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日本人の2人に1人が罹患。がん予防のための最新知識

日本人の2人に1人が罹患。がん予防のための最新知識

日本人の2人に1人は罹患し、我々にとってもはや他人事ではない“がん”。正しくビビりつつ備えたい。がん予防の第一歩である、検診の最新常識はしっかりと押さえておきたい。

日本はがん検診後進国である

国立がん研究センター・がん対策研究所検診研究部長の中山富雄先生によれば、「日本のがん検診の受診率は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最低レベル」だという。

その理由のひとつは日本が世界に誇る国民皆保険制度

保険証一枚あれば必要な医療サービスが受けられる安心感から、がん検診から遠ざかってしまう傾向がある。万全の医療制度が仇になるという皮肉な話。

「といっても職場では毎年健康診断があり、オプションでがん検診も受けられる環境。でも最も問題なのはリタイア後の男性で、住民検診の情報を知らずに放置し、がんのリスクを高めてしまうこともあります。

夫婦仲がいい男性は奥さんに促されて検診を受けるケースが多いことがアンケート調査で分かりました」

リタイア後の夫婦仲の良し悪しはがんのリスクにも影響するのだ。

ちなみに「健診」は一般的な健康チェック、「検診」はがんなど特定の病気の可能性を確認する検査。違いを理解し、健診だけ受けていてもがんは回避できないことも心しておこう。

50~69歳の女性の乳がん検診の割合

日本はがん検診後進国である 50~69歳の女性の乳がん検診の割合

欧米諸国が7割以上なのに比べ、日本の受診率はわずか4割。このグラフにはないが、高福祉・高負担の国、フィンランドの受診率は82.6%!

OECD, OECD Health at Glance2015, Nov2015より

あらゆるがんに検診は必要なのか?

日本人の2人に1人が患うといわれるがん。それなら高額な人間ドックですべてのがんの早期発見に努めるべきかというと、さにあらず。

「WHO(世界保健機関)の検診の要件のひとつは“その病気が多いこと”。そういう意味で、肝臓がんや腎臓がんは罹患者が少なく検診が空振りに終わる可能性が高いのです」

というわけで、現在厚生労働省が推奨しているがん検診は下の表に示した5つ。罹患者数が多いがんだ。

国が推奨するがん検診
臓器 年齢開始 検診間隔 方法
子宮頸 20歳以上 2年に1度 子宮頸部細胞診(医師が採取)
40歳以上 2年に1度 マンモグラフィー
大腸 40歳以上 毎年 便潜血検査
50歳以上 2年に1度 胃X線・胃内視鏡
40歳以上 毎年 タバコを吸う:胸部X線+喀痰細胞診
タバコを吸わない:胸部X線

検診を行うことによる利益が確実で不利益が利益に比べて小さいこと、医療資源が充足していることなどを検討し、上の5つの検診が推奨されている。

また、なかには見つけなくてもいいがんというものも存在するという。

「たとえば前立腺甲状腺がんは見つけようと思えばいくらでも見つかるがんで、しかも進行がとても遅い。存命中に悪さをするほど大きくならないことが多く、経過観察が勧められるので、あえて早期発見、早期治療をする意味がないと今では考えられています」

がんは5年以内に命に関わるものとそうでないものがある。

まずは5つ(男性は3つ)の検診を定期的に受けることががんから命を守る基本。正しく備えれば憂いなし。

部位別がん罹患数

部位別がん罹患数 グラフ

対10万人比にすると1桁の数値になる肝臓がん腎臓がんは検診を行っても早期発見の可能性が低い。女性で最も罹患数が多いのは乳がん、次いで大腸がん

国立がん研究センター 全国がん登録罹患データ(numberシート)2019年より

偽陽性でQOLが低下することもある

検診を受けることで不利益を被る一面があるというケースも紹介しておこう。

実はがん検診を受けて最終的にがんと診断される人はそれほど多くない。日本対がん協会のデータによれば、大腸がんの検診受診者1万人のうち、実際の罹患者は計算上17人程度だという。

「がんの要精密検査と言われてがんではなかったという人は偽陽性に当たります。性格によっては偽陽性者の方が実際のがん患者よりQOL(生活の質)が低下することが分かっています」

性格による検診後のQOLの違い
性格による検診後のQOLの違い

乳がんの精密検査診断後のQOLの推移。不安気質が弱い人はがん患者と偽陽性患者、ともに変化があまりない。不安気質が強い人はがん患者より偽陽性患者の方がQOLが低下。AFW van der Steeg, British J Surgery 2011

不安気質が強い人はがんの精密検査で「異常なし」と言われても医師が噓をついているのだと疑心暗鬼になる。同じ不安気質が強い人でもがんと診断され病院で治療を受ける方が安心感を得られるそう。

「がんと言ってほしくて病院を転々とする偽陽性の人もいます。なかには心の病になる人も。検診する側は偽陽性を減らす形でパフォーマンスを上げなければならない。でも逆に偽陽性を下げすぎると今度は見落としに繫がる。難しいところです」

がんのリスクファクターを探れ

がんはプログラムエラーによる遺伝子の突然変異。加齢で細胞の再生回数が増えればそのリスクも高くなる。つまり、超高齢化社会のニッポンでは誰がいつなってもおかしくない。

ならば自助努力で予防に繫がることがあるなら着手しておきたい。

男性が生活習慣や感染でがんになる確率は43.4%(女性は25.3%)。大きな原因は喫煙と感染で、その他の影響は比較的小さいとされている。

日本人男性のがんの要因
日本人男性のがんの要因

肺、食道、咽頭がんなどの原因となる喫煙は最もがんのリスクを高める。ピロリ菌や肝炎ウイルスなどの感染は2位。3位は飲酒でこちらは口腔、咽頭、食道、肝臓がんの原因に。Inoue M,et al. Burden of cancer attributable to modifiable factors in Japan in 2015. Glob Health Med. 2022; 4(1)26-36より

「最近では喫煙率の低下で肺がん自体、減っています。またヘリコバクター・ピロリ菌の感染が減ったことで若い人の胃がんの数も低下しているのが実情。

一方、牛・豚・羊などの赤肉や加工肉は大腸がんのリスクを、成人後の肥満は大腸がんや乳がんのリスクを高めることが分かっています。主に肉類でタンパク質を摂ることが多い人は相対的に大腸がんのリスクが高いと考えられます」

タンパク源として魚も取り入れ、ウェイトコントロールを抜かりなく。

コラム:血液1滴でがんが分かる!の真偽

「血液1滴でがんを検出する技術を開発しました!」

えっ、マジですか!? とかく時間がかかるがん検診。それに比べて血液の少量採取ならかなり簡便。しかも精度の高い検査とあれば試してみたい、というのが人情だ。

「エリザベス・ホームズ事件というアメリカで本当にあった話があります。彼女は血液1滴で240種類の検査が行えるマシンを開発し、米国最大のスーパーマーケットにクリニックを併設しました。ところが実施された検査は15種類でしかも血液を水で薄めて測定していたのでとんでもない検査結果に。

詐欺罪で有罪となったのです。コロナ禍もあり、世界的に血液や尿1滴で病気を調べるという流れになっていますが、まだあくまで研究途上。臨床現場に活用する段階ではありません」

「○○1滴」は将来に期待しよう。

取材・文/石飛カノ 中山富雄(国立がん研究センター・がん対策研究所検診研究部長)

初出『Tarzan』No.847・2022年12月15日発売

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