【棚橋弘至・連載】第27回:「モテたい」に勝る原動力なし。真夏の祭典に向けて筋肥大
新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第27回のテーマは「筋肥大のための原動力」について。
筋肥大の「プラトー」を打ち破るには…
「皆さん、筋肥大してますか?」と「セコムしてますか?」の温度で聞いてしまいましたが、筋肥大したいですよねー。
若干、太ったりもしながら、何年も同じ体型を維持はしているつもりではいます。でも、せっかくハードなトレーニングをしたのであれば、でっかくなりたいわけです。
そう、トレーニング初期は、やったら、やった分だけ、自分のカラダが変化して、鏡を見るのが楽しくなっていたものです。いつからでしょうか? トレーニングが、やっているものの、その一回一回のゴールが近くなってしまったのは…。
トレーニング歴が長くなればなるほど陥りがちな「プラトー」という変化の感じられない期間。「プラトー」とは「平原」という意味で、まぁ、横這いという意味が転じて、ボディビル用語として使われています。
この「プラトー」を打ち破るためには、より明確で、思い浮かべただけで、やる気が湧き上がってくるような目標が必要ですね。
筋肥大のメカニズムは“行うは難し”
さて、その前に「筋肥大」のメカニズムを少し説明しておきましょう。筋肉は筋繊維という細い筋細胞が集まってできています。この筋繊維に、トレーニングで刺激を与えると、その筋繊維の一部が破断されます。
そこに、栄養と休息を与えると、切れる前の筋繊維よりも太くなる。これを「超回復」といい。この繰り返しで大きくなっていくんですね。
しかし! 言うは易し、行うは難し。ほら、棚橋を見てご覧なさい。年間を通じでトレーニングして、15歳から始めた筋トレ歴も32年になろうとしているのに、正解が分からないままで、現在に至っているのです。
深い。沼が深い。筋トレ沼へようこそ。グヘヘ。しかしながら、もっとデカくなりたいとは、ずーーーっと思っていて、それがなかなか叶わない今、悪い意味でトレーニングがルーティンと化してしまっている気がします。
トレーニングの前に帰るべきは自分だった
1番カラダが変化したのは、3月終わりに90キロで入門して、10月にデビューした頃ですね。寮の壁に、雑誌の付録のボディビルダーのポスターを貼っていて「こうなりたい!」と半年で12キロ増量できました。
特に好きだったのは、ドリアン・イエーツ、マーカス・ルール、ナッサー・エル・サンバディ(敬称略)の3人。とにかく、人間離れした大きさが大好きでね。
決して「大きくなる=強くなる」わけではないのですが、自分のなりたいカラダになれてないということは、闘う前に、自分に負けてしまっているということになります。この理論からすると、極端な話、僕は「試合前からもう負けている」ということになっていたのかも知れません。
トレーニングの度に、種目を変え、レップス数を変え、重量を変え、刺激を与えて来たつもりでしたが、その前に、まず変えなければならなかったのは「自分」なのでしょうね。
というわけで、トコトンやってみようと、思います。…いや「思います」ではダメですね。トコトンやります。
筋肥大に繋がる重要なファクターは?
新日本プロレスはこれから下半期に突入し、大阪城ホールでのビッグマッチ後は、ほどなく、真夏の祭典「G1 CLIMAX」が始まります。
まだ、出場すら確定してないですが(2023年6月2日現在)、「ここまで仕上がってる棚橋は期待できる」とかね。自分自身で、出場権を掴み取り、皆さんの期待値も上げて行きます。
と、今回「筋肥大」に繋がるもっと重要なファクターは何か? という感じの内容となりました。さて、皆さんのスイッチは見つかりましたか? トレーニング前に気合いを入れるため、ぜひ、イメージしてみて下さい。
僕のスイッチは「大きくなりたい」「バキバキに仕上げたい」ではなかったことに気付きました。コロナ禍で少し沈んだ「プロレスを盛り上げたい」? もちろん、それもあります。でも1番のモチベーションは何かって?
ええ。それは、ズバリ…「モテたい」「キャーキャー言われたい」それかい!って? まぁ、必要悪ということで(笑)。
棚橋弘至
たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。