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早くから英語や数学をやらせた方がいい? 子供の脳の正しい育み方【後編】

子供の脳の正しい育み方【後編】

子どもの成長=脳の成長とも言える。脳が育つからカラダが大きくなり、感情が豊かになり、言葉を覚える。勉強やスポーツができるようになるのも脳の発育の延長線上にある。そこで、小児科専門医の成田奈緒子先生に子育てに悩むライター・クロダと編集ホシノが子育てならぬ、“脳育て”の教えを請い、勉強、習い事の取り組み方など気になるあれこれを聞いた。

成田奈緒子 先生

成田奈緒子先生

教えてくれた人

小児科専門医。脳科学者。文教大学教育学部特別支援教育専修教授。子育てを応援する専門家による〈子育て科学アクセス〉を主宰。『子どもの自己肯定感は親のひと言で決まる!』(PHP研究所)など著書多数。

クロダ&ホシノ

話を聞いた人

ライター・クロダは10歳、編集・ホシノは9歳の子育て真っ最中。子どものためにと日々奮闘中だが、「ウチの子、ちゃんと育ってる?」と心配が尽きない今日この頃。

Q1. 運動神経の良さは生まれつきの脳の作りと関係あるのでしょうか?

A. 先天的要因よりも幼児期に手足を動かす機会の多寡が関係するようです

「小さいうちから他の子よりも駆けっこが速かったり、サッカーボールを上手に扱える子はたくさんいます。

なかには遺伝など先天的要因でそうした動きができる子もいますが、カラダの脳が作られる幼児期にたくさん遊んで手足を動かすことで、少し後になってから運動神経が良くなるケースが多いと思います」(成田先生)

小さいうちに運動神経の良し悪しを決めつけるのは早計なのだ。


脳の育ち方

カラダの脳

(脳幹)

大脳新皮質の下にある、脳の芯にあたる脳幹が「カラダの脳」に相当。ホルモンの分泌や呼吸自律神経の調整に加え、睡眠、食欲や情動といった生命を維持する機能を担っている。0〜5歳の時期に規則正しい生活を送ることでここが健全に育つ。

おりこうさん脳

(大脳新皮質)

100億以上の神経細胞が多層状に配列されている大脳新皮質は思考の中枢の「おりこうさん脳」。言語や手作業、学習など高度な機能を担っており、会話や遊びが始まる1歳頃から徐々に育ち始め、6〜14歳あたりに飛躍的に発達する。

こころの脳

(前頭葉)

大脳新皮質の前半分にあたる前頭葉は「こころの脳」。思考や創造性を担う脳の最高中枢で、周囲の環境や状況を認識し、論理思考を使ってその場に合わせた行動をとるなど、社会的でより人間らしい働きを担う。主に10〜18歳あたりに発達する。


「子どもは基本的に飲み込みが早いので、カラダの脳がきちんと育ってさえいれば、おりこうさん脳が育つ6〜14歳の時期に繰り返し練習することで運動の才能が伸びる場合も多いでしょう。

なのでスポーツ好きな子には、あくまで本人が楽しめる範囲でやらせてあげること。カラダが大きくなる成長期に過酷な練習を強いると、ケガのリスクが高くなってしまいますよ」

Q2. 子どもに対してすぐ感情的になってネガティブな言葉を使ってしまいます。どうすれば直せますか?

A. むしろ親のメンタルヘルスの問題。まずはそちらの解決を

子どもがちっとも言うことを聞かない。いつも口酸っぱく言ってるのに! と怒鳴り散らしてはあとで後悔。親なら誰しも身に覚えがあるはず。

「人はメンタルがネガティブな時ほど、他人の悪い部分に意識が向いてしまいます。親の立場からすると、常に子どもに注意を払っているあまり“毎日同じことを言っているのに!”とついガミガミと感情的に𠮟ってしまうのです。こうしたケースでは、子どもではなくまず親のメンタルを整える必要があります

昨今の子育て世代は疲れ切っている。とくに長時間労働や情報過多状態は前頭葉に負荷を与えるため、物事を論理的に捉えられず、すぐ感情的になってしまう傾向がある。

「この悪循環を断ち切るには、親自身が睡眠を毎日8時間程度確保して心身の疲れをしっかり抜くこと。あとはストレスに適切に対処することも必要で、趣味を持ったり、自分なりのリラックス方法があればそれに没頭する時間を確保しましょう」

常に自分がハッピーでいること。この心がけも大事な子育てのうちだ。

ネガティブな感情は子どもに向けず、まず自分で対処する。

ネガティブな感情は子どもに向けず、まず自分で対処する。

ネガティブな感情が子どもの認知にどう影響する?

