日本初の本格的な高地トレ施設
酸素濃度が薄い高地でトレーニングすることで心肺機能や筋肉の機能を高め、運動パフォーマンスを向上させる。アスリートにとって絶好の練習環境が2019年、長野県東御市に登場した。〈GMOアスリーツパーク湯の丸〉である。
北陸新幹線上田駅から車で約40分、一気に山道を上がった標高1735mの湯の丸高原に全天候型400mトラックが設けられ、屋内には水深2mの50mプールが8レーン。本格的なトレーニング室もある。
今まで高地トレーニングの条件(標高1500m以上)を満たした施設は国内になかったため、ここが日本初の本格的施設ということになる。
「私の現役時代はもう少し標高の低い場所でカラダを慣らしてから、海外の標高2000mレベルの場所で高地トレーニングを行っていたのですが、やはり移動が大変でしたし、食事面や費用の問題、異国でのストレスを考えると、東京から比較的近い長野で高地トレーニングを行えるメリットは大きいです。
実際、東京五輪の前には海外渡航ができないなか水泳日本代表のほとんどの選手がここでトレーニングを行いました」
そう話すのはリオ五輪競泳女子200m平泳ぎの金メダリストで、施設のPR大使を務める金藤理絵さん。
「高地トレーニングは1週間程度だとあまり感じられないのですが、2~3週間滞在していると、この酸素の薄い環境でも呼吸が楽になってくる。それはつまり、低酸素にカラダが順応(高地順化)して心肺機能が高まったということになります」
持久力・筋力増加に効果アリ
一体、高地ではどのようなメカニズムで心肺機能が高まるのだろうか。
身体教育医学研究所の研究部長で、同施設にも大きく関わっている半田秀一さんに聞いてみよう。
「人間が低酸素の状況に置かれると、当然血液中の酸素レベルがダウンするため、腎臓で作られるエリスロポエチンというホルモンの分泌が高まって、骨髄にある造血細胞で赤血球が作られ、ヘモグロビン濃度が上昇するなど血液中の酸素の運搬能力が高まります。その結果全身のすみずみまで酸素が行き届くようになり、全身持久力が増加するのです」
さらには、高地で筋力トレーニングを行うと成長ホルモンの分泌が高まり、より効果的な筋力の増加も期待できる。こうしたメカニズムを通じて、高地トレーニングでは体力が鍛えられるのだ。
「2000mクラスの高地だと高山病によって頭痛など体調を崩す人もいるのですが、湯の丸高原の標高であればそうした心配が少ないのは大きなメリット。また30分程度山を下りれば平地トレーニングが可能なので、トレーニングの質と量など、さまざまなバリエーションで練習を行うこともできます。ここはアスリートにとっていろんな意味で理想的な環境といえるのです」
INFORMATION
GMOアスリーツパーク湯の丸
東京から最短2時間半。長野と群馬の県境近くの湯の丸高原に2019年に誕生した日本初の本格的高地トレーニング施設。標高1,735mという最適な環境にあって、海外での練習が不可能だった初期コロナ禍においても、水泳を中心に各種目の日本代表選手がここでトレーニングを行い、東京五輪での活躍につながった。一般利用も可。
- 住所:長野県東御市新張1271。
- HP:https://yunomaru.city.tomi.nagano.jp/