腹まわりを徹底的に絞る! レベル別・高強度ガチトレーニング
腹まわりの脂肪=浮き輪ゾーンは脂肪が重力によって垂れ下がることでできる。筋肉の力でそれに対抗できるようになれば、腹や背中は引き締まっていくのである。ここでは「腹直筋・大胸筋・僧帽筋」にフォーカスした、腹まわりを絞るためのガチトレーニングを紹介する。
取材・文/鈴木一朗 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 エクササイズ監修/清水 忍(IPF代表)
初出『Tarzan』No.829・2022年3月10日発売
浮き輪ゾーンの贅肉とは?
浮き輪ゾーンとは、ヘソと左右の腰骨との間を中心に、腰まわりを贅肉が帯状にグルリと一周する部分(写真上の色で示した部分)。内部には内臓脂肪が溜まり、外側を皮下脂肪が腰まわりを一周するように囲み、溜まった体脂肪が、浮き輪をハメているように見えることから名付けた。
ガチ筋トレで腹まわりがスッキリするワケ
筋力トレーニングでは、脂肪はほとんど燃えない。しかし、とトレーナー・清水忍さんはこう語る。「筋力をアップすることで、浮き輪を消し去ることはできるんですよ」
胴まわりの浮き輪は、脂肪が重力によって垂れ下がることでできる。筋肉の力でそれに対抗できるようになれば、脂肪は引き伸ばされて、腹や背中は引き締まっていくのである。
「同じ体脂肪率でも、筋力がある人とそうでない人では、体型が違う。ここで紹介するトレーニングは高強度なので、すべての人ができるものではない。ただし、少しずつチャレンジしながら続けていけば、必ず見た目は変わってきますよ」
ここでは、腹前面と脇腹、そして背中の浮き輪を消すガチトレを行っていく。さらにラストは、それら3つの最強メニューも取り上げた。まず、自分が取り組むべき部分のトレーニングを週2~3回やって、最終的には最強メニューも併せたい。
トレーニングのやり方
- 気になる部位のトレーニングをチョイス
- 筋トレの頻度は週2〜3回
- 各種目15回行う
- ダンベルを使用する種目は、15回ギリギリ行える重量で
腹を引き締める「腹直筋」トレ
「腹の前面に浮き輪がある人は、まず腹直筋が弱いことが多いんです」と、清水さん。腹直筋は、上部は肋骨と、そして下部は骨盤の底にある恥骨と繫がっている。この筋肉が弱いと、恥骨の位置が下がって、骨盤が前傾する。
すると、内臓が前方へと押し出され、脂肪も手伝って浮き輪が完成してしまう。さらに腹が前に出たぶん、背骨はその重量に耐え切れずに反るので、ますます見た目が悪くなる(下図参照)。
「ポイントは、腹直筋を主とする腹筋群を徹底的に鍛えること。これらの筋肉を強化することで、恥骨を引き上げて、骨盤を正しい位置に戻すことができる。そうすれば、内臓も骨盤に収まるようになり、腹の前面はスッキリしていきます」
レベル① ホバーニーレイズ
一気にパワーを爆発させ、太腿を胸へと引き上げろ
体側より少し広めに間隔を空けて、イス2脚を置く。両手を座面に置いて、脚を伸ばして床から浮かせる。上体を保持したままで、一気に股関節と膝を曲げて、太腿を胸へと近づける。膝を上げたとき、尻が後方に行かないよう注意。
レベル② スパインレッグダウン
ゆっくりとした動作で、床ギリギリまで耐えるのだ
床に仰向けになる。脚を伸ばし、床と垂直になるまで引き上げる。手は頭の後ろに回し、首を起こして、頭を床から浮かせる。腰を床から浮かせないように注意しながら、4秒かけて脚を床ギリギリまで近づけて、1秒で元へと戻る。
レベル③ オブリークニーレイズ
膝をできるだけ高く! ダイナミックに動いてやれ
ベンチ(なければイスでも)に座り、座面と背もたれを左右の手で摑む。膝は直角に曲げる。座面の腕を伸ばし尻を浮かせる。尻を背もたれの側へ一気に引き上げ、膝の角度を変えないまま、できるだけ高い位置まで上げる。左右行う。
レベル④ スローダウンクランチ
ジリジリと引き伸ばされる腹直筋の力を感じよう
両手にダンベルを持ち、膝を立てて床に座る。膝の角度は90度。腕を頭上に伸ばす。ここから、背中を丸めるように、4秒かけて上体を後方に倒し、肩甲骨の下まで床についたら、1秒で元へ。腕は常に頭上に構えることを意識する。
腹を引き締める「大胸筋」トレ
「まず、胸の前面にある大胸筋が弱くて厚みがないと、体側の腰周辺が緩んで垂れ下がるんです」(清水トレーナー)
トレーニングによって筋力が増してくれば重力と闘えるし、大胸筋が大きく厚くなれば物理的にも脇腹は引っ張り上げられ、伸びていく。また、胸のボリュームが増せば、胸部と腹部にエッジができるようになるから視覚的にも有効だ。
もうひとつ大切になるのは、腹の両サイドに走っている腹斜筋だ。筋力がアップすれば収縮し、脇腹の広がりを抑えることができるのだ。
「腹斜筋は体幹を支えるために、腹直筋と協働します。トレーニング動作では腹斜筋は自然に使われることが多い。脇腹を引き締めて美しいラインを作るには重要な筋肉ですね」(清水トレーナー)
レベル① ノーカウンタージャンププッシュ
床に胸をつけて無反動で跳ぶ。1回1回、大胸筋が痺れるぜ
