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「食べたい…」はどこから?食欲を左右するファクター3つ

「食べたい…」はどこから? 食欲を左右する3つのファクター

幾度も挑戦するダイエットを阻むもの、食欲。本能だからどうしようもない? いやいやそんなことはありません。敵を知らずして勝てる勝負はない。 痩せたいならまずは食欲の仕組みを理解することから始めよう。

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① 消化管ホルモンが司る「栄養系」の食欲

食事をしてから時間が経ち、血糖値が下がると、の空腹中枢が興奮して食欲がアップ。食事をして血糖値が上がると、脳の満腹中枢が興奮して食欲が抑えられる…。そんな話を聞いたことがあるはずだ。

「しかし、食欲は血糖値のみで決まるわけではありません。現在は、消化管から分泌される消化管ホルモンの働きに注目が集まっています」(京都大学大学院の佐々木努教授)

消化管は、食べ物の消化と吸収のための臓器だが、実は人体最大級のホルモン分泌器官でもある。

小腸の内壁の表面積はテニスコート1面に匹敵する200㎡もある。そこに隙間なく広がる細胞の約1%が、消化管ホルモンを分泌する腸管内分泌細胞(EEC)。12種類以上の消化管ホルモンを出している。

EECの表面には、栄養感受受容体というセンサーがあり、消化管を通り過ぎる食べ物の中身を感知。必要に応じて、食欲や代謝を調節する消化管ホルモンを分泌している。

そもそも“栄養”とは、カラダの環境を一定に保つために、外から何かを取り入れること。栄養のために摂取する“栄養素”を過不足なく取り入れるために備わるのが、食欲だ。その食欲をコントロールするために大きな役目を果たしているのが、消化管ホルモンというワケ。

消化管は食欲にも関わる

消化管は長らく、食べ物の消化と吸収を淡々と担うだけの“受け身”の器官だと考えられてきた。ところが、消化管は食べ物の栄養素の中身に応じてホルモンを分泌し、消化吸収だけではなく食欲にも積極的に関わると判明してきた。 

② 味覚と快感が生み出す「報酬系」の食欲

ひと口食べた瞬間、「味の宝石箱や!」と叫び出したくなり、箸が止まらなくなる…。美食の前には、自制心は無力。ついつい食べすぎる。

この背後にあるのは、脳内の報酬系と呼ばれるシステム。そこで活躍するのは、ドーパミンβエンドルフィンといった快感をもたらす神経伝達物質である。美味しい食事を摂ると、これらの神経伝達物質が分泌されて快感が走るから、もっと食べたいと思う。消化管ホルモンによる食欲調整とは異なるメカニズムである。

この報酬系と深く結びつくのが、感覚。なかでも舌からの情報入力だ

食べ物の味を感知するのは、舌にある味細胞。甘味、塩味、旨味、酸味、苦味という5つの味わいを感知する専門の味細胞が揃っている。加えて近年では、脂質を感知する味細胞も見つかっているとか。

味細胞は、味という化学信号を、電気信号に転換。神経を通じて瞬時に脳へ伝える。その情報を脳が統合して、「美味しい」か「マズいか」を判断するのだ。

そして「これは美味しいぞ!」と感じると、報酬系のスイッチが入り、快感が食欲を暴走させて食べすぎが起こる。この情報の伝達と判断は、消化管ホルモンを介するルートよりも速いのが特徴だ。

風邪をひいて鼻が利かなくなると、何を食べても味気なく感じるように、味覚以外に嗅覚も食べ物の情報を脳に送っている。ただし、嗅覚が食欲にどう影響しているかは、まだよくわかっていないそう。

舌が刺激を感じると食欲につながる

消化管ホルモンだけが食欲を支配しているわけではない。食べた瞬間、舌で感知する美味しさの情報は、脳をビビッと刺激。脳内で快感を促す神経伝達物質がドッと出てきて、「もっと食べたい!」という危険な欲望が次々湧いてくる。

③ リズムを守って整える「予測系」の食欲

食欲の中枢は、脳の視床下部にあり、食欲を司り、栄養素の消化吸収、代謝を整える。「さらに近年、視床下部は経験に基づいた予測、つまり食べ物にありつける“見込み”でも食欲や代謝を制御することがわかってきました」。

そこで活躍するのが、視床下部にある体内時計。ヒトは本来、日中に食べて盛んに活動し、日が落ちたら食事を控えて休息するもの。この切り替えを担うのが、体内時計。体内時計の働きで、日中の同じ時間帯に定期的に食事を摂ると、そのタイミングで空腹が促されるようになる。

このいわば腹時計に従った食事なら、食欲のタガが外れることはなく、消化吸収も代謝もスムーズに進む。だが、体内時計が「寝ろ!」と告げている深夜に食べすぎると、代謝活動は低調なので、体脂肪になりやすい。やはり規則正しい食事が、肥満を避ける第一歩なのである。

予測系は、代謝もサポートする。

糖質を摂ると血糖値が上昇。血糖値を下げるインスリンというホルモンが膵臓から出る。血糖値が上がるまでに15分ほどかかるが、実はインスリンはその前に分泌されて待ち構える。舌で糖質を感知すると「血糖値が上がるぞ」という予測が視床下部に伝わり、血糖値上昇前にインスリン分泌のスイッチを入れるからだ。

この予測を乱すのが、甘いのに血糖値を上げない人工甘味料。マウスに人工甘味料を2日間与えると、事前分泌が消え、血糖値は上がりやすくなるとか。人工甘味料は控えめに。

生活リズムを守って食事を摂ろう

活動と休息、満腹と空腹というオン・オフのリズムを視床下部は記憶する。そのリズムに沿い食べて行動していれば、過食は抑えられるので太りにくい。在宅勤務などでオン・オフが狂うと、予測系が乱れて過食や体脂肪蓄積の恐れも。

食欲を司る脳って?

さまざまな情報を集約し、食欲をコントロールする中枢があるのは脳の視床下部。重さ4gほどの小さな組織だが、ホルモン分泌や自律神経の中枢が置かれている重要な司令塔である。

視床下部の真下には、ホルモンを分泌する下垂体がブラ下がる。この両者をつなげる根元に位置する弓状核(ARC)が、もっと食べるか・食べるのを抑えるかという摂食行動に深く関わっている。

なかでも、もっと食べたいという空腹を司るのは、AgRPニューロンという神経細胞。このニューロンは、脳のあちこちにネットワークを広げ、神経伝達物質によって情報を伝えて、食欲を巧みに制御しているのだ。

食欲をコントロールする脳の視床下部

AgRPニューロンは、視床下部の分界条床核、室傍核、外側野などを活性化。その情報は大脳でキャッチされて、食欲や代謝の調整を進める。分界条床核はストレス下での食行動、外側野は報酬系に関与する。

取材・文/井上健二 イラストレーション/naotte 取材協力/佐々木努(京都大学大学院農学研究科教授)

初出『Tarzan』No.836・2022年6月23日発売

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