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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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AI医療、ロボット支援下手術、遺伝子治療、再生医療など、ひと昔前には夢のようだった医療技術も日進月歩で実用化が進んでいる。そこで今回はもしもの時の安心のために知っておきたい最先端医療の実態を紹介しよう。
目次
世界的に進む高齢化とネットに溢れる健康情報の多様化、さらには医療従事者不足。この状況に対応するべく人工知能(AI)を用いた「AI医療」が注目されている。
「そもそもAI医療の躍進は画像診断から始まりました。このためアメリカでも日本でも国から認可されている医療AI機器は画像診断支援に関するものが多いんです」
と言うのは、データサイエンスに基づく先端医科学技術の研究開発に携わる岡本将輝先生。画像診断支援とはX線やCTなど患部の画像をAIが分析し、より早く正確な診断に結びつけるシステムのこと。
「AIが指摘する病変を参考に、人間の医師が責任を負う形で読影をする。人間の場合は当直明けの疲労やストレスなどで読影の精度にどうしてもバラつきがありますが、AIは常に精度が一定。医師にとっての重要なセーフティネットとなる可能性はあります」
日本国内でも複数の企業が薬事承認されたAI機器の普及に努めている。今後AIによる画像診断支援が普及していくのは間違いないという。
「将来的には入院・通院患者のバイタルや検査結果、カルテ記載などをAIが常時モニタリングして病変リスクをアラートするシステムが導入されていくと思います」
患者も医療従事者も大助かり。
医師が内視鏡の画像を見ながらロボットアームに取り付けた手術器具を操作する。2000年目前に登場した手術支援ロボット《ダヴィンチ》は21世紀の最先端医療のまさに象徴。その数々の特許が2019年以降、次々に期限切れを迎えた。
「ダヴィンチのメーカーであるアメリカのインテュイティブ・サージカル社は医療用ロボットの世界シェアの約7割を占めていました。特許が切れたことで世界中のメーカーが参入し現在は激戦状態になっています」
手ブレのない正確な操作で出血量を減らしたり術後の合併症を防ぐというメリットが実証されているロボット支援下手術。その市場は2024年には10兆円規模になるという話。
「今後はロボットによるリモート手術が現実的になっていくことが期待されています。高速通信規格5Gなど遠隔手術の下地が揃ってきたこともあり、オペレーションルームがあれば遠隔操作での手術は技術的に可能。中長期的に見ればいわゆる過疎地域の患者でも経験豊富な医師の手術が受けられると予測されます」
熱いロボット市場、目が離せない。
遺伝子治療とは、もともと遺伝子に異常があり正常なタンパク質が作れないことで起こる難病、または後天的に遺伝子に変異が起こるがんや血管・神経系の病気に対する治療法。
大きく分けて体内治療と体外治療の2種類があり、前者は遺伝子治療薬を直接投与、後者はカラダから取り出した遺伝子を編集して再び体内に戻すという方法だ。
「多くの遺伝子治療は開発途上ですが、全般的にかなり高価です。慢性動脈閉塞症の遺伝子治療薬が投与1回の公的価格(薬価)として60万円、脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬は1回で1億6000万円を超えています。
今後、さまざまなベンチャー企業が参入して治療例も増えていくと考えられますが、低価格化への取り組みも重要になります」
一方で遺伝子解析が一般化するとその人個人に合った最適の治療が受けられるというメリットも。
「従来は病気の種類、性別、年齢などの属性情報を中心に治療法を決めていましたが、遺伝子解析でより効果が高く副作用の少ない治療薬を選べるようになります。“個別化医療”は今後さらに進むでしょう」
ちなみに治療目的の遺伝子解析は保険適用、将来かかるかもしれない病気予防の遺伝子検査は自費診療。
血液型にかかわらず、万人に移植できる「ユニバーサル臓器」が近い将来、実現するかもしれない。
すべての細胞にはHLAという名札のような遺伝子複合体がくっついている。このHLAタイプが一致しないものが体内に侵入すると、異物と見なされ免疫システムが作動、拒絶反応が起こる。ゆえに臓器移植ではドナーとレシピエントの血液型やHLAが適合することが絶対条件。
「それなら拒絶反応を起こさせない、という考えから生まれ、私たちが独自の技術から開発したのがユニバーサルドナーセル(UDC)です」と、再生医薬品の研究開発を行うバイオベンチャー、〈株式会社ヘリオス〉の広報担当者。
自家iPS細胞 | 他家iPS細胞 | UDC | |
---|---|---|---|
免疫拒絶 |
なし |
あり(免疫抑制剤必要) | なし |
製造期間 | 数か月~1年(患者ごとに製造する必要がある) | Ready to use(1ラインでよい) | Ready to use(1ラインでよい) |
コスト | 非常に高い | 低い | 低い |
「細胞を移植するには2つの方法があります。自分の皮膚や脂肪などの細胞を培養する自家移植と、他人の細胞をもとに作ったiPS細胞を用いる他家移植です。
前者は拒絶反応は起こりませんが時間とコストがかかり、後者は拒絶反応を防ぐために長期の免疫抑制剤の投与が必要。UDCは他家iPS細胞のHLAを遺伝子編集で取り除いた細胞です」
つまり、拒絶反応が起こらず、しかも大量に作ってストックしておけば必要な時に誰もが利用可能。
「現在はUDCから膵臓や視細胞などいろいろな細胞に分化誘導させる研究をしている段階です。ユニバーサル臓器というと夢物語のようですが、実現化は見えてきています」
実現化で救える命は格段に増える。
アメリカIT長者の間で俄然盛り上がっているのが老化防止研究。有名どころはグーグルが設立した老化と病気の改善を目指すキャリコ、老化細胞除去薬の開発を手掛けるユニティ・バイオテクノロジーなど。
「アメリカの老化制御やアンチエイジングの研究はかなり進んでいて、薬やサプリメント、デジタルヘルス的なアプローチなどいろいろな手法が提案されています」(岡本将輝先生)
不老不死、まさか実現するのか?
「どのような形であれ、私は50年以内くらいに実現すると勝手に思っています。国内では意識をデバイスに移植して機械の中で意識を持って生き続ける研究をしている大学発ベンチャーもあります。
再生医療でカラダを補塡していく技術も進むかもしれません。いずれにしろ、いつ巨大な技術革新が起こっても不思議ではありません」
取材・文/石飛カノ イラストレーション/イマイヤスフミ 取材協力/岡本将輝(ハーバード大学医学部放射線医学専任講師)
初出『Tarzan』No.847・2022年12月15日発売