乾燥しがちな冬。寝るときの湿度の目安は?:睡眠の科学2 環境編
連載「コンディショニングのひみつ」。前回から全3回にわたってコンディショニングとしての睡眠を解説。今回は睡眠の質を左右する“環境”について。前回の記事「睡眠の科学① 理論編」はこちら。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.865・2023年9月21日発売
時間だけでなく、意識したい“環境づくり”
睡眠は、我々ヒトのカラダと心を健康に保つために必要不可欠なもの。
厚生労働省は、睡眠不足や睡眠障害が疲労感や情緒の不安定、判断力の低下のほか、糖尿病や心臓病、肥満、またうつ病のリスクを高めるものとしてその問題を指摘している。
そこで同省は「健康づくりのための睡眠指針2014」を策定。今回はここから“良い睡眠のためには環境づくりも重要”という提言を受け、身近なところから改善できる睡眠環境の工夫について解説していこう。
部屋の照明と色調
まず、部屋の明るさ度合いと睡眠には深い関係がある。というのも、目から強い光の情報が入ると、脳内の体内時計や自律神経の中枢に伝達され、交感神経の働きが活発に。その結果、脳が覚醒してスムーズな入眠が妨げられてしまうのだ。
具体的な数値としては、入眠時に望ましいとされる照度が0.3ルクス。参考までに、月明かりが1ルクス、星明かりは0.1ルクスとなる。これに対して一般的な室内照明は数百ルクス程度、コンビニの照明に至っては2500ルクスほど。
夜に分泌される“睡眠ホルモン”のメラトニンは500ルクス以上の光で分泌が抑制されるため、寝る直前の行動にはくれぐれも注意しよう。
また、照明の色調も見直したいところ。スマホやPC、また太陽光からも放たれるブルーライトは睡眠の妨げになることで知られるが、寝る3時間ほど前からこれを避けてオレンジ色の光を浴びると、睡眠の質が高まることが複数の研究で明らかになっているのだ。
スマホの場合は、背景色を暖色系やブラックに変えるのもひとつの方法。そのうえで、最低でも寝る1時間前には徐々に照明を落としていけるのが理想だ。
睡眠の環境で必要なこと
眠りを誘うのは、ホテルにあるような暖色系の照明。キャンドルの光もいい。寝室のインテリアは原色を避け、ベージュ系やアースカラーなどの淡い色を取り入れよう。
温度・湿度の設定
まず寝室の温度について。複数の研究で、高温・低温いずれの環境でも覚醒が増え、深い睡眠が減少すると報告されている。夏場はエアコンを26~28度に設定し、冬場でもできれば16~19度は欲しいところだ。
また、見逃しやすいのが湿度。夏の寝苦しさの原因でもあるため、寝る前は50%前後に除湿しておくといいだろう。逆に乾燥しやすい冬は加湿が必要なことも。その場合も湿度は50~60%が一つの目安になる。
寝具とナイトウェア
カラダを支えるマットレスも、その種類はさまざま。ある研究データに基づく報告によると、カラダが沈みにくい高反発のマットレスは、睡眠時間が長い・歪みが強い・運動不足といった人に適しているのだとか。
反対に低反発の素材は、睡眠時間が短め・運動習慣がある人向きだという。いずれにしても、カラダが沈みすぎないものを選ぶのが重要だ。
続いて枕選びのポイントについて。基本的には後頭部から首、背中の上部に凹凸がフィットし、また中央は沈んでサイドが高いものが良いとされるが、体格には個人差があるもの。特に枕やマットレスは購入前に実際に試して、自分にしっくりフィットするものを選ぶように心がけたい。
また最近では、“脳を冷やす”ことで睡眠の質を高めるという枕や、高機能のリカバリーウェアも次々登場。進化するハイテク素材も上手に活用して、眠りの質を高めていこう。
リカバリーウェアで睡眠中に疲労を回復
睡眠中は締めつけがない非着圧タイプのウェアがおすすめ。特殊加工の繊維が血流を促したり、筋肉疲労を取り除くなどで、一般医療機器の認証を受けた製品もある。
復習クイズ
答え:50~60%