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脚の静脈がボコボコと浮き出る「下肢静脈瘤」の原因と対策

下肢静脈瘤

直立二足歩行の宿命なのか、ヒトの心臓は高い位置にあり、運動不足などで脚の動きが乏しくなると、静脈血は淀みがちになり、逆流防止弁が壊れ始める。それ自体、深刻な病気ではないのだが…。

脚の血管がボコボコと膨らむ下肢静脈瘤

若い時は目立たなかった脚の血管が、年とともに青く透けて見え始めたりボコボコと膨らんで蛇行したり。中高年の脚にしばしば見られるこうした異常が下肢静脈瘤かしじょうみゃくりゅう)。

下肢静脈瘤の脚に起きていること
下肢静脈瘤

脚の静脈には血液を心臓に戻す役割があるため、起立時に逆流を防ぐ「ハ」の字形の弁が中にある。深部静脈と表在静脈があるが、下肢静脈瘤は表在静脈の弁が壊れ、きちんと閉じず、静脈に血液が溜まり、コブのように膨れる病気だ。

下肢静脈瘤

自分の脚の後ろを観察するには鏡が必要。立ち上がって1~2分たつと静脈が膨らみ、見やすくなる。細い静脈瘤は皮膚から隆起することなく、静脈が赤くクモの巣や青く網目のように見える。脚の付け根の静脈弁が壊れた表在静脈の静脈瘤は、静脈が膨らんでコブになり、ふくらはぎに凹凸ができる。

見た目で不安をかき立てられるが、急いで対応を迫られるほどの痛み、不快を伴うことが少ないため、つい放置されがちになる。

自分の脚をじっくりと見る機会は意外と少なく、外見の変化に気付かないままにだるい、疲れやすいなど脚の軽い不調から始まっている場合もある。下記のセルフチェックを行ってみよう。

こんな変化があったら要注意
  • 夕方になると脚が疲れ、重だるくなる
  • 脚がむくんでいる
  • 寝ているときに脚がつることがよくある
  • 脚がほてる
  • 脚に湿疹やかゆみがあり、
  • なかなか治らない
  • 脚にしみや色素沈着が目立つ
  • 脚の皮膚が硬くなっている
  • 脚の血管が浮き出している
  • 脚にクモの巣状に細い血管が見える
  • 近親者に下肢静脈瘤の人がいる

上記のような自覚症状が2個以上あれば下肢静脈瘤の可能性がある。4個以上の人は血管外科(または心臓血管外科)を受診するのがお勧めだ。

出典/『下肢静脈瘤のセルフケアと日帰り手術』(広川雅之監修、自由国民社)

いったんできた下肢静脈瘤は自然治癒することはなく、高齢化も影響して、昨今、患者はじりじりと増え続けている

50代以降は6割が下肢静脈瘤あり
下肢静脈瘤 グラフ 50代以降は6割が下肢静脈瘤あり

数値は医療機関を受診した患者数に過ぎず、いわば氷山の一角。自然治癒しない病気であり、治療を受けない限り、患者はこの統計調査の数値の中から“卒業”することはないため、高齢化の進展に伴い増加の一途だ。出典/『患者調査』(平成29年傷病分類編)厚生労働省

下肢静脈瘤が疑われる人の性年代構成比
下肢静脈瘤 下肢静脈瘤が疑われる人の性年代構成比 グラフ

代表的な3症状(①血管が以前と比べ透けて見える症状、②血管が浮き出たような症状、③血管にコブのようなものができる症状)のいずれかを経験した人の比率を集計。圧倒的に女性が多く、壮年期には横ばいだった男性は60代から急増する。出典/『足の不調と疾患/下肢静脈瘤に関する意識調査2021』【調査結果資料】(日本メドトロニック)

加齢の影響で静脈に何が起こる?

血管といえば、何度となく至言「人は血管とともに老いる」を耳にしてきたことだろう。だが、これは一般的に動脈硬化への警鐘。静脈は動脈のように加齢に伴って硬化はしない。

では、加齢に伴い静脈に何が起こるのか?

心臓の拍動によって力強く押し出される動脈血とは異なり、静脈血は勢いが穏やかで、静脈圧は動脈圧よりもずっと低い。

心臓の駆動力はほとんど及ばず、重力に逆らって静脈血が足先から心臓に戻るには、脚の筋肉が収縮して血管を圧迫し、押し上げたり、呼吸による胸郭内の圧変化などの助けもいる。

また、静脈内部には逆流を防ぐがある。こうした仕組みと働きがあればこそ、静脈血は心臓に戻れるのだ。

ところが、立ち仕事座ったままの作業、あるいは運動不足が続くと脚の筋肉が働く機会が減り、静脈血の還流が悪くなる。脚の静脈に血液が溜まりがちになると、やがて逆流防止弁が壊れる。

動脈と違い、静脈には逆流防止弁がある
下肢静脈瘤

動脈は1層の内膜を平滑筋と弾性線維からなる厚い中膜がしっかり取り囲み、その外側に結合組織でできた外膜がある。一方、高い血圧を受けることの少ない静脈は、中膜の平滑筋や弾性線維が貧弱で薄い。内膜から突き出た半月状の静脈弁(逆流防止弁)が特徴的だ。

