「地震が怖いのではなく、建物や家具の下敷きになることが怖い」家の中の地震対策は万全ですか?

連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「家の中の地震対策」。

edit & text: Ryo Ishii illustration: Yoshifumi Takeda 監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。

初出『Tarzan』No.874・2024年2月22日発売

家 地震 対策

家の中の地震対策

率直に問う。自宅の地震対策は万全だろうか? 万が一の場合、死傷するリスクを最小限に抑えるための転倒対策は必須事項だ。

重要な視点は、「なぜ地震で死傷してしまうのか」ということだ。地震は恐ろしいものではあるが、単に地面が揺れただけでは、人間は死なない。周りにある建物や家具が倒れ、飛散し、それに巻き込まれる形で死傷してしまうのが直接的な被害であって、地震はきっかけにすぎない。

地震が怖いのではなく、建物や家具の下敷きになることが怖いのだ。この根本をしっかりと理解し、正しく恐れることができると、家の中のリスクがよりクリアに見えてくる。

そのうえで大切なのは、基本を忠実に守り、単純なことほど真面目に取り組むこと。地震対策は、正しくできていないと効果が半減してしまうものも少なくない。すでに対策済みという人も、いま一度、家の中を見直してみよう。

確実かつ正しく行いたい、家具の転倒対策

家 地震 対策

阪神・淡路大震災では、負傷の原因は家具・家電の下敷きが46%、飛散したガラス類が25%。家具の転倒防止や棚のロックは数ある地震対策の中でも必須事項である。

注意点として、よく見掛ける突っ張り式などは家具と天井に十分な強度がないと転倒防止効果が薄れる。ストッパー式やマット式など複数を組み合わせると強固になる。

家具が倒れる方向に寝ない、居ない、過ごさない

家 地震 対策

家具は基本的に長辺の方向に倒れやすい。その先にベッドやソファを配置していると、押しつぶされる可能性が必然と上がってしまう。

また、倒れた家具がドアを塞ぎ、閉じ込めが発生することも大きなリスク。そのようなレイアウトになっていないか、いま一度確認を。家具の配置ひとつだけで、生死を分けることもあると心得よう。

窓ガラスには飛散防止のフィルムやカーテンを

家 地震 対策

震度5弱以上の大きな地震では、窓ガラスが割れるリスクが大きく高まるといわれる。スリッパや素足で過ごしているなか、飛び散ったガラスで足を怪我してしまうと、逃げ遅れに繫がることも。

少し厚手のカーテンに替えるだけでも対策になるが、できれば飛散防止のフィルムをガラスの内側に貼っておくと、さらに安心だ。

脱出ルート&逃げ込む場所は把握・共有しておくべし

家 地震 対策

自宅にいる時に地震が起こったら、どこに逃げ込むか。玄関以外の場所から安全に外に出られるか。この2つを把握し、日頃から家族と共有しておくことはとても大切。

一般的な住宅において、比較的揺れに強いとされているのは強い壁や柱に囲まれた玄関やトイレ。また、高さがある場所には避難はしごの設置も検討しよう。

ベッドから手が届く場所に靴と懐中電灯はマスト

家 地震 対策

停電による暗闇の中、建物の瓦礫や飛散したガラス、散乱した家具に雑貨。そんな状況で安全に脱出するには、靴と懐中電灯が必須だ。

特に就寝時は不意打ちになるため、ベッドサイドの収納やベッド下などに必ず備えておくこと。懐中電灯は転がらないよう靴の中に入れ、瓦礫などが入るのを防ぐため靴下を詰めておくとなお良し。

重いものは下、軽いものは上。収納にもひと工夫を

家 地震 対策

地震のエネルギーはすさまじく、重いものでも簡単に吹っ飛ばしてしまう。棚に物を収納したり、飾ったりする際には、“重いものほど下へ”が大原則だ。

本棚であれば、分厚いハードカバーの本などもその対象。この程度と思っていても、高い所からたくさん降ってくると、大きな怪我に繫がりかねない。ぜひ収納の見直しを。