40代以降は日常動作で起こることも。膝の「半月板損傷」
連載「コンディショニングのひみつ」第43回。膝関節の障害と、そのコンディショニングについて解説するシリーズの5回目は「半月板損傷」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.850・2023年2月9日発売
膝関節の安定や衝撃吸収に不可欠な半月板
膝関節の障害で、「半月板損傷」という名を耳にしたことがある人も多いだろう。今回はスポーツ障害としても知名度の高い、この膝のコンディショニングについて解説しよう。
半月板とは脛骨上面を覆うように付着し、おもにコラーゲンによって構成される線維軟骨のこと。
脛骨と大腿骨との間、つまり膝関節の内側・外側それぞれにあり、アルファベットのCの形で膝にかかる荷重を分散したり、衝撃を吸収したりするほか、関節の位置を安定させる働きも持つ。
常日頃から負荷がかかりやすい膝関節において、クッションかつスタビライザーという役割を担う、きわめて重要なパーツといえるのだ。
半月板損傷が起こりやすいスポーツは?
この半月板には、体重が乗った状態から膝に過度な回旋力(=ひねり)が加わったり、衝撃が同時に加わったりすることで損傷が起きやすい。
スポーツでは球技系に多く発生し、例えば切り返し動作の多いサッカー、タックルほかの衝撃が加わるラグビーなどがその代表例だ。またバレーボールやスキーなど、ジャンプから膝をひねった状態で着地することも発症のきっかけとしては多い。
こうしたスポーツによる外傷では前十字靱帯損傷を併発することも多く、また若年層における半月板損傷は、前十字靱帯損傷に次いで多いスポーツ障害だという報告もある。
一方、半月板は加齢によっても傷つき、変性しやすくなるという側面も。40代以降は軽いケガや日常動作で微妙な外力が加わることで損傷(変性断裂)する非外傷性のケースも見られるため注意が必要だ。
初期には選択肢のひとつとなる運動療法
症状の表れ方は人によりさまざまだが、膝を曲げ伸ばしづらくなる、痛みや引っかかり感、コキッというクリック音がするなどがある。
ひどい場合は膝に水(関節液)が溜まる、急に膝が動かなくなるロッキング症状が出現するなどで、歩けないほどの激痛を伴うこともあるのだ。
治療では、初期の有効な選択肢のひとつとなるのが運動療法だ。さらに言えば、スポーツ障害は過度に負荷のかかる動作の積み重ねで発症するうえ、半月板損傷は将来的に変形性膝関節症を招くリスク要因ともなりかねない。
そこでここからは原因となる動きのクセを取り除き、膝関節の負担を軽減する意味でも推奨されるトレーニングを紹介していこう。
① スプリットスクワット
目的は、膝のひねりグセを解消して関節への回旋ストレスを減らすこと。
爪先と膝を同一の向きに保つための太腿まわり、臀部の筋力を全方位的に鍛えつつ、足首と膝、股関節を機能的に働かせる連動性が身につけられる。
脚を曲げる際は、膝が爪先より前に出ないようにすることが効かせるポイントだ。
② ゴムバンドアブダクション
脚を横に開く動きによって、臀筋群を強化するトレーニング。
股関節の稼働性を高めることで、結果的に膝関節への負担を減らすことができるのだ。左右交互に踏み出すようにすれば狭い場所でも行えるので、ぜひ気軽に実践してみてほしい。
復習クイズ
答え:回旋