1か所弁が壊れると、逆流してくる静脈血によって下の弁に負担がかかり、連鎖反応的に下に向かって弁が壊れていく

脚の静脈は深いところを通る深部静脈と、皮膚の下の浅いところを通る表在静脈からなる。このうち表在静脈にトラブルが起こったのが下肢静脈瘤。浅いところに起こるので、まず見た目の変化が目立ち、その後に不快な症状が顔を出す。

症状が似た危険な病気に注意

血管の病気と聞くと、血栓が脳や心臓、肺に飛んだり、突然死を招くのでは?と恐れたり、治療が遅れると下肢切断になるのでは?などの不安を訴える人がいる。

だが、血栓や下肢切断は他の血管の病気の話であり、下肢静脈瘤にそのような恐れはない

ただし、症状がよく似た病気は多数ある。たとえば脚のむくみは下肢静脈瘤だけでなく心臓や腎臓の病気でも起こるし、こむら返りは脊柱管狭窄症や加齢でも起こる。症状が急に出た場合は、早めに医療機関を受診した方がいいだろう。

下肢静脈瘤と似た症状の病気はこんなに!
下肢静脈瘤

内科系疾患や骨、関節の病気から脚に症状の出ることがある。むくみには加齢、体質、生活習慣なども影響するが、重大疾患が隠れていることもある。なお下肢静脈瘤だけで痛みを感じることは少ない。出典/前出(参考文献)

症状が苦痛なら手術も選択肢に

下肢静脈瘤と診断がつき、軽症~中等症なら、まずは弾性ストッキング運動療法などの保存的治療で一定の効果が期待できる。

弾性ストッキングは脚を締めつけ、静脈血の還流を助ける設計となっている。市販品と医療用があり、効果の高い医療用は医療機関でしか扱っていない。担当医と相談して、症状に合うものを選ぼう。

こうした保存的治療では十分に症状が改善しなかったり、弾性ストッキングを一日中ずっと穿くのはつらい場合に、初めて手術が選択肢となる。つまり、すべての下肢静脈瘤の患者に、手術が第一選択肢“ではない”のだ。

受診の際に、手術ありきで治療方針の説明を受けたら、その場で受け入れてしまうことなく、他の専門医によるセカンドオピニオンも受けておくといいだろう。

現在、手術は大きく分けて①ストリッピング手術②血管内焼灼治療③接着材による血管内塞栓治療の3種類がある。どの手術でも逆流していた血流はなくなり、静脈血の運搬は他の正常な静脈に任せることになる。それだけの余裕が、下肢の静脈にはある。

いずれの手術も保険診療で日帰り手術が可能だが、患者のカラダへの負担は①から③の順番で軽くなっていく。現在の標準的な治療は、患部の静脈をレーザーや高周波で焼いて塞ぐ血管内焼灼治療だ。

保険適用後、レーザーや高周波による血管内焼灼治療に人気が集中
下肢静脈瘤

硬化剤を用いる硬化療法は麻酔が不要でカラダへの負担が軽く、高齢者や心疾患のある人にも好適。血管内接着材治療では局所麻酔をして、静脈内に挿入したカテーテルを通じて医療用接着材を注入して静脈を塞ぐ。血管内焼灼治療は静脈内にカテーテルを挿入し、広範囲の局所麻酔をしたうえで、レーザーまたは高周波(ラジオ波)で血管の内側から焼いて塞ぐ方法。ストリッピング手術は全身麻酔や脊椎麻酔を用い、静脈内に細いワイヤーを通し、ワイヤーごと静脈を抜去する方法。通常は入院して行う。根治治療としての有効性は高い。出典/『知ってください下肢静脈瘤のこと』(監修/広川雅之、コヴィディエンジャパン)

現代人の脚に下肢静脈瘤が増えている背後には、明らかに運動不足があるだろう。

保存的治療で推奨されるような運動は症状の改善のみならず、健康の維持にも役に立つ。まずは立ったまま、座ったままの生活習慣を見直し、日々せっせと四肢を動かそう。

午後~夕方に悪化する下肢のむくみ予防にも
下肢静脈瘤

出典/前出(参考文献)

軽度~中程度の静脈瘤はセルフケアにより改善し、習慣化すれば予防にもつながる。淀みがちな静脈血を心臓に戻すには逆立ちが手っ取り早いが、できる場面は限られる。

着席しての仕事中なら、背を椅子に預け、左右の足で交互に逆回転エアペダリングがお勧め。膝を胸元まで上げたら、踵からゆっくり着地。左右5回ずつを3セット。膝などに痛みがあるときはNG。

人目を気にしなくて済む環境なら、仰向けメニューは血液が心臓に帰りやすい。両手足を天井に垂直に突き出し、緩めた手先、足先をぷるぷる揺する。60秒を1日3回。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/横田ユキオ 取材協力・監修/広川雅之(お茶の水血管外科クリニック院長、日本静脈学会理事、日本脈管学会評議員、日本血管外科学会評議員、医学博士) 参考文献/『下肢静脈瘤のセルフケアと日帰り手術』(広川雅之監修、自由国民社)

初出『Tarzan』No.848・2023年1月4日発売

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