痩せ体質になる腸内環境づくりに、食物繊維の“分散投資”

数あるダイエット法の中でも近年メジャーになってきている腸活。腸内に棲む腸内細菌にアプローチすることで痩せ体質に変わるなど、心身に様々なメリットがあることがわかっている。その影の立役者は腸内細菌が作る短鎖脂肪酸。楽痩せを叶えるカギ、短鎖脂肪酸を増やすにはどうしたらいいのだろうか?

取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 取材協力/岩崎真宏(管理栄養士、日本栄養コンシェルジュ協会代表理事、医学博士)

初出『Tarzan』No.835・2022年6月9日発売

食物繊維の分散投資

腸内細菌が作る「短鎖脂肪酸」に注目

カラダの細胞の総数は約37兆個。お腹にはそれを上回る40兆個の腸内細菌が棲んでいる。痩せたかったら、この腸内細菌の力も借りよう。

腸内細菌は、消化吸収されないで大腸まで届く食物繊維を代謝し、短鎖脂肪酸を作る。酪酸、酢酸、プロピオン酸などだ。全身の細胞にこれらをキャッチする受容体があり、素敵な作用を発揮する。

まずは酪酸。酪酸は、交感神経節という場所にあるGPR41という受容体にキャッチされる。交感神経は、全身の代謝を高めるから、酪酸の刺激で交感神経が優位になると、代謝が上がり体脂肪は減りやすい。

次は酢酸。酢酸は脂肪組織にあるGPR43という受容体と結合すると、脂肪組織で体脂肪の合成を抑制。分解を促進してくれる。

そしてプロピオン酸は、食欲を抑えるPYYやGLP-1の分泌を促し、体重を減らす(下グラフ参照)。

短鎖脂肪酸の一種 プロピオン酸 と 食欲を低下させる PYY と GLP-1 の分泌量

短鎖脂肪酸が食欲を抑えるホルモン分泌を促す/肥満の成人60人を対象として、24週間のテストを実施した研究。短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸によって、食欲を低下させるPYYとGLP-1の放出が有意に増えて、エネルギー摂取量が低下することが判明。Chambers ES et al., Gut 2015; 64: 1744-1754

食物繊維摂取のポイントは“分散投資”

ならば、短鎖脂肪酸を増やすには、どんな手があるのだろう。

「数多くの腸内細菌が短鎖脂肪酸を合成しますが、好物となる食物繊維の種類は異なります。そして、どんな腸内細菌が、どのくらい棲んでいるかには個人差も大きい。そこで大事なのは、食物繊維の“分散投資”。

一つに偏らず、未精製穀類、野菜、果物、豆類、海藻、きのこなどから、偏りなく食物繊維を多めに摂るようにしましょう」(管理栄養士の岩崎真宏さん)

便通が整った、便のイヤな臭いが消えたといったポジティブな変化が感じられたら、分散投資が当たり、腸内細菌が元気に短鎖脂肪酸を作り始めた証拠。痩せ始める日は近い。