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症状がなくても受けるべき? 編集部スタッフがアレルギー検査をしてみた

周囲に花粉症やアトピーの人が増えると、「将来自分もなるかも」と不安になる。念のためにアレルギー検査を受けるべきだろうか。そこで、アレルギー研究を行う鈴木慎太郎先生に、アレルギー検査の実際を聞いた。また、今回特別に編集部8人がアレルギー検査を受けた。無症状でも抗体を持っているのか?自覚症状と抗体レベルの関係は? 果たして!?

教えてくれた人:鈴木慎太郎さん

すずき・しんたろう/昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門准教授。大学卒業後、国内外の大学や病院でアレルギー研究や診療を行う。専門は大人の食物アレルギー、アナフィラキシー、アニサキスアレルギーなど。医学博士。

症状がなくても、アレルギー検査はやるべき?

周囲に花粉症やアトピーの人が増えると、「将来自分もなるかも」と不安になる。念のためにアレルギー検査を受けるべきだろうか

アレルギー専門医の答えはNO

「アレルギー検査は、何らかのエピソード(症状)があるアレルギー患者が、原因のアレルゲンを特定するために病院で行うもの。症状がない人は行うべきではありません」(昭和大学医学部の鈴木慎太郎准教授

検査しても、特定のアレルゲンに対するIgE抗体が多いのにアレルギー反応が出ない人もいるし、アレルゲンにIgE抗体が検出されないのにアレルギー反応が出る人もいる。

「その差がどこにあるかには不明な点も多く、体質や環境などによる個人差が大きい。重要なのは症状の有無。専門医の問診なしに、検査結果だけが一人歩きするのは危険です」

今回は花粉症など何らかのアレルギー症状がある編集部スタッフ8人をメインに、特別に2人の無症状者も合わせてアレルギー検査を行った。調べたのは、花粉やダニなど吸い込む(吸入)系17項目食べ物系28項目の計45項目。なかでも興味深い結果が出た4人について鈴木先生の判定とコメント付きで紹介する。

血液検査でわかるアレルゲン項目

血液から45項目(下参照)のアレルゲンに対するIgE抗体のスクリーニングが可能。IgE抗体量に応じた7段階のクラス判定(0〜6)も行われ、クラス2以上はアレルギー体質の疑いアリ。加えてあらゆるIgE抗体(非特異的IgE)を同時測定。IgE抗体ができやすい体質かどうかの判定にも役立つ。

吸入系(屋内)
アレルゲン 測定値 クラス
ヤケヒョウヒダニ 0.35 1
ハウスダスト 0.22 0
ゴキブリ 0.00 0
ユスリカ 0.08 0
0.00 0
ネコ皮屑 0.21 0
イヌ皮屑 0.00 0
アスペルギルス 1.87 2
アルテルナリア 0.33 0
マラセチア 4.94 3
吸入系(花粉)
アレルゲン 測定値 クラス
ハンノキ 0.01 0
シラカンバ 0.00 0
スギ 0.02 0
ヒノキ 0.00 0
ブタクサ 0.02 0
ヨモギ 0.00 0
カモガヤ 0.08 0
食物系
アレルゲン 測定値 クラス
卵白 0.46 1
ミルク 1.00 2
小麦 0.42 1
ゴマ 0.00 0
ソバ 0.00 0
ピーナッツ 0.02 0
大豆 0.37 1
アーモンド 0.00 0
カニ 0.00 0
エビ 0.03 0
トマト 0.61 1
豚肉 0.01 0
牛肉 0.01 0
オレンジ 0.10 0
サケ 0.00 0
リンゴ 0.37 1
サバ 0.12 0
イカ 0.01 0
卵黄 0.34 0
鶏肉 0.00 0
キウイフルーツ 0.00 0
バナナ 0.25 0
モモ 0.00 0
ヤマイモ 0.00 0
カシューナッツ 0.23 0
クルミ 0.00 0
イクラ 0.00 0
アニサキス 0.00 0
メーカーによるサンプル値

アレルギー検査のあれこれ

医療機関におけるおもなアレルギー検査
  1. 病歴の詳しい問診
  2. 皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)
  3. 血中抗原特異的IgE抗体価測定←今回はこれ
  4. 末梢血白血球ヒスタミン遊離テスト
  5. 負荷誘発テスト(粘膜誘発、経口負荷、吸入負荷)
  6. 環境アレルゲン量測定

検査の出発点は医師が問診で聞き出す病歴1)。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎で行われるのがプリックテスト2)。針でアレルゲンを少量皮膚に入れて15分後の反応を見る。金属アレルギーなどではアレルゲンを皮膚に貼り、48時間後の反応を見るパッチテストも行われる。編集部で試したのは血中のIgE抗体量を測定するもの3)。アレルギー反応を起こすヒスタミンを測定したり(4)、アレルゲンで症状が誘発されるかを確かめたり(5)、ハウスダストなど環境アレルゲン量を測ったりする検査もある(6)。

SiLIS-100で抗体量がわかる仕組み

SiLIS-100

検査に利用したのは〈タカノ〉の移動式免疫発光測定装置《SiLIS-100》。2023年11月に発売されたばかりの最新機器だ。少量の血液(血清または血漿)により、わずか約15分で測定が完了するのが特徴

特定のアレルゲンに対する特異的IgE抗体があると、酵素反応で発光する仕組みになっており、発光の様子を高精度のカメラで捉えて画像解析し、IgE抗体の有無とその量を測定する。

分析装置本体(写真)がコンパクトなので、スペースに余裕のないクリニックにも置けるというメリットもある。ちなみに、同じように多数のアレルゲンに対するIgE抗体を一度に調べられる装置は他にも3種類ほどあり、いずれも保険診療なら5,000円(診察代など別途)程度で受けられる

花粉症から無症状まで、編集部スタッフのアレルギー判定は!?

