あらゆる動きの土台である股関節だが、デスクワークや運動不足などで股関節まわりの筋肉の使い方に偏りが生じ、正しく使えていない人は多い。ほどく、ころがす、ささえるの3ステップエクササイズで、スムーズな股関節を手に入れよう!
硬い股関節に3ステップのアプローチ
藤本陽平さん
教えてくれた人
ふじもと・ようへい/股関節ストレッチスタジオ〈Natural Movement〉代表。NSCAパーソナルトレーナーの資格を保持。『一生歩ける! 寝たまま10秒 股関節スローストレッチ』など監修本多数。
脚を前後左右に動かすだけでなく、上げ下げや回す時にも要となる股関節。立体的な動きをスムーズに行える球関節だが、それが叶わないことも。
「座業などで長時間同じ姿勢で過ごしたり運動不足になると股関節周辺の筋肉の使い方に偏りが出てしまいます。また正しく動かせないとケガのリスクも当然高まる。うまく使えていない状態が当たり前になりつつある股関節に、いま一度正しい使い方を覚え込ませることが重要です」
と、股関節に特化した〈Natural Movement〉の藤本陽平さんは語る。股関節が整うとメリットも数知れず。
「腰や膝などの疲労軽減や、ランや筋トレのフォームが改善され運動効率向上、さらに正しく立てるようになるので日常動作も楽になります」
エクササイズの進め方
今回のメソッドは、A、B、Cと全3種類あるセットを1日1つ行うのがルール。いずれも“ほどく・ころがす・ささえる”からなる5種目で構成。
A→B→Cと進むにつれて難度が上がるため、Bが難しければA、Cが苦手ならBに励む。この反復で股関節を理想的な状態に整えていく。
ほどく
足を上げた時や屈んだ時にふと感じる股関節の硬さ。これは普段股関節をうまく使えておらず、血行が滞っていることが一因。筋肉が複雑に入り組む股関節。硬さに起因する詰まりをほどいて、いい血流を取り戻そう。
ころがす
股関節は全方向に動かせる部位だが、普段限られた動きだけだと可動域は狭まり、それにより動きが制限されるという悪循環に。球関節特有の3Dの動きを実践して、股関節の正しいころがりをカラダに記憶させよう。
ささえる
股関節の硬さをリセットして正しい使い方を体感したら、いい状態を定着させたい。そこで重要なのが股関節の動きに関わる周辺の筋肉。お尻や太腿の表層筋と深層筋の両方を強化しカラダを支えられる股関節にしよう。
Aのエクササイズ5種目
お尻回し(左回し・右回し各5回×2セット)
お尻を大きく動かし、股関節の血流アップを狙う。足を肩幅程度に開き、椅子の背もたれに両手をついてカラダを支える。両膝を伸ばしたまま、お尻を左右両方向に回す。エクササイズ前に、お尻を前後・左右に各10往復、直線的に動かしてから行うと、より効果的。
脇腹伸ばし(左右各20秒×2セット)
脇腹が縮むと、股関節の動きも悪化。なのでカラダの側部をストレッチ。真横に置いた椅子の背もたれに片手をつき、反対の手を真上にピンと伸ばして、両脚をクロスさせる。そこから脇腹全体を縦に開いていくイメージで上体を真横に倒し、その状態でキープ。
ハイニースイング(左右各10回×2セット)
脚を前後に振って股関節を動かしつつ、腕も同時に動かして全身の協調性を高める。片脚立ちになり、軸脚の膝を伸ばして背すじを正す。上げた脚の膝の曲げ伸ばしをしつつ、前後に大きく振る。あわせて肘を曲げたまま腕も前後に振る。逆も同様に。
立位・股関節回し(左右各前回し・後ろ回し各5回×2セット)
股関節を開く動作がスムーズに。真横に置いた椅子の背もたれに片手をつき、反対の手を腰に当てる。背すじを伸ばし、外側の脚の膝を曲げて引き上げる。前→カラダの外側→後ろを通るイメージで、膝から動かして股関節を回旋。逆回しも同様に、大きな軌道を意識。
壁ゴリラ(各ポーズ、5秒ずつキープ×2セット)
