慢性的な肩こりをケアする筋膜セラピー&ほぐピラ
慢性的な肩こりには、筋膜の滑走性を回復させる筋膜セラピーと筋肉をほぐしながら鍛えるほぐピラがおすすめ。筋膜セラピーでは肩こりを引き起こす短縮した首前に繋がる筋膜をリリース。ほぐピラでは硬くなった僧帽筋上部、機能が低下した僧帽筋下部をローラーでケアする。
<b>筋膜セラピー</b>:取材・文/オカモトノブコ 撮影/山城健朗 スタイリスト/川合康太 ヘア&メイク/村田真弓 監修/半田学 <b>ほぐピラ</b>:取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/川合康太 ヘア&メイク/齊藤琴絵 監修/星野由香<br /> イラストレーション/野村憲司、今牧良治、武久真奈(以上トキア企画)
初出『Tarzan』No.853・2023年3月23日発売
筋膜セラピーで首の歪みを解消し、負担軽減
半田 学さん
教えてくれた人
はんだ・まなぶ/筋膜調整専門サロン〈TRIGGER〉代表。理学療法士。イタリアにて筋膜マニピュレーション®の国際コース全課程を修了。慢性的な難治症例を多く施術し、専門家や一般への技術指導も行う。
凝りの部分を直接ケアして良くならないのは、首の前が縮んで前方へ引っ張られている可能性大。筋膜ラインの延長線上にある前腕や手の領域も、臨床的なケアではずせない部分だ。
1. 胸鎖乳突筋の付着部をほぐす
横に向くと、耳下から首を斜めに走行する胸鎖乳突筋の下端は、鎖骨の付着部で2つに分岐している。ここに指1本を差し入れて、外側に向かってグリグリとほぐす。左右両側をやってみて、鋭い痛みがある方は特に念入りに。
2. 鎖骨下のポイントをほぐす
鎖骨を3分割して、内側から3分の1にある鎖骨下のポイントを、指2本でグリグリ潰す。鎖骨下の両側にはリンパの通り道が、また左側にはリンパが静脈に合流する静脈角がある。そのため、ここは左右両側をほぐすことを推奨したい。
3.筋膜ラインを前腕から刺激
肘を屈曲し、前腕の外側に盛り上がるのが腕橈骨筋と長・短橈側手根伸筋。この間に指を入れ込み、首の側部からつながる筋膜ラインを左右両側からゴリゴリほぐす。
4.指の付け根をググッと強く
ここで狙うのは親指と人差し指の付け根にある手のツボ・合谷の付近。ただツボ押しとは異なり、人差し指の側面に向かって押し、第1背側骨間筋を刺激する。両側で行おう。
ほぐピラで僧帽筋をほぐして活性化
星野由香さん
教えてくれた人
ほしの・ゆか/パーソナルトレーナー。ピラティスインストラクターをはじめ、多くの資格を持つボディメイクのスペシャリスト。理論と実践を深め、「ほぐし」と「ピラティス」を融合した「ほぐピラ」を考案。予約の取れない人気トレーナーの一人。
重たい頭を支えて、肩甲骨を自在に動かし、上腕と肩甲骨を連動させる肩甲上腕リズムに関わる僧帽筋の働きが落ちたり、硬くなったりすると肩こりは慢性化しやすい。ほぐピラでは特に機能が落ちやすい僧帽筋上部を活性化し、ローラーで硬くなりやすい僧帽筋下部と首すじの胸鎖乳突筋をほぐす。
ほぐピラローラーの作り方
食品用ラップの芯を2枚のフェイスタオルで固く巻き、輪ゴムやヘアゴムで数か所留めて固定。直径8~10cm程度のローラーを作る。
1. 横向きで腕を動かすほぐピラ
❶左側を下にして床で横向きに寝る。左の耳の後ろと左肩の間にローラーを挟む。❷左腕を床でまっすぐ伸ばし、手のひらを天井へ向ける。❸右腕を体側で伸ばし、肩を耳に近づけるように肩をすくめる。
❹肩をすくめたまま、右腕を後ろに引く。❺その姿勢で、4カウントで鼻から息を吸い、8カウントで口から吐く深呼吸を4セット。左右を変えて同様に行う。
2. オーバル&フルムーン
❶肩甲骨の下部(僧帽筋下部)にローラーを押し当てて、床で仰向けになる。❷両膝を曲げて立てる。❸上体を起こし、細長い楕円を作るように両腕を天井へ伸ばす。❹片肘を引きながら、その肘を見るように上体と首を捻り、反対の腕を天井へ伸ばし、僧帽筋上部で肩甲骨を引き上げる。❺その姿勢で、4カウントで鼻から息を吸い、8カウントで口から吐く深呼吸を4セット。左右を変えて同様に行う。❻続いて満月を作るように両腕を大きく広げて同様に行う。
肩甲骨まわりの筋肉
前面
肩甲骨は背中にあるけれど、胸の筋肉や胸郭の筋肉といったお腹側を走る筋肉もその機能に関わっているケースが少なくない。
背面
肩甲骨の動きを左右する筋肉にはアウターの僧帽筋に隠れているインナーマッスルも多い。菱形筋や、棘下筋などのローテーターカフがその代表。