結果は花粉―食物アレルギー症候群

カラダに潜む抗体 編集部スタッフ アレルギー検査

編集A (30代男性)

判定:マルチアレルギーTYPE

Aは保育園時代に花粉症を発症。「故郷の山梨県は盆地で花粉が停滞しやすいのか、友人もほとんど花粉症でした」。

小学生でアトピー性皮膚炎&鼻炎となり、豆乳にも食物アレルギーを持つという自他ともに認めるアレルギー体質。検査でも花粉、食べ物、ハウスダストと幅広いアレルゲンに特異的IgE抗体が多数できていることが明らかになった。

ただ豆乳アレルギーと自己申告していたものの、意外にも大豆に対する特異的IgE抗体量はごく微量に留まっていた。

「Aさんはおそらく複数のアレルゲンの交差反応による“花粉―食物アレルギー症候群”。タンパク質の構造が似たシラカンバの花粉大豆のアレルゲンの合わせ技によるものでしょう」(鈴木先生)。

編集Aの判定結果
アレルゲン 測定値 クラス
ヤケヒョウヒダニ 1.14 2
ハウスダスト 0.79 2
イヌ皮屑 0.36 1
アルテルナリア 0.67 1
シラカンバ 6.01 3
スギ 11.07 3
ヒノキ 0.44 1
ヨモギ 7.69 3
牛肉 1.21 2
バナナ 0.47 1
ヤマイモ 0.4 1

ひょっとしたら猫アレルギーも?

カラダに潜む抗体 編集部スタッフ アレルギー検査

編集H(40代男性)

判定:弱いアレルギーTYPE

自らのアレルギー体験を語り出したら止まらないH。「生まれつきのアトピー性皮膚炎。小学生の頃にステロイド療法で克服しましたが、さんざん苦労しました。高1の春休みに花粉症を突然発症。いまだに悩まされています」。

スギ花粉に対する特異的IgE抗体量は10名中ダントツ1位でクラス4。本人は猫アレルギーも疑っていたが、猫の皮膚に対する特異的IgE抗体量は微量でクラス0だった。

「幼少期からのアレルギー対策で反応が改善した可能性も。Hさんは吸入系でもダニやハウスダストにはまったく反応しないのに、猫やアスペルギルス(カビ)には微細とはいえ反応がある。猫やカビのアレルギーが今後生じるリスクも捨て切れません」(鈴木先生)。

編集Hの判定結果
アレルゲン 測定値 クラス
スギ 20.57 4
ヒノキ 0.39 1

部屋の掃除を徹底すべし

カラダに潜む抗体 編集部スタッフ アレルギー検査

編集W(30代男性)

判定:気道系に弱点ありTYPE

検査では、気道から入る吸入系と、腸管から入る食べ物系のアレルゲンに大別して調べている。両方に敏感に反応するタイプもいれば、一方のみに反応するタイプもいる。

Wは食べ物系アレルゲンにはクラス1以上の特異的IgE抗体は皆無だが、ハウスダストと花粉ではクラス3が4つもある。

気道系のアレルゲンに弱い体質ですね」(鈴木先生)。W本人はこの結果にとくに驚く様子はなかった。

「保育園の頃から喘息に悩み、10年ほど前から花粉症になりました。早くから症状が出るのでてっきりブタクサが原因だと思っていましたが、どうやらスギのせいだったようですね。ハウスダストにも弱いので、部屋の掃除をこれまで以上に徹底します!」。

編集Wの判定結果
アレルゲン 測定値 クラス
ヤケヒョウヒダニ 9.88 3
ハウスダスト 10.61 3
スギ 8.16 3
ヨモギ 7.05 3
カモガヤ 1.51 2

摩訶不思議な無冠の女王

カラダに潜む抗体 編集部スタッフ アレルギー検査

デザイナーY(30代女性)

判定…偽陽性ハイリスクTYPE

アレルギー検査は症状のある人が受けるのが大基本だが、Yは無症状ながら本人たっての希望でイレギュラーなエントリー。結果は誰も想像できないものだった。検査した45項目にすべて特異的IgE抗体量が検出され、クラス1以上も12項目とAを抜いて最多だったのだ。

「ショックでした! ただ、好きでよく食べている鮭とエビがクラス0に留まっていたのが救いです」。Yは今後何に注意すべきなのか。

「無症状なのに検査を受けると、無用な心配に陥る恐れがある。Yさんはその典型。リスクはありますが、アレルギー症状がないのですから、生活を大きく変える必要はない。アレルギーが不安で生活の質が落ちたら本末転倒です」(鈴木先生)。

デザイナーYの判定結果
アレルゲン 測定値 クラス
ゴキブリ 0.42 1
ユスリカ 0.66 1
マラセチア 0.37 1
ブタクサ 0.42 1
ミルク 0.4 1
大豆 0.45 1
カニ 0.57 1
トマト 0.42 1
牛肉 0.38 1
リンゴ 0.6 1
バナナ 0.5 1
アニサキス 0.4 1

取材・文/井上健二 取材協力/鈴木慎太郎(昭和大学医学部准教授)、タカノ

初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売

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