアレルゲンは潜んでいる。ダニやカビ、ペット由来のものなど、花粉以外にもアレルギーを引き起こすトリガーは数多い。快適な生活を送るためには、まず居住空間から見直したい。今回は室内に潜む代表的な4つのアレルゲンと、手軽にできる対策法を紹介する。早速実践してみよう。
取材・文/重信 綾 撮影/吉松伸太郎 スタイリスト/豊島 猛 取材協力/白井秀治(東京アレルギー呼吸器疾患研究所環境アレルゲン研究班 班長)、ダイキン工業(株)
初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売
教えてくれた人:白井秀治さん
しらい・ひではる/ NPO法人東京アレルギー・呼吸器疾患研究所環境アレルゲン研究班班長、環境アレルゲンinfo and care(株)代表。専門はアレルゲンに関わる室内環境整備。アレルゲンの対策や除去方法、測定や評価法について対策を啓発する。
家の中でアレルギーを減らすには?
住空間にはダニや花粉、カビ、ペット由来のものなど、辛いアレルギー症状を引き起こす原因物質であるさまざまなアレルゲンが存在する。
「特に近年は、住宅の気密性が上がったことで空気の入れ替わりが減り、ダニや花粉などが一年を通して室内から多く見つかる住居が増えてきました」(環境アレルゲン対策研究者の白井秀治さん)
そのため、アレルゲンの除去や、そもそも増やさないようにする予防策として、毎日の掃除や洗濯などを工夫するといった意識的な対策が不可欠。アレルゲンはそれぞれに性質や発生しやすい場所などが異なるため、適切な対処をすることも大事なポイントだ。
たとえばダニであれば、生きているものと、死骸やフンはどちらもアレルゲンとなるが、それぞれに効果的な掃除機のかけ方や洗濯機の使い方は違ってくる。まずは室内に潜む代表的な4つのアレルゲンと、手軽にできる対策法を紹介する。早速実践してみよう。
住まいの4大アレルゲン
ダニ
多くの日本の住居には、肉眼では見えない小さなダニがたくさん存在している。さまざまな種類がいるが、アレルギーの原因となるのは主にチリダニ科のヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニで、家の中から見つかるダニの約7〜9割を占めている。フンや死骸を吸い込むことで気管支喘息や鼻炎、皮膚が痒くなるなどのアレルギー症状を起こす人がいる。
グラフを見ると、寝具やぬいぐるみ、敷物、ソファに多く存在しているダニ。人が触れる機会が多いものほど、フケや垢といった餌が豊富で、ダニの発生源となっている。
花粉
まさに今の時期、多くの人を悩ませている花粉症。原因となるスギやヒノキなどの花粉は、玄関や窓、換気のために設置されている吸気口といった外気が通る場所から室内へ侵入する。花粉は帰宅時には洋服にも付着しているほか、ペットの散歩後には毛などにまとわりついており、そのまま室内に持ち込んでしまうこともある。
外気が侵入しやすい場所における花粉の量を測定した結果がこちら。機密性の高い近年のマンションは、自然な空気の入れ替わりが少ないため、花粉が溜まりやすいことがわかる。
ペット
日本では、今や15歳未満の子どもの数よりも多いとされるペットの数。猫や犬、ウサギなど、さまざまな動物の毛に加えてフケ、唾液、ホルモンなどの分泌物もアレルゲンとなりうる。ダニと同様に鼻炎など、さまざまなアレルギー症状を引き起こすことがある。室内で飼うと、より症状が出やすくなるのは明白だ。
カビ
咳や鼻炎、結膜炎、湿疹などの症状を引き起こすカビによるアレルギー。カビは高温多湿の環境を好むという特徴があり、浴室などの水回りに発生しやすい。梅雨から夏にかけてのジメジメした時期はもちろん、冬場でも加湿器などで加湿された室内の場合は繁殖するので、対策が必要となる。特に、結露しやすい窓際や、押し入れの中などに注意すること。
アレルギーゼロの3つのルール
① 掃除
部屋の中にあるアレルゲンをできるだけ取り除き、増やさないようにするためには、小まめな掃除が不可欠。それぞれのアレルゲンの特徴を理解し、必要な場所に、正しい方法で掃除機をかけるなどの対策を。
② 丸洗い
布団などの寝具はダニのエサとなる人のフケや垢が多い場所なので、丸洗いが繁殖の抑制につながる。ただし、水洗いでは完全な除去は難しいため、生きたダニの対策には、お湯や乾燥機など熱の活用もポイントとなる。
③ すみかをなくす
毛足の長い布製品、布に綿を詰め込んだぬいぐるみや寝具など、人が触れる機会の多いものほどダニの温床となりやすい。素材を替えたり、そもそも置かないという選択をとるなど、工夫をすることが大事。
アレルギー対策Q&A
Q.掃除の場所の優先順位は?
滞在時間が長く、よく触れるものから
ダニは、布団やぬいぐるみなど布にくるまれ、かつ人が触れるものに繁殖することが多い。そのため、掃除をする時は滞在時間の長い場所を重点的に行うと効率よく除去できる。特に寝室は、布団の上げ下ろしや寝返りなどによってダニアレルゲンが空中に舞い上がり、量が増える場所なので、しっかりと対策を。
Q.掃除機の有効なかけ方は?
週に1〜2回、1㎡当たり20秒が目安
床や布団の掃除機がけをていねいに行うことが有効。週に1〜2回、1㎡当たり20秒かけるのが目安となる。ノズルは密着させてゆっくりと移動させよう。掃除機による吸引は、かけ始めて20秒ほどで表面のダニや埃の多くを回収できるため、時間をかければたくさん取れるというわけではないから注意。
Q.洗濯でアレルゲンは落ちる?
コインランドリーの併用も検討すべし
花粉やダニのフンや死骸などはある程度落とせる。だが生きているダニは布団や衣類などの繊維に強い力でしがみつくため、洗濯機で洗った程度では取り除くことができない。大事なのは、乾燥機などを使ってダニが死滅する50度以上の環境を作り出すこと。コインランドリーを活用することも一つの手だ。
Q.天日干しでアレルゲンはなくなる?
ダニのフンや死骸は減らない
布団を天日干しして乾燥することで、ダニが繁殖しづらくなる効果が期待できる。ただし、日に当てたとしても、布団の表面温度はダニが死滅する50度以上に上昇することはあまりなく、布団乾燥機を使って加熱することをおすすめしたい。また、ダニの死骸やフンは乾燥では減らないので掃除機の併用を。
Q.布団や衣類を叩けばアレルゲンは落ちる?
叩きっぱなしはNG。掃除機との併用を
布団や衣類を叩くと内側にあったダニの死骸やフンは表面に浮かび上がってくる。ただ、そのままにしておくと鼻や口から吸い込んでアレルギー症状を引き起こしてしまうため、叩いた後は必ず掃除機をかけて吸い取ること。ちなみに何万匹も潜むうち生きたダニは500回叩いても600匹くらいしか落ちない。
自宅のアレルゲン量を調べるには?
一日のうち多くの時間を過ごす寝具は、ダニの温床となるさまざまな条件が揃っている可能性大。不安を感じたり気になるという人は、ダニアレルギーの原因となるチリダニ由来の主要アレルゲン量を測定できるキットを使って状況を把握してみよう。ハウスダストを採取して郵送するだけなのでとっても簡単。《ダニアレルゲン検査》4,950円、WEBサイト