まずは6週間。嬉しい変化が実感できる“ベジ活”の始め方
約10年間、横ばい状態が続いている日本人の野菜摂取量の不足。健康のためにも野菜を増やさないと、とわかってはいるものの、効果的な方法がわからなければやる気は起きないのも当然。そこで、今回は野菜摂取量を増やす「ベジ活」の始め方を解説。まずは6週間からトライ!
取材・文/井上健二 イラストレーション/前田豆コ 取材協力/岩崎真宏(管理栄養士、医学博士、日本栄養コンシェルジュ協会代表理事)
初出『Tarzan』No.863・2023年8月24日発売
国は、健康維持のために1日350g以上の野菜を食べるように推奨している。だが、成人の野菜摂取量は280g前後。野菜不足がいくら叫ばれても、その量は10年ほど横這いを描き、一向に解消する気配はない(詳しくはTarzanWebの記事:なぜ、もっと野菜を摂るが必要があるのか。野菜後進国の日本人が知っておきたいこと)。
今回は、いかにして足りていない70gを補うのか、より具体的な方策について解説していこう。
まずは6週間「ベジ活」を始めてみよう
ダイエットでもトレーニングでも、短期集中の方がやる気は出るもの。ベジ活はずっと続ける一生モノの習慣にしてほしいものだが、まずは短期集中で取り組んでみよう。
管理栄養士の岩崎真宏さんが提案しているのは、6週間(42日間)のベジ活。1日当たり200円かけるなら、8000円ほどで試せる計算だ。
「ダイエットや栄養の研究を動物やヒトでする際、最低6週間続けてから成果を確かめます。ベジ活も、6週間続ければ、何らかの前向きな変化が実感できるようになり、その成功体験が糧となり、以降も野菜をたくさん食べようというモチベーションが高まってくれるはずです」
では、どんなポジティブな変化が期待できるのか。
それには個人差も大きいが、おもな前向きな変化には、便通が良くなる、朝起きたときにカラダが軽い、体重が落ちる…などが挙げられる。野菜が少なくて栄養バランスが乱れていたタイプほど落差を感じ、自覚できるポイントは多くなるだろう。
新たな試みの習慣化には、最低3週間かかるとか。その倍の6週間続けられたら、ベジ活はすっかり生活の一部になっているに違いない。
バラエティ豊かに野菜を楽しむマトリックスを活用する
投資には古来「卵を一つのカゴに盛るな」という教えがある。一つのカゴに盛り、万一落とすと卵が全部割れる。一つの投資先に集中すると失敗時に手痛いダメージを負うから、複数の商品に広く投資してリスクを下げよという戒めだ。分散が大事なのは、野菜投資でもベジ活でも同じ。
野菜は種類により、含まれる栄養素や機能性が大きく異なる。どうせ野菜摂取を増やすなら、特定の野菜だけを食べ続けるのではなく、できるだけいろいろな野菜をバラエティ豊かに食べる分散投資を心がけたいもの。その方が食生活は格段に豊かになるし、飽きずに楽しく美味しくベジ活が続けられる。
そのときに活用したいのは、野菜の「どこを食べるか」という区分と、「何色か」という色合いで分けたマトリックス(下参照)。
野菜マトリックス
葉茎菜類 | 果菜類 | 根菜類 | |
---|---|---|---|
緑 | ホウレンソウ・ブロッコリー・小松菜・キャベツ・レタス・ニラ | ピーマン・枝豆・ゴーヤ・キュウリ | ワサビ |
赤 | 赤玉ネギ | トマト・赤パプリカ | ラディッシュ・レッドビーツ |
黄・橙 | スイスチャード(フダンソウ) | カボチャ・黄パプリカ | ニンジン・ゴールデンビーツ |
青・紫 | 紫玉ネギ・紫キャベツ | ナス | 紫ニンジン |
白 | 白菜・玉ネギ・セロリ・カリフラワー・ニンニク | 白ゴーヤ | 大根・ゴボウ・カブ・レンコン・ラッキョウ |
どこを食べるかという区分には、おもに葉や茎、花蕾を食べる葉茎菜類、果実を食べる果菜類、根を食べる根菜類などがある。
色合いには、緑、赤、黄、橙、紫、青、白などがある。
同じ行と列の野菜ばかりを選ぶのではなく、あえて異なる色と種類をピックアップするように。食卓を多種多彩に彩るように意識すると、ベジ活が単調に陥らず、野菜から摂れる栄養バランスも整いやすい。
できたら国産野菜を選ぶ。それはSDGsにもつながる
旬の新鮮野菜をチョイスするのがベストだが、ベジ活ではカット野菜や冷凍野菜もウェルカム。その際、チェックしたいのは産地。多少値が張るとしても、国産野菜を選ぼう。
「外国産の野菜は、日本まで運ばれる途中でカビが生えたり、虫害に遭ったりしないように、収穫後に防虫剤や防カビ剤などのポストハーベスト農薬が使われます。農薬には残留基準が設けられており、それを超えるものは流通できませんが、長年積み重ねると健康に悪影響を与える心配があります」(岩崎さん)
他方、国内産農産物には、一部の燻蒸剤などを除き、ポストハーベスト目的で使用できる農薬はない。
国産野菜のメリットは他にもある。
野菜は収穫から時間が経つほど、味も栄養価も下がる。産直の国産野菜は美味しいし、栄養価も高いのだ。また、食品の輸送に伴うCO₂排出量などの環境負荷を示すフードマイレージも低く抑えられるから、地球にも優しくSDGs的にも大正解。
ファストフードなどの外食店は、コストを抑えるため、安価な外国産野菜を使うことも多い。せめて自分で野菜を買う際は、カット野菜や冷凍野菜も含め、国産にこだわろう。
コラム:イモやアボカドは野菜なの?
野菜と信じて食べていたものが、実は野菜ではないなんてことも。典型が、イモ類とトウモロコシ。
農林水産省の野菜生産出荷統計では、馬鈴薯(ジャガイモ)、サトイモ、ヤマノイモは野菜の根菜類に分類される。一方、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、イモ類と野菜類は区別されている。
同様に悩ましいのが、トウモロコシ。甘みが強いスイートコーンは、前述の農林水産省の統計では野菜の果菜類に分類される。ただし、通常トウモロコシは米や小麦と同じく穀類。通常の野菜とは違い、栄養素も糖質主体である。
農林水産省のサイトでは、イモ類もトウモロコシも、副菜として食べるなら野菜であり、主食や加工原料として用いる場合は野菜と扱わないとする。玉虫色だが、それに従おう。
果物との区別も悩ましい。農林水産省はイチゴ、メロン、スイカは「果実的野菜」と野菜扱いだが、栄養的には果物。緑色のアボカドを野菜と勘違いする人もいるが、果物だ。