日常動作には股関節を曲げる動きが多い。臀筋を使って屈むために練習しよう。壁に背を向けて立ったらお尻を壁につけたまま上体を倒し、膝を曲げて手を床につき、お尻を壁から離して、その姿勢のまま腰に両手を当てて、背すじをまっすぐ保ったまま上体を起こす。
Bのエクササイズ5種目
お尻伸ばし(左右各20秒×2セット)
股関節の動きが悪いと固まりがちな臀筋を伸ばす。仰向けになり両膝を立てたら、片方の足首を逆脚の太腿に乗せて、両脚で4の字をつくる。床についている脚の両側に両腕を通して脛の前で手を組んだら、4の字をなるべく保ったまま、両脚を手前に引いてキープ。
踵乗せ倒し(左右各20秒×2セット)
普段あまり行わない股関節を左右にひねる動作を入念に。仰向けになり手を横に開いて、両膝を腰幅に開く。そこから片方の膝の上に逆足を乗せたら、乗せた脚全体の重さで両脚を倒してキープ。両膝を床につけると理想だが、難しい人は可能な範囲で床に近づけよう。
仰臥位・股関節回し(左右各左回し・右回し各5回×2セット)
Aセットで行った股関節回しの発展形。寝た状態で回すことで股関節を外側だけでなく内側にもしっかり動かせる。仰向けになり手を横に開いて、片脚の膝を曲げて上半身に近づける。脚を伸ばした方のお尻を床につけたまま、左右両方向になるべく大きな軌道を通って回す。
膝かかえ(左右各5秒×10セット)
中臀筋が弱いと膝が曲がってきれいに立てず、股関節の安定性も損なわれるため強化したい。片脚立ちになり浮かした脚を両手で抱えたら、軸脚の膝と背すじを伸ばしてキープ。膝を無理に上体に引き寄せず、股関節を曲げて背すじと軸脚の膝を伸ばすことを意識。
棒ランジ(左右交互に計10回)
正しい姿勢を保つのに働く腸腰筋を刺激。腰〜頭より長い棒を(傘でも可)、後頭部と上背部、腰(仙骨)の3点に当ててランジ。後頭部と腰付近で棒を持ち、腰と棒の間が手のひら1枚分になるよう意識したまま、片足を前に出して両膝を曲げ、腰を落とす。
Cのエクササイズ5種目
フィギュア4(左右交互に計5往復×2セット)
股関節を内と外にひねり、左右差も調整。床に膝を立てて座り、足を肩幅よりやや広めに開く。肘を開いて両手を握り、拳を肩付近にセット。顔と胸をなるべく正面に向けたまま膝を左右交互に倒す。動作に慣れるまでは両手をお尻より後方について行ってもOK。
サイドニーアップ(左右各10回×2セット)
太腿に頼らず、また上半身を脱力させたまま、股関節を使って脚を引き上げる練習。うつ伏せで重ねた両手に顎を乗せ、両脚を伸ばしてセット。へそが極力床から浮かないように意識しつつ、膝〜足を床に引きずり上げる。腰の高さまで膝を上げるのが理想。
ゴキブリ(10秒間)
股関節まわりの筋肉を多角的に動かして回旋をよりスムーズに。仰向けになり、足を腰幅に開いたまま膝を曲げて浮かせ、後頭部に手を添えて頭も上げる。膝の位置を固定したまま膝下を左右バラバラに回し続ける。両方向行うこと。余計な力を抜いて、きれいな円を描くよう意識。
フィギュア4 ヒップエクステンション(左右交互に計5往復×2セット)
股関節の自在な動きに不可欠な柔軟性を問われる種目。床に膝を立てて座り、足を肩幅よりやや広めに開く。肘を開いて両手を握り、拳を肩付近にセット。顔と胸をなるべく正面に向けたまま膝を倒したら、臀筋に力を入れて膝立ちに。お尻をついて元の姿勢に戻る。
スケータースクワット(左右各内外各5往復)
股関節の可動域と柔軟性をフル活用。両手を腰に当てて膝を軽く曲げ、背すじを伸ばして上体を前傾。片足を浮かせて後方斜め内側に伸ばして5秒キープ。これを5往復行ったら、後方斜め外側に伸ばして5秒、同様に5往復。軸脚の膝を正面に向けたまま行う。
取材・文/門上奈央 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 監修/藤本陽平(Natural Movement)
初出『Tarzan』No.833・2022年5月12日発売
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