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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第33回のテーマは「プロレスラーにとっての大胸筋」について。
ウエイトレーニングを始めたとき、一番最初に成長を感じられる部位、それは胸の筋肉、大胸筋ですね。若干の個人差はあると思いますが。
それは、ウエイトトレーニングのエースで4番的存在がベンチプレスだからです。ええ、若干の個人差はあると思います(2回目)。
ベンチプレスは、トレーニングの基本中の基本ですよね。基本であるがゆえに、皆、ここからスタートします。
そして、経験を積み、トレーニングを勉強していく中で「チェストプレスというマシンは、軌道が確保されているし、より安全にトレーニングできるね!」ということを知り、はたまた「ダンベルプレスは、ベンチプレスよりも可動域が取れるので、フルストレッチからの完全収縮!」と、ダンベルの良さに気がつきます。
すると、どうでしょうか。あれほど、頼りにしていた「ベンチプレス」。大胸筋の基本的なフレームや厚み作りで、大変お世話になった「ベンチプレス」を卒業していくことが多いのです。
ご多分に漏れず、僕自身もそうでした。トレーニングを始めたときの喜びは多くあります。カラダが大きくなっていく喜び。そして、扱う重量が重くなっていく喜びです。
特に、ベンチプレスはMAXを計りやすいですし、他者との比較がしやすいので、1.25kgのプレートで、少しでもMAXを更新することに夢中になったものでした。
こうして、ベンチプレスの卒業生たちは、僕も含めて、カラダ作りに試行錯誤していくのですが、ある時期に、壁にぶち当たります。
それは、トレーニング歴が長ければ長いほど、感じる「プラトー」というやつです。以前のコラムでも触れたことのある、この「プラトー」。使われ方と意味としては、高原や台地を意味する言葉で、トレーニングによって起こるさまざまな能力の向上が落ち着き、頭打ちになっている状態を指します。
このプラトーを打破するためには、セット数や種目の変化によって、筋肉に新しい刺激を入れる必要があるのですが、その中でも、一番忘れ去られがちなのが、重量ではないかと思うのです。
トレーニーの皆さんは、新たな刺激を入れるために試行錯誤し、セットを組み直したり、スーパーセット(2種目インターバルなしで行うやり方)、トライセット(3種目インターバルなしで行うやり方)、ジャイアントセット(4種目以上インターバルなしで行うやり方)などで、新たな筋肉痛を探し求めます。
そう、我々トレーニーは「筋肉痛」というお宝を探し求める冒険者。いや「筋肉痛」を愛してやまない世捨て人。いや「筋肉痛」さえ手に入れば、あとは何も要らない探究者とも言えます。
話がそれましたが、こうして、トレーニング歴が長くなり、経験と選択肢が増えるにつれて、迷子になることがままあるのです。
そんなとき、どうすればよいか?それは、基本に立ち返るサインなのです。初めてのベンチプレスで、大胸筋がパンパンに張ったあの日。翌朝、胸筋をちょっと触っただけで「いてぇ〜!」と喜びの悲鳴を上げていた、あの頃。
昔「そうだ!京都に行こう!」というCMがありましたが、まさにそれ。「そうだ!ベンチプレスをやろう!」てなもんです。
高重量のトレーニングは、ケガのリスクもありますが、やはり、重いものを挙げたいというのは、プロレスラーのサガなのでしょうか?
しかし、かく言う僕も、ベンチプレスのMAXは2014年か2015年頃に、190kgを1回挙げたのが最後ですね。大先輩の武藤敬司さんのMAXが190kgと聞いたので、1つの目標としていた数字でした。
長州力さんやマサ斉藤さんはMAX200kgだったみたいですが、少し届きませんでしたね。…いや、まだ諦めるのは早いですね。これから、頑張りましょうか!?
ベンチプレスは、間隔が空き過ぎると、本当に重く感じます。190kgを挙げていた頃は、160kgで10回挙げた記憶が残っているのですが、今のベンチプレスのMAXが160kgくらいで、そこから伸びません。なぜ!?
試合で、両腕の二頭筋を部分断裂し、右の大胸筋の外側も部分断裂してしまっているのも、その原因かも知れませんが、「重さ≒大きさ」を信じるのであれば、言い訳はしていられませんね。高みを目指すのみですね。
18歳で、本格的にウエイトトレーニングを始めて20年。一周回って、もう一度、ベンチプレスから始めてみます。
大胸筋は、運動競技では、広背筋や大腿四頭筋などに比べて、実践では、あまり使われない筋肉なのですが、こと、プロレスという競技においては、チョップやラリアットを胸板で受けます。
つまり、プロレスラーにとって大胸筋とは、打たれ強さの象徴でもあるのです。「どんな攻撃でも技でも受け切って立ち上がってやるぞ!」というプロレスラーの生き様を表している筋肉なのです。
そんなわけで、皆さん。ウエイトトレーニングで、迷子になったら、母なるベンチプレスに帰るのはどうでしょうか?
思いの外、重量を挙げられなくて、ガッカリするかもしれませんが、もれなく、初心に帰れて、翌朝の筋肉痛も手に入れることができると思います。
たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。