床にうつ伏せになる。両手を肩幅の1.5倍ほどに開き、バストトップの横に手をつく。胸までしっかり床につけ、一気に手で床を押してジャンプ。このときカラダは一直線に保つ。再び胸を床につけてジャンプ。無反動で行うのだ。
レベル② リバースプッシュアップ
尻を床スレスレに落とす。二の腕のプルプルを堪能せよ
体側より少し間隔を空け、2脚のイスを置く。座面の前方を左右の手で摑み、腕を伸ばし、脚を前方へと出す。背すじをまっすぐに保持しながら、4秒かけて肘を後方へ引いて曲げる。床にスレスレまで尻を落としたら、1秒で元へ。
レベル③ クイックプレス
腕を全力で素早く、真上に突き上げてやろう
それぞれの手にダンベルを持ち、ベンチ(なければ床)に仰向けになる。足は腰幅に開く。胸を張って肘を曲げ前腕を床と垂直にする。バストトップの横に、ダンベルを構える。全力で素早く腕を伸ばして、ダンベルを真上に突き上げる。
レベル④ クイックフライ
弧を描くように腕を上げる。速い動きでダンベルと闘う
それぞれの手にダンベルを持ち、ベンチ(なければ床)に仰向けになる。足は腰幅に開く。胸を張って、左右の腕を真横に開き、肘をやや曲げダンベルをバストトップの横へ。肘の角度を変えず、できるだけ速くダンベルを上げる。
腹を引き締める「僧帽筋」トレ
「肩甲骨を支えたり、動かしたりする筋肉が弱いと、背中の下側に浮き輪が現れてしまいます」(清水トレーナー)
僧帽筋には肩甲骨を背骨に引き寄せる仕事がある。この筋肉が働いてくれないと、肩甲骨は背骨から離れて開き、背中は丸くなる。それにより、背中の脂肪が垂れ下がるのだ。
「だから、背中の浮き輪を消すには、肩甲骨を引き寄せて、浮き輪を引っ張り上げ、伸ばすことが重要。この肩甲骨の動きを内転と言いますが、僧帽筋を鍛えることで、内転する力を大きくすることができる。そうなれば、背骨もシャキッと伸びて、格好いい後ろ姿になれるでしょう」(清水トレーナー)
僧帽筋をはじめとする肩甲骨まわりの筋肉を鍛えることは、単に浮き輪を消すだけでなく姿勢も正せる。
レベル① エルボーリアフライ
ガンバレ! 肘を支点にして、重いカラダを引き上げよう
体側より少し広めに間隔を空けて、イス2脚を置く。仰向けになり、肘を曲げて、左右の座面に置く。脚を前方に伸ばす。4秒かけて、左右の肩甲骨を背骨に寄せるように、肘を支点として胸を張り、カラダを上げる。1秒で元へ。
レベル② インバーテッドロウ
カラダを一直線に保ち、机に近づけると僧帽筋がジワリ
肩幅の1.5倍に両手を開き、机の端を摑む。カラダを一直線に伸ばし、踵をイスの座面に乗せる。肩甲骨を寄せながら肘を曲げ、4秒かけて机ギリギリまでカラダを引き上げる。1秒で元へ。動作中には尻が落ちないように注意。
レベル③ プルオーバー
床と垂直になるまで、じっくり腕を上げていけ
ベンチ(なければイス)に背中を当て、仰向けになる。腰を反らすように、尻を落とす。1つのダンベルを両手で持ち、腕を伸ばして頭の先で構える。4秒かけ、大きく弧を描くように、腕が床と垂直になるまで上げる。1秒で元へ。
レベル④ クイックリアフライ
瞬時に肩甲骨を寄せて、ダンベルを引き上げろ
両手にダンベルを持つ。膝を緩めて、背すじを伸ばし、股関節から上体を前傾させる。腕は自然に下に垂らす。腕を大きく横に開き、肩甲骨を寄せて一気に肩の高さまでダンベルを引き上げる。動作中は上体の角度を変えないよう注意。
最後は「最強メニュー」に挑戦!
「最高強度のトレーニングを用意してみました。トレーニング上級者でも、規定回数をこなすのは難しいかもしれませんね」と、不敵な笑みを浮かべる清水さん。ここに紹介したのは、それほどに厳しいメニューなのである。
腹の前面の浮き輪にはドラゴンフラッグ、脇腹はワンハンデッドスロープッシュダウン、背中はプローンフロントレイズが対応している。
「まずはレベル④までのトレーニングをクリアする。それができて初めてレベル⑤を行うことができる。前までの4種目+ここで紹介するメニュー、計5種目を週2~3回行えば、浮き輪って何だっけと思う日がきっと来ます」(清水トレーナー)
レベル⑤ ドラゴンフラッグ
肩以外はベンチと無接触。これが非常にキビシー!
ベンチに仰向けになる。頭の横のベンチの端を手で摑む。肩から下を床と垂直になるように起こす。肩を支点としてカラダを一直線にしたまま、ゆっくり倒す。動作中、肩以外はベンチに触れない。これだけは10回できれば良しとする。
レベル⑤ ワンハンデッドスロープッシュダウン
大胸筋が悲鳴を上げる。それを全身で感じてほしい
イスの座面に片手を置く。カラダを一直線にして、足は肩幅に開く。姿勢を保持したまま10秒かけて肘をゆっくりと折り、床ギリギリまで胸を落とす。これ以上ムリ!と思ったら、逆の手を床について元へ。左右行う。
レベル⑤ プローンフロントレイズ
思わず背中が痺れる! それが快感へと繫がるのだ
ベンチに胸をつけてうつ伏せになる。脚は曲げ、膝を床につけカラダを安定させる。両手で1つのダンベルを握って腕を前に伸ばし、胸を張る。4秒かけて、腕をできるだけ高い位置まで引き上げ、1秒で元へ。