今村大祐さん
教えてくれた人
いまむら・だいすけ/プロウォーキング講師。一般社団法人プロフェッショナルウォーキング協会代表理事。ミラノコレクションなど国内外のファッションショーのウォーキングディレクターや演出を担当。テレビ・雑誌等、多方面で活躍中。近著に『骨格に合わせて歩くだけダイエット「歩トレ」』。
靴底から読み解く、骨格や歩きのクセ
“歩く”という動作について考えてみよう。
まず、その源となっているのが骨盤と股関節だ。骨盤が前方へと動き始めると同時に、股関節を介して、大腿骨が前へと振り出される。膝は曲がった状態からやがて伸びて、末端であるシューズの底が地面を捉える。ここがひとつの大きなポイントとなるのだ。
歩き方のクセは末端である靴底にはっきり表れる。そこで、見ていただきたいのが下の靴底の写真。
これは、ある人が1年近く履いた私物のシューズだ。不思議なことに靴底はどこもすり減っていない!?
いや、使ってすり減らないなんてことはないから、足裏全体が少しずつすり減ってはいるのである。でも、正しい歩き方だと、靴底はこんな感じになる。
アナタの靴底はいったいどんな形状になっているか? ここでは靴底から骨格や歩きのクセを読み取り、股関節に負担をかけない優しくて正しい歩き方を覚えていきたい。ではスタートしよう。
靴底を見れば一目瞭然。歩く際の股関節の負担
上の靴底の写真の靴は、今回取材をお願いしたプロウォーキング講師、今村大祐さんのもの。1年近くも履いているのに、まるで新品のようだ。ただ、こんな人はほとんどいない。
自分の靴底をチェックしてほしい。靴の外側、あるいは内側がすり減っている。いや前が、あるいは後ろがすり減っている。そんな人は多い。
そして、これこそ姿勢が崩れている証しで、歩くごとに股関節に偏った負担がかかっている。ここでは靴底の減りを4種に分けたが、実際はもっと複雑。しかし大きくはどれかに含まれるので、まずは確認しよう。
股関節を守るためには、まず姿勢に気をつける
耳たぶ、肩の出っ張りの肩峰、腰の出っ張りの大転子、膝の横、外くるぶしの少し前が一直線になっているのが正しい姿勢だ。この姿勢から正しい歩きが生まれるのである。下に示した4つの悪いタイプから脱却しなければ、いずれは股関節が悲鳴を上げることになるかもしれない。
4つの靴底別診断
外側がすり減る人は…O脚タイプ
日本人の男性はこのタイプが多い。大腿骨が股関節から開くように延びている。そして、脛にある脛骨はそれを補正するように内側へと倒れる。
すると、当然足の外側で接地しなくてはならなくなるし、蹴り出しも外側でということになる。大腿骨が開いているので、股関節は外側(大転子側)へと引っ張られてしまう。
内側がすり減る人は…X脚タイプ
逆に女性によく見られるのが、こちらのタイプ。大腿骨が骨盤から内側へ向かうように延びている。このため左右の膝が近づく。脛骨はバランスを取るために、外側へと向かっていく。
すると、重心はカラダの内側へと傾き、靴底も内側だけがすり減ってしまう。股関節の内側(小転子側)が大腿骨に当たってこすれる。
後ろ側がすり減る人は…猫背タイプ
デスクワークを主とする人たちに多い。パソコンの画面を見るため顔が前に出て、背中は丸まる。骨盤が後傾することで股関節は前を向く。
そのため、足を後方へ運びにくくなるし、重心も後ろとなり、踵部分だけが減っていく。足を後方へと移す動作のときに、股関節の後ろの部分と大腿骨が当たり、大きな負荷がかかる。
前側がすり減る人は…反り腰タイプ
ヒールを履く女性、あるいは運動不足の人に多い。体幹の筋肉が弱く、背骨のS字カーブの彎曲がひどくなり、それに連なる骨盤は前傾してしまう。
足は前方に運びにくくなり、重心は前方へ。そのため、靴底の爪先部分だけが減ってしまう。足を前方に持っていくとき、大腿骨と股関節の前側が詰まって負担となる。
靴底タイプ別|股関節のクセを正すウォーキング・エクササイズ
自分のタイプがわかったら、それぞれに対応するエクササイズを行おう。行う回数はそれぞれに記した。毎日2週間も続ければ、股関節と脚の位置関係は良好になるはず。そして、プレ・エクササイズとしてぜひやってほしいのが下のトレーニング。
まず、脚を上げて、その後、肩をぐるぐる回す。そして、再度脚を上げる。すると、最初に上げたときより、楽に足が上がるはず。
実は上半身の、たとえばローテーターカフというインナーマッスルと尻の梨状筋などは互いに影響を与え、連動しているのだ。その関連をカラダに覚えさせたい。で、ここからスタートだ。
プレ・エクササイズ|上を動かせば下はより動く
まず、片側の脚をできるだけ高い位置へと上げる。足を下ろして両脚で立ち、肘を曲げて腕を後方から前方へと、円を描くように20回回す。そして、また同じ側の脚を上げる。前よりもスッと楽に、高くまで上がるはず。
O脚タイプ|脚をしっかり閉じ、太腿の内側を鍛える
両脚を揃えて立つ。爪先を外側に向ける。膝を爪先の方向へ向けて曲げていき、腰をしっかり落とす。
爪先はそのままで、左右の膝をくっつけるように内側に寄せる。膝をくっつけたまま、脚を伸ばして立ち上がる。1分間で5~7回、ゆっくりと繰り返す。
ポイント
へそを凹ませる意識で状態をまっすぐに。
X脚タイプ|四股の姿勢から、爪先と膝を内へ外へ
相撲の四股のように、足を肩幅の2倍ほどに開き、膝を90度に曲げて、腰を落とす。腕は肘を曲げて開く。
爪先と膝を内側に向けて動かし、腕も内側へ。次は外側へ。動作中はずっと、爪先と膝の向きが揃うようにする。ゆっくりと内・外を20回繰り返す。
NG
骨盤を後傾させると、股関節が動きにくい。
猫背タイプ|腕と脚を同時に動かし、後方へ引く動作を覚える
片側の脚を伸ばして前方に。反対側の腕も前へ伸ばして立つ。もう一方の手は腰に。腕と脚を同じように前方から後方へと、大きく円を描くように回して元の位置へ。
腕と脚が常に左右対称の位置にあるように注意する。ゆっくりと20回繰り返す。左右行う。
NG
肘、膝で回さない。肩、股関節から動かす。
反り腰タイプ|脚を後ろから前へ、ダイナミックに動かす
爪先を外側に向けて立つ。片方の膝を90度に曲げ、太腿が床と平行になるまで上げる。脚を真横に開く。前に戻したら今度は後方へ。
ここからハードルを跨ぐように、大きく脚を横に上げて前方へと戻して元へ。足を床につけずに10回繰り返す。左右行う。