連載「View of PICSPORT -フォトグラファーが見たアスリートの肖像-」。長年、さまざまな競技で取材を続けるスポーツフォトグラファー、岸本勉さん、中村博之さんが写真を通じて、“アスリートの素顔”に迫る。第十一回は中村博之さんが捉えた【第100回箱根駅伝】。
箱根駅伝は「やっぱり、現場に行かなければいけないんだ」と後悔、猛省
正月の風物詩となった箱根駅伝が100回目のメモリアル大会を迎えた。
大会前の予想では、大学三大駅伝の出雲駅伝、全日本大学駅伝を制し、史上初の2年連続3️冠を狙う駒澤大学が優勝候補の筆頭だったが、『負けてたまるか大作戦』を掲げた青山学院大学が大会新記録で2年ぶり7️度目の優勝を飾った。
僕が初めて箱根駅伝を撮影したのは1999年の第75回大会で、その年から日本橋をランナーが通過するコースに変更。プロのスポーツフォトグラファーとは全く呼べない21歳の新人に与えられたミッションの一つは、ランナーが日本橋を走っている様子を撮影すること。
新年早々、絶対に失敗したくないので朝6時前に脚立を持って場所を確保。当時はポジフィルムを使用し、ピントを合わせてくれるオートフォーカス機能も条件によっては外れる可能性があったのでピントは置きピン。
フィルム現像が上がってくるまでに1日待たなければいけないので緊張と不安を抱えたまま一夜を過ごすも、仲間達の思いを背負い、襷を繋ぐ姿に感動し来年も再来年も撮影に行くんだ!と、意気込んでいた。
年齢も30半ばを迎えてフリーランスになっていた2015年。箱根駅伝の現場にも慣れてしまい、実家でゆっくりテレビ観戦でもいいかなぁと思いはじめていた。
とりあえず、往路の戸塚中継所を撮影して帰宅。テレビをつけると青山学院大学の神野大地選手が軽やかに飛び跳ねるように5区山道を快走し1️位でフィニッシュ。3代目山の神、誕生の瞬間だ。
笑顔でゴールし仲間と喜びを合う場面がとても華やかに見えキラキラ輝いていた。やっぱり、現場に行かなければいけないんだと後悔、猛省。
でも、毎年年末が近づいてくると、自分に甘い僕はお節料理と日本酒を嗜みながらゆっくり過ごしたいと心が引っ張られそうになるが、原監督の『○○大作戦』がニュースになると、結局どの場所で撮影をしようか考えている。
気が早いが来年の大作戦はなんだろう?
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
今年は約90万人の観戦者が沿道でランナーに声援を送っていた
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
青山学院大学は往路新記録の5時間18分13秒で優勝
笑顔でフィニッシュする若林宏樹選手
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
往路優勝トロフィー
インタビュー受けているのは3区逆転劇を演じた太田蒼生選手
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
記者会見後に原監督と選手達で集合写真を1枚
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
復路の小田原中継所では青山学院大学ののぼりだけが風になびいていた
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
小田原中継所、6区の野村昭夢選手から7区の山内健登選手へ楽しそうに襷が繋がる
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
大手町のゴールでは総合優勝の瞬間を楽しみにしている青山学院大学の選手達が待ち構えていた
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
ライバル駒澤大学を抑えて新記録の10時間41分25秒で総合優勝
トップでテープを切ったのは宇田川瞬矢選手
2024年 第100回東京箱根間往復大学駅伝競争
最後のカットは原監督の「1番!!」、2015年の初優勝から10年間で7️回目の優勝
2022年 第98回東京箱根間往復大学駅伝競争
戸塚中継所では2区の近藤幸太郎選手から太田蒼生に襷を繋げた
2022年 第98回東京箱根間往復大学駅伝競争
仲間から給水をうけとった8区を走った佐藤一世選手
2022年 第98回東京箱根間往復大学駅伝競争
コロナウィルス感染症対策のため沿道の観戦と応援は自粛で、少し寂しい大手町のゴールだったが、満面の笑顔で仲間のもとに駆け込む中倉啓敦選手
2022年 第98回東京箱根間往復大学駅伝競争
原監督もマスクをしてガッツポーズ!
2018年 第94回東京箱根間往復大学駅伝競争
当時3年生の竹石尚人選手は5区箱根山登りを任されたがブレーキ、ゴール後に仲間に支えられながら悔し涙を流す姿が印象的だった
2018年 第94回東京箱根間往復大学駅伝競争
レース後、復路に向けてミーティングを行う原監督
2018年 第94回東京箱根間往復大学駅伝競争
往路は36秒差の2位からスタートし、逆転で史上6校目の4連覇を達成
会心のガッツポーズでテープを切る橋間貴弥選手
2017年 第93回東京箱根間往復大学駅伝競争
表彰式では大勢の観衆に囲まれ祝福された
2017年 第93回東京箱根間往復大学駅伝競争
大手町の沿道には沢山の観戦者で埋め尽くされた
ゴールで待っている仲間にガッツポーズする安藤悠哉選手
2016年第91回東京箱根間往復大学駅伝競争
4年生になった神野大地選手は怪我の影響もありながら5区の山道を走り抜き、区間2位で往路優勝に貢献
2016年第91回東京箱根間往復大学駅伝競争
元気いっぱいで総合優勝2連覇の瞬間を仲間達と喜び合う青山学院大学
2015年第91回東京箱根間往復大学駅伝競争
大手町に戻ってきた原監督は目を輝かせながら選手達の元に駆けよった
2015年第91回東京箱根間往復大学駅伝競争
総合優勝に貢献した2区の一色恭志選手(左)と5区で快走を見せた神野大地選手(右)
2015年第91回東京箱根間往復大学駅伝競争
青山学院大学総合初優勝のテープを切ったのは、当時2年生の安藤悠哉選手
フォトグラファー・中村博之
中村博之(なかむら・ひろゆき)/1977年生まれ、福岡県出身。1999年スポーツフォトエージェンシー『フォート・キシモト』に入社。2011年フリーランスとして活動を始める。オリンピックは夏季冬季合わせて10大会を取材。世界水泳選手権は2005年モントリオール大会から取材中。2015年FINA世界水泳選手権カザン大会より、世界水泳連盟のオフィシャルフォトグラファーを担当。国際スポーツプレス協会会員(A.I.P.S.)/日本スポーツプレス協会会員(A.J.P.S.)。
Instagram:@picsport_japan
X:@picsport_jpn
撮影・文/中村博之
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