真面目な人ほど陥りやすい悪循環。オーバートレーニング症候群とは?
連載「コンディショニングのひみつ」。第56回は「トレーニングと疲労回復」について。せっかくトレーニングを行なっても、疲労の回復が不十分な場合、むしろトレーニング効果や競技成績が低下してしまうことがある。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.863・2023年8月24日発売
「オーバートレーニング症候群」とは?
トレーニングは、日常の活動レベルより大きな負荷の運動をすることで効果が得られるという原則がある(=過負荷の原則)。だが、それに伴う疲労の回復が不十分な場合、むしろトレーニング効果や競技成績が低下してしまうことがあるのだ。
こうした状態を「オーバートレーニング症候群」といい、“過度なトレーニングによって過労状態となり、その結果パフォーマンス低下が伴い、かつ短期間の休息によっても回復しなくなった状態”と定義されている。
そもそも生理学的にはカラダが正常な状態に回復するまでに段階があり、またトレーニング後の休息をしっかり取ることで、トレーニング前よりもパフォーマンスが高い状態になる「超回復」という現象が起こる。
これを「ファンクショナル(機能的)オーバーリーチング」といい、2、3日程度の休養で超回復ができる望ましいトレーニングの状態だ。
一般のトレーニーでもなる可能性がある
一方で回復に数日から数週間かかる状態を「ノンファンクショナル(非機能的)オーバーリーチング」、さらにこれが数か月、場合によって数年と長期にわたる状態が「オーバートレーニング」と呼ばれるものだ。
つまりオーバートレーニング症候群は数回のトレーニングで急激になるものではなく、続けることで疲労が蓄積し、徐々に回復力が弱まっていくものといえるのだ。
すると普段通りのパフォーマンスを発揮できないばかりか、日常生活でも強い疲労・倦怠感、息切れ、食欲低下、手足のしびれ、体重の減少など、さまざまな身体症状が表れる。
オーバートレーニング症候群で見られる主な症状
長期にわたるトレーニングの結果、慢性疲労や運動能力の低下といった身体症状、または精神的な症状が表れたら、オーバートレーニング症候群の可能性が考えられる。
さらには不眠、抑うつ気分、意欲や集中力の低下といった精神症状が出現することにも留意しておきたい。
ただし、オーバートレーニング症候群は“激しい練習や試合を続けるアスリートだけがなるもの”と考えるのは大きな誤解。
一般のトレーニーにおいても、仕事のストレスや睡眠不足、栄養バランスの乱れなど、日常生活で消耗したうえにトレーニングを重ねることで、慢性的な疲労状態を招くケースが多く見られるのだ。
特に練習熱心で真面目なタイプほどこうした悪循環に陥りやすく、ケガにつながる可能性もあるためくれぐれも注意しよう。
回復に必要なのは、とにかく「休息」
オーバートレーニング症候群は病院での治療で治るものではなく、回復に必要なのはあくまで休息の時間。トレーニングを控えてカラダをゆっくり休め、栄養バランスの取れた食事を意識して摂るようにしたい。
また症状が重くなるほど回復にかかる時間も長くなるため、早期発見・早期対策はなにより重要なポイントとなる。
トレーニングに際しては頻度や強度、時間などの計画を事前にしっかり立て、可能であればトレーナーによる指導のもとで行うことができればよりベストだ。さらに予防のうえで、強い味方となるのがウェアラブル端末。
オーバートレーニングの状態になると心拍数が明らかに上昇し、翌朝に起きても下がらないことが多い。階段の上り下りがつらい、心臓がバクバクしてすぐ疲れるといった人は、ぜひ利用してみるといいだろう。
睡眠の状態、呼吸の回数などもリカバリーの目安となる。日々の変化をチェックしながら、無理のないトレーニングプランの設定に役立てよう。
ウェアラブル端末を体調管理に使いこなす
トレーニング内容に見合った休息をしっかり取ることが重要。睡眠中にも身に着けられるウェアラブル端末なら、翌日の回復具合をセルフチェックすることが可能だ。
復習クイズ
答え:体温