ストレッチの科学② 相反抑制

カラダ作りに関する知識を深める「ストレングス学園」。科学的なメカニズムに基づいたストレッチを種別ごとに解説する2回目は「相反抑制」について。

取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/モリタクマ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)

初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売

ストレングス学園 相反抑制

問1. 筋の相反抑制を利用したストレッチの種類を次から選べ

  1. スタティックストレッチ
  2. ダイナミックストレッチ
  3. バリスティックストレッチ

我々が関節を動かす際には、メインで働く(=収縮する)“主動筋”が動作をしやすいよう、反対側で働く“拮抗筋”が弛緩するというメカニズムが備わっている。

例えば、膝の屈曲においては主動筋となる腿裏のハムストリングスが収縮するが、そこでもし反対側の拮抗筋・大腿四頭筋が働いてしまうと、当然ながら曲げる動作が行えない。

そのため主動筋の収縮⇔拮抗筋の弛緩は常にセットで働いて、関節のスムーズな動きを実現させるというわけだ。

 相反抑制

脊髄内に入ったIa群線維は、主動筋に興奮性の刺激を送って収縮させると同時に、拮抗筋へは抑制性の刺激を送る。そのため拮抗筋を弛緩させる相反抑制は「Ia抑制」とも呼ばれる。

神経と脊髄の反射を経由するこの働きは「相反抑制」と呼ばれ、さまざまな関節を反復して動かす答え②のダイナミックストレッチに応用されるもの。以下、その神経的なメカニズムを解説しよう。

まず、脳から「動け」という指令が送られると、筋肉の緊張を伝える「Ia群線維」は、運動神経を通して主動筋を興奮させる。その一方で、脊髄内に入ったIa群線維は「抑制性介在ニューロン(Ia抑制ニューロン)」を経由して、拮抗筋を支配する運動神経に接続。この刺激が拮抗筋に伝わり、筋の緊張を抑制し緩めることでストレッチさせるのだ。

筋温を上昇させつつ、スポーツなどの特異的な動きに適応した柔軟性を無理なく高められるダイナミックストレッチは、その安全性も大きなメリットのひとつだ。

問2. 相反抑制によるストレッチで働く筋の活動様式をすべて選べ

  1. 等尺性収縮
  2. 短縮性収縮
  3. 伸張性収縮

相反抑制を利用した「ダイナミックストレッチ」は「動的ストレッチ」とも呼ばれ、関節の反復動作を繰り返すのが特徴。

さらに相反抑制は主動筋と拮抗筋の相反する働きからなるのは前述の通りだが、ダイナミックストレッチでは、筋肉を伸ばす「伸張性収縮」と、縮める「短縮性収縮」を繰り返すことで相反抑制が引き起こされる。

これによって主動筋が緊張(=収縮)しているときに、反対側の拮抗筋をリラックス(=弛緩)させることができるのだ。つまり、問いの答えは②・③となる。

最後に、ダイナミックストレッチを行う際の最重要ポイントが「反動をつけない」ということ。反動で筋肉を急激に伸ばすと、筋が切れるのを防ぐための脊髄反射で逆に筋肉を縮めようとする「伸張反射」が働いてしまうからだ。

トレーニングの現場では、運動前のウォームアップに広く取り入れられるダイナミックストレッチ。関節を反復して動かすことで、周辺の筋を交互に伸び縮みさせるのが特徴だ。

スピードをコントロールしつつ動作を行うことを意識しながら、筋肉の協調性を高めて柔軟に動けるカラダを手に入れよう。