ネガティブな感情は認知面にも悪影響。そんな論文を2016年、静岡大学(当時)の中道圭人氏が発表した。

小学生を対象に、映像を使ってネガティブな刺激を与える実験を行ったところ、ネガティブな情動が強く生じた場合、その児童の学習活動や課題の遂行が2学年分低下する可能性が示された。

ネガティブな情動が生じた後にポジティブな出来事を想起させても、感情の抑制力低下が一定時間続いたという他の研究も。ネガティブさが感情を抑えにくくするのは子どもも大人も同じ。上手にストレスと向き合おう。

Q3. 将来を見据えて、早くから英語や数学をやらせた方がいいですよね?

A. 親も一緒に楽しんでできることでないと、伸びる可能性は低いです

自分ができないことを子どもにやらせすぎるのは考えもの。

自分ができないことを子どもにやらせすぎるのは考えもの。

いずれはわが子も経験することになるであろう受験。さらにはグローバルな子に育てるべく、早いうちに英語や数学などに慣れさせたい。これもひとつの親心である。

「ただ子どもにやらせるだけでは、高い費用をかけて塾に通わせるなどしてもなかなか伸びないでしょう。英語にせよ数学にせよ、親が一緒になって英会話を楽しんだり、問題を解いたりするのであれば、子どもはポジティブに取り組めるので、相乗効果でどんどん伸びていくはず。親が楽しめない勉強を子どもに押し付けても楽しめるはずがありません」

英語については、海外のドラマや映画、曲の歌詞をスムーズに聞き取りたかったり、「あの国の人と話したい」といった情熱があればさらなる成長が期待できる。つまり本心から上手になりたいと望むことが「英語脳」を育む一番の糧となるのだ。

また小さいうちから「数学脳」を育てるには、速さや正確性を重視するのではなく、日常生活でアナログ時計で遊び感覚で時間の概念を学んだり、お金を使って大きな数字の単位を教えるのが効果的だという。

Q4. うちの子天才かも!? 特別な才能を伸ばすには?

A. 得意分野だけ偏って伸ばすのはあまりオススメしません。まずは社会性を育てましょう

脳を育てるというと、勉強や音楽など特定の才能を伸ばすイメージを抱くパパ、ママも多いのでは?

「例えば自分の子がピアノを少し上手に弾けたら、実力を開花させようと親が熱心になる気持ちはわかります。でも子どもは幼児期ほど何でも吸収する特性があるので、それは天才なのではなく、才能があるように見えるだけという可能性も多分にある。

才能ばかりに目を向けて、この時期に成長するべきカラダの脳を育まないのは本末転倒ですし、挫折したときのリスクも大きいです」

とくに0〜5歳の間は毎日しっかり睡眠をとり、きちんと食べ、カラダを動かすことが何よりも大事。その基本を疎かにして習い事や知識の詰め込みに没頭すると脳が健全に育たず、周囲とうまくやれなくなるなど、社会性が欠落した子どもになる恐れがある。

才能伸ばしに熱心になるのもほどほどに!

才能伸ばしに熱心になるのもほどほどに!

Q5. 子どもはすでに9歳。脳の育て方に失敗してきたかも…これからでもリカバーできますか?

A. 大丈夫、いくつになっても育て直しは可能です

何歳からでも脳は育つ。焦らずじっくり子どもと向き合おう。

何歳からでも脳は育つ。焦らずじっくり子どもと向き合おう。

「おりこうさん脳が発達し、こころの脳の発達が迫った8歳頃は、脳の神経細胞をつなぐシナプスが最も多く作られる時期。ここまでにある程度人間としての土台が作られ、脳の発育はひとつの節目を迎えます」

つまり9歳以降はカラダの脳もこころの脳も育て直せないってこと?と思いきや、さにあらず。

「脳には可塑性があり、正しい刺激を与えれば高校生からでも作り変えられます。発達障害など脳の機能がアンバランスな子どもを診察すると生活習慣が乱れているケースがほとんどなのですが、十分な睡眠時間を確保し、早起きを心がけ、3食きちんと食べる生活を取り戻せば、メンタルはみるみるうちに改善します」

子育ては最初が肝心、と決めつけるのではなく、やり直せると考えればそう焦る必要はない。親自身も含め、生活習慣の見直しから始めよう。

取材・文/黒田創 イラストレーション/川崎タカオ 監修・取材協力/成田奈緒子(文教大学教授、医学博士)

初出『Tarzan』No.850・2023年2月9日発売

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